フィンランド叙事詩 カレワラ-KALEVALA

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第11章
Yhdestoista runo


 ついにこの章で、主要登場人物のひとりレンミンカイネンが登場します。
 この人は、ティベリウスの「レンミンカイネン組曲」でも知られる、若くて男前で頭も良くて強い、だけど女グセと性格の悪さは天下一品という、一癖も二癖もあるキャラです。

 しかも彼は、相当な自信家。自分ちは3流でビンボだけれど、自分は優れた人物だと思っている様子。
 そんな彼が、そろそろ嫁さんを迎えるお年頃になりました。狙うは、サーリで一番の名家のご令嬢、キュッリッキ。太陽や月や星の精霊(神?)たちが求婚してもなびかない、という、気位いの高いお嬢様です。まるで日本のかぐや姫。どんな気高い人であろうとも、ケンもほろろに肘鉄くらわして求婚を断りつづけていました。
 「あんた…まさか、本当にあの名家のお嬢様をもらいに行くのかい?」
母親は不安げです。何しろ、裕福ではない3流家庭。言ってみれば、長屋住まいが大名の姫さんに求婚しに行くようなモンです。
 しかし息子は自信たっぷり。
 「ふ、心配すんなよ、おふくろ。たとえ血筋が立派でなくとも、オレにはこの外見がある。オレの美しさでモノにしてみせるさ」
うおお! はっきり言うなあ、レンミンカイネン! 若さと美しさは、やはり最大の武器なのか!!

 彼は、サーリへと乗り込み、貧しい身なりを笑われながら堂々と娘たちにコナをかけます。昼間はバイト生活、夜は村の娘たちと不純異性交遊です。またたくまに、村中の美人は彼のお手つきとなってしまいました(泣)。むー…さっすが色男。

 残るは、サーリの花と呼ばれる一番の美人、お目当てのキュッリッキのみです。ですが、彼女はガードが固く、なかなか人前に姿をあらわしません。おまけに、レンミンカイネンの強烈アプローチに見向きもせず、「どうして私のまわりをうろつくの? イヤな人ね!」と、あからさまに不快感を示します。
 ここで彼女の理想の男性像をご紹介。
 @軽薄でつまらぬ人は嫌い。 A逞しく、姿のあでやかな人が好き B自分の美しさとつりあう人がいい。 Cもちろん身分は高くなきゃダメ。

 …おいおい、この女、はっきり言って望み高すぎだぜ? そりゃー太陽や月の求婚も断るわあ。確かにレンミンカイネンは軽薄で身分は低いが…。(だいたい、この条件すべてに当てはまるような人は、カレワラの中には出てこない。)

 しかーし! 諦めるレンミンカイネンではなーい!
 求婚を受け入れてもらえないと分かった彼は、ついに強制手段に出た! 女ばかりのダンスパーティーで踊っていたキュッリッキを、馬で走り抜けざま掻っ攫ったのです! うおー、これぞ愛の逃避行(ちょっと違う)。
 「女たちよ! このことは誰にも言うな!」
と、言い残しますが、その場にいた娘たちは当然ながらレンミンカイネンのお手つきになった娘たち。いわば全員グルです。

 「ちょっと、何をするのよ! 離して!」
キュッリッキは暴れますが、レンミンカイネンは聞く耳持たず。
 「何よ…あなたなんて、血の気の多いあなたなんて、どうせ誰かに喧嘩を売って死ぬのがオチよ!(←図星)この、野蛮人!」
 「言うじゃないか。だったらいいぜ、誓いをたててやる。オレは戦にはいかない。そのかわり、お前もダンスをしに村へ出たり、他の女どもと下らないおしゃべりをするんじゃないぜ。(←浮気対策)」
 こうして互いの利害関係を考え誓い合った2人は、納得済みとはいかないまでも、一応、夫婦になることになります。

 でもさ、考えてみれば、お嬢様育ちのキュッリッキに長屋暮らしなんかできるはずないんですよね。外に出ちゃダメなんて約束しちゃってるし。
 レンミンカイネンの家につくやいなや「なに…この小屋。」とか言ってます。(お約束v)

 一方で、素直に喜んだのはレンミンカイネンの母親。まさか息子が、本当にご令嬢を嫁にするとは思ってもみなかった。
 「まああ! 美人だねえ、これが姫様ってモンかい! へええ!」ってな感じで、むちゃくちゃ感動してます。これなら、嫁・姑の関係はわりと良好にいきそうですよね。

 さあ! いよいよ次章は「レンミンカイネンの新婚生活・お昼の奥様劇場」もしくは「ザ・ワイド 破局?! キュッリッキ嬢、涙の告白」ですよー♪


{この章での名文句☆}

キュッリッキ、愛するものよ、私の甘い苺よ!
何も気にすることはない。食べているとき抱きしめて、出歩くときに手を握る。

くさいセリフ連発のこの章の中でも、とりわけぶっ飛びな一節ですたい。
さすがは色男?



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