■ディートリッヒ伝説-DIETRICH SAGA |
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各エピソード成立年代の予想
ディートリッヒの伝説に関係する、数々のエピソードについて、それぞれの成立年代をおおまかに予想。
5世紀以降/初期のディートリッヒ伝説
ディートリッヒのモデルとなった王、テオドリクスが実際に生きていた年代を考えると、これが一番古いはず。伝説は、テオドリクスが没した直後から作られ始めたそうなので、このあたりか。
この時点では、まだそれほどバリエーションは無く、ヴェルンド伝説との関連も無かったと思われる。
5世紀以降/初期のニーベルンゲン伝説
ブルグント族の滅亡と、アッティラの急死を結びつけた、最初の伝説の発生は、おそらく、それら歴史的事件の直後に生まれていたはずだ。
この頃は、まだプリュンヒルトは登場していなかったと思われる。
9世紀/ヴェルンド伝説
エッダの中身の発祥年代→8世紀−13世紀、その中でもシドレクス・サガは最古の部類に入ることから、この話はけっこう古いはず。 鍛冶屋ヴェルンドの伝説はディートリッヒ伝説とは別個に発生し、あとで繋がった、という説が主力である。
9世紀/ハイメ伝説?
ハイメというとディートリッヒの一の家臣として登場する人物だが、9世紀に筆写された「ベーオウルフ」に登場するハーマという人物や、ヴォルスンガ・サガに登場するヘイミル(ヘイム)など、他系統の伝説に、よく似た名前が見え隠れすることから、もともと別に発祥した伝説の登場人物だったのではないかという説がある。
ハーマやヘイミルの名前とともにヴェルンドの息子ヴィテゲ(ヴィッテッヒ)が登場することもあり、あるいは、失われた物語では既に盟友と呼ばれる関係を築いていたのかもしれない。
9世紀/ヒルデブラント・サガ
定説では、だいたい9世紀ごろの発祥、とされている。
ヒルデブラントに関係する詩は、エッダ詩の中でも最古の部類に入る。ドイツ語、古アイスランド語の詩があり、それぞれ、少しずつ設定が違っているが、息子と戦い共に死ぬという悲劇的な結末は同じである。
ヒルデブラントは元々、ディートリッヒとは別に活躍していた英雄だったのではないか、という説がある。先にヒルデブラントがいて、人気だったため同じく人気のあった王伝説にくっつけた、という予想。
12−13世紀/ニーベルンゲンの歌
これは、記されたのが1203−4年頃とほぼ時代が確定されているので、分かりやすい。(※ここでは、ニーベルンゲン伝説自体の成立とは別に、伝説をリテイクして「歌」とうう作品を作った時代をさす)
「ニーベルンゲンの歌」の作者は、最初からブルグント族とディートリッヒを出会わせるつもりで物語を書き始めた気配がある。
12−13世紀/シドレクス・サガ
写本の段階では、最古のものは1250年ごろのもの。原本が書かれた年代はもっと古い可能性があるが、ストーリーの中に「ニーベルンゲンの歌」との繋がりを含んだ部分もあるため、「ニーベルンゲンの歌」が読まれたのちに改変され、付け足されたのは確実だろう。
ディートリッヒに関する物語は、「ニーベルンゲンの歌」が異教的として禁止された後も読み継がれていたため、時代を追うごとに細かいバラエティの広がりが大きくなる。
ヘルデン・ブッフに収められた、シドレクス・サガとはつながらない単発の話も、この時代から後に付け加えられていったものとされる。
16世紀以降/その後の伝説−民衆本
印刷技術の誕生により、廉価な大衆本として読まれるようになると、かつての伝説は、宮廷文学から、より御伽噺めいた民衆の好むストーリーへと転化していく。不死身の英雄ジークフリート、竜にさらわれる姫君クリームヒルト、大王ディートリッヒなど、半ばパロディ化されたキャラクターが登場するのも、この時代。
時代が古くても二次創作って言うんだろうなソレは、とか、ボソリと呟いてみる。