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三木秀夫法律事務所
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ニュース六法目次
「UFO存在確認していない」政府が公式見解(2007年12月18日)質問主意
○政府は18日、未確認飛行物体(UFO)について「存在を確認していない」とする答弁書を閣議決定した。山根隆治参院議員(民主)への答弁。UFOに関する政府の公式見解は初めてという。

UFOを巡っては、仏国立研究機関が今年3月、ウェブサイトで目撃情報を公開したほか、米航空宇宙局(NASA)は65年の「墜落説」に関する部内文書の存在調査に乗り出している。

山根氏が「近年、目撃情報が後を絶たない。我が国の安全上の観点からも、情報収集は喫緊の課題だ」とただしたのに対し、答弁書は「特段の情報収集や外国との情報交換、研究はしていない」「わが国に飛来した場合の対応も検討していない」などと、つれない回答に終始。ただ、町村信孝官房長官は記者会見で「個人的には絶対いると思う」と述べ、こうしき見解と「対立」する見方を披露した。
(毎日新聞2007年12月18日)


○町村信孝官房長官は18日午後の記者会見で、未確認飛行物体(UFO)について政府が存在を確認していないとの答弁書を作成したことについて、「政府答弁は政府答弁であり、私は個人的には、こういうものは絶対いると思っております」と語った。会見の詳細は以下の通り。

−−先日民主党の参院議員から未確認飛行物体(UFO)に関する質問主意書が出され、本日、政府としては存在の確認していないなどとする内容の答弁書が出されたが、この質問の内容や答弁書の内容について長官の考えは

−−「うーん、まあ、あのー、政府のそれは公式答弁としてはですね、UFOの存在は確認していない。だから、対策なども特段検討していないという極めて紋切り型の答弁しかないだろうと思いますけれども、あのー、私は個人的には、こういうものは絶対いると思っておりまして。個人的な、個人的な意見でありまして、政府答弁は政府答弁であります。そうじゃないと、いろんなところにあるね、ナスカ(の地上絵)のああいう、説明できないでしょ。と、思っているんですけれどもね。ま、ちょっと、これ以上広げないようにします。どうも。毎回、こういうご質問をお願いいたします」
(産経新聞 2007.12.18)


○「UFO対処を頭に入れるべき」石破防衛相
石破茂防衛相が20日午前の記者会見で語った、未確認飛行物体(UFO)に関する発言の詳細は以下の通り。

「UFO(の質問)は出ませんでしたね。再開しようか?」
−−UFO論議が注目を浴びているが、ご所見を
存在しないと断定できる根拠がない。個人的に信じる、信じないの問題はあるのだろうが、そういうような未確認飛行物体、それを操る生命体が存在しないと断定しうる根拠はない。防衛省としてというよりも、私個人の話だが、存在しないと断定し得ない以上、いるかもしれない。少なくともないと断定するだけの根拠を私は持っていない。そういうものはあり得るだろうということだと私は思う」

−−その場合、防衛力のあり方への影響は

ゴジラの映画があるが、ゴジラでもモスラでも何でもいいのだが、あのときに自衛隊が出ますよね。一体、何なんだこの法的根拠はという議論があまりされない。映画でも防衛相が何かを決定するとか、首相が何かを決定するとかのシーンはないわけだ。ただ、ゴジラがやってきたということになればこれは普通は災害派遣なのでしょうね。

命令による災害派遣か要請による災害派遣かは別にしてですよ、これは災害派でしょう。これは天変地異の類ですから。モスラでもだいたい同様であろうかなと思いますが、UFO襲来という話になるとこれは災害派遣なのかねということになるのだろう。領空侵犯なのかというと、あれが外国の航空機かということになる。外国というカテゴリーにはまず入らないでしょうね。

航空機というからには翼があって揚力によって飛ぶのが航空機ですから、UFOが何によって飛んでいるのか、色んな議論があるのでしょうけど、それをそのまま領空侵犯で読めるかというとなかなか厳しいかもしれない。そうなってくると、これは飛翔体なのかねということになるとするとどうなのか。例えば隕石(いんせき)が降ってきたことと同じに考えられるか。隕石は自然現象だから何の意思もなく降ってくるわけですが、UFOの場合は意思なく降ってくるわけではない。これをどのように法的に評価するのかということもある。そうすると災害派遣が使えるのか、領空侵犯でもなさそうだ。そうすると防衛出動かねということになるが、それをわが国に対する急迫不正な武力攻撃と考えるかというとそうはならないだろう。

UFOが襲来して、色々な攻撃を仕掛けるということになれば、そういう評価も成り立つのだと思うが、『地球の皆さん、仲良くしよう』と言って降ってきたときに、それはわが国に対する急迫不正な武力攻撃でも何でもない。また、何らかの意思が伝達されたときに何を言っているかよく分からないという場合に一体、どのようにわが方の意思を伝達するのだということもある。当省として、こういう場合にどうするかという方針を固めたわけでも何でもない。これは私個人の話であって、私は頭の体操という言葉はあまり好きではないが、色んな可能性は考えておくべきものだ。
 
ある日突然にそういうことが起こって、どうするのかというのもあまり望ましいことではない。省として取り組むことは全然ないが、私自身として、一体どうなるのかということは考えてみたいと思っている。そのときに日本だけ襲来するかというと、世界あちこちに襲来するでしょうな。そのときに国連でそういう議論が行われたかというとあまり承知していない。まだ、存在しないと断定し得うる根拠がない以上は、やはり頭のどこかに置いておくべきなのではないのかなと。当省としてそういう方針を決定したということでは全くありません」
(産経新聞2007.12.20)

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○面白い展開だ。参議院議員から質問主意書に対して内閣が「確認していない」と答弁したUFO問題である。町村官房長官は「絶対、いると思う」とかの個人的意見を言ったり、その後の20日に、今度は石破防衛大臣が閣議後の記者会見で「存在しないと断定できる証拠はない」と語ったり。石破大臣の発言は、ゴジラやモスラに対するのは防衛出動だと言って、やや意味不明の発言だったが、UFOが現れた場合の自衛隊出動の法的根拠を、一度じっくりと考えるのによいヒントになるような発言だった。その後、航空自衛隊の幕僚長も、UFO対策について「これから検討することになるのではないか」と語ったというニュースも流れたり、一見悪ふざけの感もないではないが。

ただ、ゴジラにせよUFOにせよ、万一現れたら、自衛隊はただちに出動して国民を守ってもらわないとならない。出現したものが何なのか正体不明の際には、緊急発進して正体を探索することになろう。そして、ついに国民を襲ってきた場合は、自衛隊による防衛出動が行われることになり、被害発生時には災害派遣となろうか。

しかし、石破大臣が言うように、到来したUFOが『地球の皆さん、仲良くしよう』と言ってきたとき、確かにそれはわが国に対する急迫不正な武力攻撃でも何でもなく、自衛隊による武力行使はしてはならない。ただ、宇宙言語で話されたら、何を言っているのか、意味不明で、対応に困るだろう。石破大臣も、ときどき宇宙人のような発言をするので、会話してもらったらいいのだろうか。

いずれにせよ、UFOは世界中で目撃されているし、ときどき未確認飛行物体と航空機とのニアミスまで発生している中、正式な議論があってもいいはずではある。しかし、各国とも国防上の理由からか、公の場で議論してきていないが、今後は、この問題を公的に真剣に検討していく必要はあろう。何かが発生してから初めて法的根拠なんて国会で議論をしていたのでは、遅いので、ここはぜひ、国民的大議論をしてみてはどうか。消えた年金と薬害問題を片付けてからがいいとは思うが。

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○UFOとは、未確認飛行物体といい、その名のとおり「何であるか確認されていない飛行体」Unidentified Flying Objectの頭文字をとったものである。主として「国籍不明航空機」などに用いられ、スクランブル(緊急発進)の対象となる。航空交通管制においては、レーダーに捕捉されたこのUFOに対しては、正体を確認するまで、警戒態勢を取って「未確認飛行物体接近!」と表現する。しかし、世上では「宇宙人ののる飛行体」の意味でUFOが用いられている。

○石破防衛大臣の発言の中に、「防衛出動」と「災害派遣」の言葉が出た。

自衛隊の「防衛出動」は自衛隊法第76条によって定められている。内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態、又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態に際して、我が国を防衛するため必要があると認める場合に、国会の承認を受けた上で、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる、というものである。この命令が出された場合、他国からの侵略を受けている時に限り自衛隊は武力の行使が可能となる。

災害派遣は、都道府県知事などが、天災地変その他の災害に際して、人命又は財産の保護のため必要があると認めた場合に、自衛隊の派遣を防衛大臣に要請して派遣を受けるもので、自衛隊法第83条に定めらている自衛隊の任務である。任務の位置づけは同第78条の治安出動と同列の地位にある。

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○今回のUFO論議の始まりは、山根隆治参院議員(民主)が出した「質問主意」である。質問主意書とは、国会法第74条、75条の規定に基づき、国会議員が内閣に対し質問する際の文書である。各議院の議員が、内閣に質問しようとするときは、議長の承認を要する。質問は、簡明な主意書を作って、議長に提出する。議長の承認した質問については、議長がその主意書を内閣に転送する。内閣は、質問主意書を受け取った日から7日以内に、閣議決定を経て、正式な答弁書として提出議院の議長に提出しなければならない。その期間内に答弁をすることができないときは、その理由及び答弁をすることができる期限を明示しなければならない。

○各議院での質問主意書は以下のサイトで見ることができる。ちなみに、12月20日現在では、このUFO質問は、質問内容だけが掲載されていて、答弁書の文章は載っていない。
衆議院 http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_shitsumon.htm
参議院 http://www.sangiin.go.jp/japanese/frameset/fset_c03_01.htm

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○【山根議員のUFO質問主意書】

質問第八四号
未確認飛行物体に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第74条によって提出する。
平成19年12月10日
山根隆治
参議院議長 江田五月 殿

未確認飛行物体に関する質問主意書

近年、我が国のみならず、各国において地球外から飛来してきたと思われる未確認飛行物体(通称UFO。以下「UFO」という。)を目撃したという情報が後を絶たないが、我が国の安全上の観点、国民的な不安と関心からもこれに対する情報収集と確認作業は喫緊の課題であると考える。
そこで、以下質問する。
一 政府としてUFOについてどのような認識を持っているのか明らかにされたい。
二 政府及び関連機関等でこれまでUFOに対しどのような情報収集や研究、対応を行ってきたのか明らかにされたい。行っていないとした場合、それはどのような理由からか明らかにされたい。
三 UFOが我が国に飛来した場合に想定される対応について、政府の見解を示されたい。
四 航空自衛隊がUFOを探知してスクランブル(緊急発進)をしたことがあるのか明らかにされたい。
五 アメリカを始めとする友好国等との間で、UFOについての情報の交換をこれまで行ってきたのか明らかにされたい。
六 国民や民間団体から寄せられた情報の整理、分析、確認作業は、国のどの機関で行うのか明らかにされたい。
右質問する。

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○国会法
第七十四条  各議院の議員が、内閣に質問しようとするときは、議長の承認を要する。
2  質問は、簡明な主意書を作り、これを議長に提出しなければならない。
3  議長の承認しなかつた質問について、その議員から異議を申し立てたときは、議長は、討論を用いないで、議院に諮らなければならない。
4  議長又は議院の承認しなかつた質問について、その議員から要求があつたときは、議長は、その主意書を会議録に掲載する。
第七十五条  議長又は議院の承認した質問については、議長がその主意書を内閣に転送する。
2 内閣は、質問主意書を受け取つた日から七日以内に答弁をしなければならない。その期間内に答弁をすることができないときは、その理由及び答弁をすることができる期限を明示することを要する。
第七十六条 質問が、緊急を要するときは、議院の議決により口頭で質問することができる。

○防衛省設置法
(任務)
第三条  防衛省は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つことを目的し、これがため、陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊(自衛隊法 (昭和二十九年法律第百六十五号)第二条第二項 から第四項 までに規定する陸上自衛隊、海上自衛隊及び航空自衛隊をいう。以下同じ。)を管理し、及び運営し、並びにこれに関する事務を行うことを任務とする。
2  防衛省は、前項に規定する任務のほか、条約に基づく外国軍隊の駐留及び日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定(以下「相互防衛援助協定」という。)の規定に基づくアメリカ合衆国政府の責務の本邦における遂行に伴う事務で他の行政機関の所掌に属しないものを適切に行うことを任務とする。


○自衛隊法
(自衛隊の任務)
第三条  自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする。
2  自衛隊は、前項に規定するもののほか、同項の主たる任務の遂行に支障を生じない限度において、かつ、武力による威嚇又は武力の行使に当たらない範囲において、次に掲げる活動であつて、別に法律で定めるところにより自衛隊が実施することとされるものを行うことを任務とする。
一  我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対応して行う我が国の平和及び安全の確保に資する活動
二  国際連合を中心とした国際平和のための取組への寄与その他の国際協力の推進を通じて我が国を含む国際社会の平和及び安全の維持に資する活動
3  陸上自衛隊は主として陸において、海上自衛隊は主として海において、航空自衛隊は主として空においてそれぞれ行動することを任務とする。

(防衛出動)
第七十六条  内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃(以下「武力攻撃」という。)が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至つた事態に際して、我が国を防衛するため必要があると認める場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。この場合においては、武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律 (平成十五年法律第七十九号)第九条 の定めるところにより、国会の承認を得なければならない。
2  内閣総理大臣は、出動の必要がなくなつたときは、直ちに、自衛隊の撤収を命じなければならない。
(命令による治安出動)
第七十八条  内閣総理大臣は、間接侵略その他の緊急事態に際して、一般の警察力をもつては、治安を維持することができないと認められる場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。

(災害派遣)
第八十三条  都道府県知事その他政令で定める者は、天災地変その他の災害に際して、人命又は財産の保護のため必要があると認める場合には、部隊等の派遣を防衛大臣又はその指定する者に要請することができる。
                                            弁護士 三木秀夫

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