第13章
Kolmastoista runo
「お前の娘を寄越せ!!」
開口一番、レンミンカイネンはそんな要求を突きつけました。「何言ってるんだい。あんたには、もう嫁がいるじゃないかい。」さすがはポホヨラいちの魔女、相手のことはお見通しです。
「あの女は村に棄てておく。オレはもっとイイ女が貰いたい。あんたの娘を出せ」
「…そうかい。なら、悪霊ヒーシのつくった鹿を捕らえてくるんだね。それが出来たら、考えてやってもいいよ。」
結婚に際し課題をいただくのは、ワイナミョイネンの時と同じパターンです。ちなみに、悪霊の鹿は通常の鹿に比べ大きさ1.5倍、攻撃力2倍、ブーストアップ機能つきハイブリッドエンジン搭載で属性は闇。分かりやすく言うと、普通の人間には捕らえられないどころか出くわすことも無いだろうっていうくらいなシロモノです。
しかし、その程度で臆するレンミンカイネンではありません。彼は高名なスキー職人、カウッピ(リューキッキ)のもとに足を運び、言います。「オレに最高のスキーを作ってくれ。悪霊の鹿を捕らえるんだ。」 「…何だと? あの、魔の鹿をか。正気なのか?」 「ああ。勿論だ。そしてオレはゾイドバトルの頂点を目指す!(おいおい)」
それを聞いて、カウッピも何か思うところあったのでしょう。早々にスキーづくりに取り掛かります。まぁ職人さんですから、相手の腕がよけりゃあ、どんなマシンだって作るでしょうな。
そして、力作スキーが完成!
「ふう…できた。わしの最高の出来じゃ。ロングレンジキャノン搭載、エッジ処理も完璧。シールドも50パーセントアップだ。これを装着すれば、どんな四足の生き物であろうと、向かうところ敵無しだぞ」
「助かるぜ、親父! さすがだな。こいつがオレの最高の相棒だ!」
けれど悪霊たちは、その様子をコッソリ見ていました。
「ふふふ…そうは簡単に行くものか。我らの創造せし最高最悪のブラックエルクの恐ろしさを見せてくれるわ!」
召喚された鹿に、悪霊ヒーシとユータスは命令します。
「さあ行け! 行ってラップ人たちを脅かして来い。中でもレンミンカイネンをな!」
呪われし大鹿は森から駆け出し、村を荒し、人々を驚嘆させます。
「うわああっ、何だ、あの鹿はああっ?!」
って言っても、竈をひっくり返したり、お食事中のちゃぶ台を蹴倒したりするくらいなモンで、なんかある意味微笑ましいですがねえ。
ウワサを聞きつつけたレンミンカイネン、はやる気持ちを抑えきれません。
「チイ…ヤツめ、調子に乗りやがって!」
「あ、こら、待て! その機体はまだ調整が…」
「構うかよ!あんなヤツに遅れはとらねぇ!」
レンミンカイネンは、出来たてのスキーを装着しバトルフィールドへ飛び出します。
…って、なんか話が違って来ましたかね(笑)
そしていよいよバトル開始。ハイスピードな戦いは続きます。互いにブーストアップしたまま、鹿とレンミンカイネンは森という森、野原という野原を駆け巡り、それでも追いつくことが出来ません。しかし、最終コーナーを曲がったところで、ついにレンミンカイネンは賭けに出ます。
「うおおおっ、ハイパーシステム作動!!!(注;そんなシステムはフツー、スキーに搭載されていません。^^:)」
いきなり速度MAX値が人外域に。これにはさしもの鹿もついに追いつかれ、捕らえられてしまいました。
上機嫌なレンミンカイネン、鹿を柵に放り込んでご満悦。「ふ、バカ鹿め。お前はそこでおとなしくしてな。オレはさっさと、飛びっきりの美人とシケこみてぇんだよ。オレにはそれが相応しいんでね。」
正直に言い過ぎだっつの、アンタ。
怒った鹿は怒鳴ります。「ざけんな! 呪われちまえ!」えっ、鹿が人間語喋れるんですか、とかいう細かいツッコミは、人智を越えた戦いの前にはもはや無意味。
意表をついて柵を蹴破った鹿は、再び森の中へ逃走。
「クッ…奴め、まさか、まだそんな力を残していたとはっ…?!」
慌てて追いかけようとしたレンミンカイネンでしたが、まだ調整中のハイパーシステムを作動させたせいで、スキーマシンに負担がかかりすぎていました。
いきなりシステムフリーズ!
「なっ…、しまった!」
スキーは止め具から空中分解し、彼は、雪の上に投げ出されてしまいました。さすがに、これはちょっとショックです。カウッピの親父が作ってくれた特注スキーを壊してしまったんですからね。
この時ばかりは、ちょっと反省したレンミンカイネン。それでも不屈の闘争本能は、まだ眠ってはいなかった。
そう、戦士たるもの勝つまで戦う! それが戦士の心意気。
{この章での名文句☆}
決して必ずいつまでも、我が仲間よ行くでない。
ヒーシの鹿をスキーで追いに
哀れな俺が出向いたように!
よっぽどヘコんだらしいです、レンミンカイネン(笑)。