第49章
Yhdeksasviidettä runo
世界はまだ暗いまま、太陽も月も現れず、大地に実りはもたらされないままです。
人々にはいつ朝が来るのか分からず、思い悩むばかり。男たちは眉を潜めて話し合い、女たちは、鍛冶のイルマリネンのもとへと押しかけました。
「イルマリネン! お願い、どうにかして。」 「あなたなら、何とかできるでしょ? 太陽や月をつくることくらい、簡単よねぇ」
…ムチャクチャ言うよなぁ、この人たち。幾ら何でもそれはムリでしょうよ。いくらソックリに作れたって、輝きまではどうしようもない。
それでも、頼まれた以上、イルマリネンは太陽と月の製作に取り掛かりました。
それを見たワイナミョイネン、言います。「何をやっとるんじゃ? そんなもの、たとえ天へ上げたところで輝きはせんぞ。」
「……。」イルマリネンは、それでも仕事を終え、作られた黄金の月と銀の太陽(逆じゃないです。本当に月が金、太陽が銀なのです。)を空に掲げました。
もちろん、単なる金属の太陽や月では、光は差してきません。単なる気休めです。民衆をだまくらかす、政治的時間稼ぎというやつです。^^;
「そんなことをするより、わしは考えたんじゃが、太陽と月がどこへ行ってしまったのかを探したほうが早いと思うがの。」
と、ジジイ。占い用の木切れを揃え、呪文を唱えて火に投げ入れます。占いの結果は、告げました。
太陽と月を閉じ込めているのは、ポホヨラの岩山なのだと―――。
ジジイは失われた輝きを取り戻すため、単身ポホヨラへ向かいます。けれど、船は無く、ポホヨラは、外から来るものを拒むように土地を閉ざしていました。
「むむう。そっちがそうなら、わしは、こうじゃ!」
ジジイはざんぶらと海に飛び込み、いきなり泳ぎ出したア?! OWS(オープン・ウォーター・スイミング)!!
それって死に水じゃん、とか言っちゃいけません。泳ぐ! 泳ぐ!! さすがジジイは海属性、海じゃ死なないッ!
ぽたぽた水を垂らしながら、すっくと陸に上がったジイさんに、さしものポホヨラの人々もびっくり。
「太陽と月を返してもらおうかッ」
「く…。おい、皆、やっちまえ!」
全面戦争勃発。否、これは最終戦争か? 完全武装し、刀を抜いた人々に取り囲まれてなお、、ジジイは臆することもありません。
ジジイはイルマリネンが作ってくれたあの剣、サンポを奪うときにも持っていた武器を抜き、ポホヨラの兵士たちに切りかかります。切れ味バツグン! 首がまるで大根のヘタのように!
「うおお! 太陽と月はどこじゃァ」
ふたつの光が監禁されている岩山までやって来て、岩を剣で切り裂き、そこに潜んでいた蝮を斬り捨てます。目の前に現れたのは、固く閉ざされた扉。
扉には、魔女ロウヒの魔法がかかっており、彼女以外には解くことが出来ません。
こればっかりは、どうしようもない。
再びカレワラへと戻って来たジジイを迎えたのは、あの、レンミンカイネンでした。
「なんだよ師匠(いつのまに?!)、何でオレを連れて行かなかったんだ? オレがいれば、扉くらいすぐに壊せただろうに。」
ジジイ「ふん…あれは、そう生易しいものではないわ。ここはひとつ、あやつの力を借りねばな。」
あやつ、とは、もちろんイルマリネン。3人の男の最後のひとり。
「イルマリネンよ。お前なら、あの扉を壊す道具を作れるじゃろう。やってくれるな。」
「ああ、分かった。」
彼は早速、仕事に取り掛かります。けれど、魔女ロウヒだって、黙って見ているわけにはいきません。せっかく隠した太陽と月が解放されてしまったら、負けたことになるからです。
鳥に化けたロウヒはイルマリネンの仕事場を訪れ、お世辞をのべて、なんとか気を逸らそうと試みますが、イルマリネンには通用しません。彼は、相手がロウヒであることに気が付いていたからです。
彼はぼそりと呟きました。
「わしが首輪を創ってやろう。貴様を永遠に岩山に繋ぎとめられるようにな。」
「…!」
ロウヒは真っ青になり、再び空へと飛び立ちました。
彼女も優れた呪術師には違いありません。けれど、この鍛冶屋と老獪なワイナミョイネンと、若くてタフなレンミンカイネンの3人パーティーを撃退するだけの力は、ないのです。
彼らが本気になって捕まえようとしてきたら、もう逃げ道は無いでしょう。
負けを悟った魔女は岩山へ飛び帰り、封印の鍵を壊して太陽と月を解放してやりました。彼女としては屈辱的だったでしょうが、前回の痛手もあり、全面戦争だけは避けたかったのでしょうか。
暗闇から外へ飛び出した2つの光はそれぞれ空へ、あるべき場所へ戻っていきます。人々は喜び、再び、元どうりの暮らしができるようになったのでした。
こうして魔女は去り、世界には再び光がもたらされ、すべてが順調に進み始めたように見えたのでしたが…。
{この章での名文句☆}
元気にあんたの道へ向かいなさい、あんたの旅路を素晴らしく
美しく巡回を終了し、夕方喜びに着きなさい!
「太陽への挨拶」の最後の部分。再び姿を現した太陽への語りかけ。