ドイツ詩、と言っても、時代ごとに全く内容が違うのは、もちろんのこと。大雑把に分けて、だいたい5つくらいの時代に分類されるかと思ったんで、以下、まとめてみた。ドイツ詩をちゃんと勉強してる人は、もうちょい細かく分類して下サイ。
■12−13世紀…シュタウフェン朝
領地を守る専属の戦士たちが「騎士」へと洗練されていった時代。北欧神話の英雄伝説から英雄叙事詩が作られ、宮廷恋愛詩(ミンネザング)が書かれた、ドイツ文学史上、最初の黄金時代。
このサイトでは
「ニーベルンゲンの歌」や
「クードルーン」など、多くを取り上げている。
いわば”オレの遊び場”。過ぎ去りし、真実なる騎士の時代である。
シュタウフェン朝時代は、皇帝フリードリヒ2世の死とともにこの時代は終わりをつげ、その後は、文学的に大した成果のない時代が400年ほど続く。
---→Point! ここに「30年戦争(1618〜1648)」が入る。--------
■17−18世紀半ば…バロック時代
バロックというと、音楽でJ.S.バッハやヘンデルを思い出す人が多いかもしれない。
当時ドイツといえば多分にオーストリアを含むもので、音楽の都・ウィーンはドイツ文化圏だった。
ゲーテ(1749-1832)やヘルダーリン(1770-1843)、ハイネ(1797-1856)など、現在も有名なドイツ詩人が、この時代に集中している。特にハイネは、7月革命に影響を受けてフランスに移住してしまった人であり、時代が詩人たちの創作活動に及ぼした影響は大きいと思われる。
ここ「ドイツ詩人の世界」コーナーは、このあたりの時代が焦点になっている。
---→Point! ここに「フランス革命」「7月革命」、「ナポレオンのドイツ侵攻」が入る。--------
■19世紀後半−20世紀…ワイマル共和国終焉と近代理想の崩壊
アインシュタイン(1879-1955)が相対性理論を打ち出したのが、この時代。
ニーチェの「神は死んだ」という言葉が何かにつけて引き合いに出されるように、それ以前の時代の価値観が崩壊した時代でもある。機械工業の発達や都市化によって人間の価値観が下がり、「オレたちの描いた理想の未来はこんなじゃない」と拒絶反応を起こすもの、「自然へ回帰せよ」と叫ぶものがいた時代。
本の言葉を借りれば「精神の疎外的状況」「一切は根拠無き主体による虚構であったと露わになった時代」とのことだが、要するに、世界が、自然科学による「客観」世界と、それまでの人間本位な「主観」世界に分離したことに、まだ人間自身ウロたえていた時代ということだろう。(現代でも、この二重世界になじめない者は多くいるだろうが)
ヴァン・ホッディス、リヒテンシュタイン、ゲオルグ・トラークルなど、一目でこの時代と分かりそうな特殊な詩が生まれた。
それは詩人の足掻きのようにも見え、現代にも、同じような詩を書く若者がいることを思うと、非常に興味深い。
---→Point! 第一次世界大戦は1914〜1918年。ドイツ、ボロ負けです。--------
■1930年以後
ワイマル共和国の末期、ドイツ国内では、社会主義と民族主義が激しく戦っていた。
そして、1933年1月30日、ついに、あの男…アドルフ・ヒットラーが帝国の主権をその手にする。
ヒットラー率いるナチス・ドイツが何をやらかしたのかは、知っての通り。民族主義の名の下に、ユダヤ人の大量虐殺をやらかし、挙句の果てに第二次世界大戦の直接的な原因を作った。
この政権下での厳しい迫害によって、多くの芸術家がドイツを去る。
心理学では、かのユングやフロイトが。
また、映画界においては、「ニーベルンゲン(1924)」を完成させた、ユダヤ系ドイツ人フリッツ・ラング(1890-1976)が、欧米に亡命している。ドイツ史上、最大の文化的損失の時代と言われる。
終戦後、ドイツは東西に分かれ、主に西の詩人の名が残されているようだが、あと50年経ったのち、そのうち幾人が記憶されているかは、誰にも分からないだろう。
以上。簡単・年代わけ。
各時代ごとに作風が全く違うため、時代を追いかける上での目安にはなるかもしれない。
19世紀以降のドイツ芸術は、みな、どこか産業鉄の匂いがすると思うのは、私だけでしょうか。(偏見?)
うまい作家は、それをたくみに隠す。とかね。
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