■シャルルマーニュ伝説 |
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シャルルマーニュ伝説とは。シャルルマーニュ、つまりシャルル大王とその部下の騎士たちを題材にした、英雄物語である。「シャルル」はフランス語だが、ドイツ語で言うと「カール大帝」。二編では、こちらのほうが通りがいいかもしれない。
一言で言ってしまえば「ディートリッヒ伝説と同じノリだが、どっちかというとアーサー王に似ている伝説群」。
ディートリッヒのモデルは5世紀に活躍した西ゴート族の王テオドリク、アーサー王のモデルは2世紀ごろのケルトの英雄(だといわれている)だが、このシャルルマーニュは、8世紀から9世紀はじめにかけて生きたフランスの王で、教皇から西ローマ帝国の王冠を授けられた人である。(それで皇帝と名乗っている)
比べてみると、比較的新しい時代の人物で、それゆえ物語とは別に、実際の歴史もある程度分かっている。
それによれば、シャルルは物語ほど短気ではなく、優秀な人間とのことだが、物語中のシャルルはかなりヤな性格にされている。
まあ、物語というのは得てして、ドラマチックに盛り上げるための小細工をするものだから。歴史に忠実には描くまいが・・・。(笑)
この物語には、多少史実に近い、古い時代の作品群と、後世に作られた完全パロディ作品群とが存在する。
古い時代のものは、11−13世紀に成立した、作者未詳の叙事詩群「シャンソン・ド・ジェスト」(フランス語の武勲詩)。「ロランの歌」も、こちらに含まれる。
新しい時代のものは、15−16世紀に成立した、ボイアルド、プルチ、アリオストの3人の詩人による、ルネサンス時代の文学である。ロランがオルランドゥと名前を変えて登場するのは、こちらのほうだ。
シャルルが戦っていた時代は、キリスト教がまだ確たる地位を獲得しておらず、イスラム教が勢力を伸ばしつつあった時期である。この何百年か後に、両者の対立を決定付ける十字軍遠征がはじまる。
物語の中での当面のシャルルの敵は、未開部族、サラセン人だった。
だが、それだけではない。架空の物語だから何でもアリ、とばかり、シャルルマーニュの部下達は、ギリシア人と戦ったり、中国人と戦ったり、化け物と戦ったり、もはやRPGの世界である。
特にルネサンス時代のものになってくると、ムチャの度合いが飛躍的にアップして、「どうしようもない」エピソードが増えてくる。
騎士物語とは言うものの、コイツらほんまに大丈夫なんか、と心配になるくらい困った人たちである。
ロマンチックな物語。
中世ファンタジー。
名作騎士文学。
人は、そんなふうにこの伝説群を呼ぶ。…だが、本当にそう思うのか? 否。オレはそうは思わない。彼らには思い切り良いまでのツッコミこそが相応しい! その理由を今ここに語ろう。そして見よ、彼らの快いまでのハミだしっぷりを!!
――シャルルマーニュ伝説の大半が、「歴史的事実」と謳った偽書であることは、既に多くの学者によって語られている。(学者でなくとも、フツー、そんなこと現実には在り得ないだろうよとツッコミを入れることは大いに可能。)
だが物語は、存在しなかったもう一つの歴史である。在り得ないことも、架空の歴史だからこそ起こり得る。
実際とは違うキャラと化した歴史上の人物たちの世界、どうか心行くまで楽しんで(ツッコミ入れて)やってほしい。