■ディートリッヒ伝説-DIETRICH SAGA |
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具体的なストーリーの和訳は見つからず。「ニーベルンゲンの歌」に関連したサガを探していたとき、たまたま、言及している本があったので、ここに引っ張り出してみた、という程度のもの。覚書き程度である。
まず簡単に説明しておくと、ビーテロルフというのは、ディートリッヒの仲間のひとりディートライプのお父上である。
ディートリッヒ伝説のほうでは「デンマークの有名な勇士、領主」として紹介されていたが、このサガでは、ビーテロルフが主人公に格上げ(笑)されて「トレドーの王」となっている。地域的にも、ニュアンス的にも似ているが…。
この物語では、息子のディートライプはエッツェル王の宮廷に来ていて、父とそこで再会することになっている。家出していたのか、修行の旅に出ていたのか、それとも別の理由でなのかは分からない。(詳細は書いていなかった)
そして、親子はディートリッヒと組み、ブルグント勢と戦争をする。
ブルグント族vsゴート族、という、本人たちの望まざる悲劇の対決が引き起こされるところは「ニーベルンゲンの歌」と同じだが、その戦闘の過程をビーテロルフという異国人の視点から見ているのがポイントになるのか。
このとき、ブルグント勢にハゲネやグンテルがいるのは勿論なのだが、なんと、本来なら死んでいるはずのジークフリート(ジーフリト)が参戦している。ディートリッヒvsジークフリト。この戦いで勝利するのはディートリッヒ。
なんとも無茶な展開だが、そもそも戦いの理由からして違うらしい。ビーテロルフが主人公の物語とうことで、プリュンヒルトがどうしたの、クリエムヒルトが復讐するの、という前フリは一切無しの状態。
「シドレクス・サガ」もそうだが、英雄の強さ、格、というのは、ひとえに語り手と聞き手の好みによる。ディートリッヒが人気の地域で語られる伝説ならディートリッヒ最強に、ハーゲン人気の地域でなら、ハーゲンは堂々とした勇者として語られる。もちろん、ジークフリート人気の地域なら彼はヘラクレスもかくやの英雄になるだろう。
この話では、ディートリッヒを持ち上げる展開に作られているようである。
ついでなので、ディートリッヒとジークフリート、ふたりの英雄伝説の発祥地についてひとつ書いておきたい。
ディートリッヒは、実在した東ゴートの王テオドリクがモデルなので、当然、ゴート族の子孫たちであるバイエルン人にとっての崇拝の的だったという。
対して、ジークフリートは実在モデルのいない「英雄の原型」とされており、主にライン川流域の住人たちにとっての英雄だった。
ディートリッヒが最も称えられたのは、出身地のドイツの南東地方となり、ジークフリートはライン川流域で北西地方で人気が高かった。
つまり、この二者が戦う話でも、南のほうで作られた話ではディートリッヒが勝利し、北のほうで作られた話ではジークフリートが勝利する展開になっているのである。地元出身の英雄びいき。実にわかりやすい理屈である。
地元のヒーローに勝たせてやりたいっていうのは、いつの時代も同じ人間心理か…。サポーター…。
手近なところに二人の英雄がいたら、戦わせてみたいというのも、人間の心理というものだろう。
わかりやすいところで言うと、「ルパン対ホームズ」とか。
「カーン対ベッカム」とか。
「ボブ・サップ対和田アキ子」とか。←大いに間違っています
そんな感じ。そんな感じ。(笑)