ディートリッヒ伝説-DIETRICH SAGA

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もう一つの物語――ディートリッヒ伝説



 ここで扱うのは、「ニーベルンゲンの歌」では第2部に登場するディエトリーヒ王と、その仲間たちの物語である。
 資料の関係で、ここでは「ディートリッヒ」という読みになっているが、古ドイツ語読みではディエトリーヒとなる。
 「ニーベルンゲンの歌」内では、脇役として、ブルグント族とフン族の全面戦争に巻き添えを食らう形になってしまった東ゴート族の王ディエトリーヒだが、物語中で少しだけ触れられているとおり、彼には彼の国があり、「それまでの」エピソードがあり、さらには「その後の」エピソードも存在していた。それが、ディートリッヒを主人公とする、一連の物語である。

 国を追われ、辺境伯リュエデゲールのもとに身を寄せていたというエピソードや、ハゲネたちとの戦いで多くの仲間たちを失いながらも、その後、叔父によって奪われていた自らの王座を取り返し、数々の武勇伝とともに去ってゆくエピソードは、ディートリッヒ自身の伝説にも形を変えて組み込まれ、「ニーベルンゲンの歌」での物語とは、少し違った形で未来へと続いていく。

 その物語は異教的と言われながらも「ニーベルンゲン」よりさらに後まで語り継がれ、吟遊詩人たちの間に多くの物語を生み出したという。

 ディートリッヒのモデルとなった実在の人物、テオドリクは、東ゴートではなく西ゴート族の王だったとされる。
 史実では、フン族の王のもとに客人として身を寄せることも、国を追放されることもなかったが、物語の中には、史実と、虚構とがまじりあい、両者の境界をあいまいにしている。出会うはずの無かった二人の王、ディートリッヒと、フンの王アトリ(またはエッツェル)を出会わせる。

 では、ディートリッヒは、どのようにしてフン族の国へ行ったのか。彼はそれまで、自国で何をしていたのか?
 「ニーベルンゲンの歌」が主人公たちの死によって幕を閉じた後、生き残ったディートリッヒとその忠臣、ヒルデブラントは、いかにして自国を取り戻したのか?

 意外なところで意外な話と繋がる、「もう一つの物語」。
 知れば、ディエトリーヒが何故エッツェル王のもとに亡命したのか、どうやってブルグントの国のことを知ったのか、などが分かり、より一層世界が広がること間違いなし。
 巨人や妖精、小人に竜と、お約束要素も揃ってナイスファンタジー!



 この物語は、異説や外伝的物語が多く、細かい状況設定を知るのは難しい。
 「ディートリッヒ伝説」と総括しているのは、「彼にまつわる一連の神話・伝承群」が、ひとつに繋がった物語ではなく、様々な時代、様々な地域で書かれたたくさんのエピソードの集合体だからである。各エピソードが矛盾しあっているケースも多い。
 すべてを網羅しようとすると、ドイツ全域の叙事詩をかき集めることになり、読み終えるころには、いっぱしの『ドイツ中世文学研究家』になってしまうという(笑)
 とてもそこまでやる気力は無いので(とかいいつつけっこう探してるが)、ある程度アバウトな資料だと思って読んでいただきたい。


  −参考書−

 「これがベストだ!」…と、いう参考書は、いまんとこナシ。特にヨーロッパでは、地元ということもあり有名なようだが、日本ではあまり知名度は高くない。
 あっちこっちの本から少しずつ持って来て繋ぎ合わせた感じになっているので、細かいところは随時修正。



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