第26章
Kuudeskolmatta runo
はい、「結婚歌謡」サイクルを心地よいまでにカッ飛ばしたお陰で、いよいよ盛り上がり最高潮な後半へ入って参りました!
「カレワラ」といえば、一般にはサンポ奪回のシーンが有名ですが、それはクライマックス部分でしかないのです。実は長い長い前フリののちに、あのシーンになるのですよ。
で…ここからは、再びレンミンカイネンが主人公。
イルマリネンとポホヨラの娘との婚礼宴会に、たった1人だけ招待されなかったレンミンカイネンですが、気性の荒い彼が、おとなしく引っ込んでいるワケない。
ここで判明するのですが、どうやら、彼の家はポホヨラに相当近いところにあるようです。しかも「入り江の先」で、ポホヨラの女主人の館で行われている宴会の喧騒が届くくらいの距離である…と。
そっか、だからレンミンカイネンの母はダッシュで殴りこみに行けたんだぁ! なぁんだ☆(…って、それでも人間じゃないだろう…。)
宴に招待されなかったレンミンカイネンは、腹立ち紛れに、殴りこみのための準備を整えていました。そんな彼を諌めようとしたのは、やはり、賢明なる彼の母。
「お止め。行っても殺されるのがオチだよ! 魔女ロウヒが、お前を阻むための障害を設けていないとでも思っているのかい?!」
もしかして、母は遠見の術でも持っているのか。家から館までの道のりにある、魔女の障害をバッチリお見通しです。
「んなもん、オレには利きゃしないよ。おふくろ、何があるのか言ってくれ。」
「まず最初に火の川があり、その中の島には来訪者を引き裂く大鷲がいる。次に万人をも飲み込んだ火の穴がある。最後に熊と狼が待ち受けている。」
…なんか、こうしてダイジェストにしてしまうと味もソッケもないですが、原作のほうでは、お母ん、いかにもおどろおどろしく、息子を脅すような口調で語ってくれます。
前前から思ってたんだけど、もしかして、このレンミンカイネンの母って実は魔女なんじゃないの? 一般人じゃないでしょ、あなたは(笑)。
しかーし、レンミンカイネンは、そんな母の恐るべき予言を聞いてもゼンゼン怖がりません。
「ふん。そんなもの、オレにとっちゃー大したモンでもないね。」
彼は魔法戦士ですから、その程度のトラップは魔法と剣の腕とで簡単に乗り越えられるみたいです。さすがですねぇ。
「ポホヨラの館にはヘビもいるのよ、大蛇だよ?! 武装した連中だっているだろうに!」
「あー、全然大丈夫だね。だって、こないだ殴りこみに行った時は余裕だったし。」
母は、ちょっとプチンと切れました。
「ああ、そうだね。余裕だったね。余裕でアンタはトゥオネラの流れを漂ってたじゃないのよ。私が生き返らせてやらなかったら、お前は今でも川の中さ。また無駄死にする気かい!」
そしてあなたは、また息子を蘇らせる気ですか。
これには、ちょっとググっと来たレンミンカイネン。でも、この程度で引っ込む人なら問題ないですよね。
「それでもオレは行く。親父の形見の戦装束でな。」
…おお、そういや、レンミンカイネンの父って今まで出てきてなかったっけな。なぁんだ。もう死んでたのかぁ♪どうりで。(オイ)
「ったく…。アンタって子は。」
母も、息子の頑固さは知っているので、渋々とながら最後に忠告を与えておきます。ポホヨラで出される飲み物は半分しか飲んではいけないこと。(底のほうには呪いがかけられている=冥界の食べ物と同じ。)油断するな、ということ。
こうしてレンミンカイネンは、母の心配をよそに、再びポホヨラへと旅立ちます。
ところで、母の予言した例の3つの災い。彼は、一体どのようにして退けたのでありましょうか。
まず@火の川と鷲。
彼はアイテム「雷鳥の羽根」(しかも消費アイテム)を使用。このアイテムは雷鳥を召喚できるという効果を持っており、この鳥たちを鷲の喉に押し込んで勝利します。すごいアイテムだな…私も欲しいな。
次。A火の穴。
彼は魔法で雪を降らせ、穴を塞いで氷の湖にしてしまい、その上をついーっと滑って行っちゃいます。
最後。B狼と熊。
これもアイテム「雌羊の毛」を使用。そいつにフッと息を吹きかけると、アラ不思議! 孫悟空じゃないけど、雌羊がわらわらと出て来て狼と熊をクギ付け。難無く素通りできてしまいます。
何かすごいねレンミンカイネン。さすがだね。普通の人なら、まずここで人生のリセットボタンを10回は押しているはずですが。
でもでも、ここまでは、まだ序の口。
彼の前には最後の難関が立ちふさがっていました。目指す館を守る、毒蛇たちです。さすがに一匹ずつ戦って倒していくわけにもいかないので、彼は、用心深く蛇を従える呪文を唱えてみました。
けれど、蛇たちは従ってはくれません。それもそのはず、蛇たちは魔女ロウヒの魔法によって支配されており、通常の呪文は効かないのです。
しばし考えたレンミンカイネンは、さらに強力な呪文を唱えます。その呪文は、蛇を従えるというよりは蛇という生き物の本質そのものを支配するようなもので、いわば「創造の呪文」に属するものです。ファンタジーでいうならば、コモン・ルーンに対するハイ・エンシェントのようなもの。ワイナミョイネンが通常唱えているのも、この、ハイ・エンシェントです。
さすがにこれは効きました。蛇たちは道を開け、館まで、もはや遮るものは何もありません。
胸を張って堂々と館へ乗り込むレンミンカイネンと、その先に待ち構える魔女ロウヒ。激突必至?
次号「対決! レンミンカイネン対ポホヨラ軍勢 −主の死−」を、お楽しみに!
「その時、戦いの風が吹いた…(Byロラン)」
{この章での名文句☆}
狂った者はこれを悩み、無能な者が気を配る。
男はこれを気にしない、いささかなりとも怯まない。
…だから戦争に行くのはごく当たり前のことで、ぎゃあぎゃあ言うほどのこともないんだそうです。
本当そうなのか…レンミンカイネン? 男って、そういうモンなのか・・・?