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プラン9・フロム・アウタースペース
PLAN 9 FROM OUTER SPACE

米 1956年 78分 白黒
製作 エドワード・D・ウッド・Jr.
監督 エドワード・D・ウッド・Jr.
脚本 エドワード・D・ウッド・Jr.
出演 ベラ・ルゴシ
   グレゴリー・ウォルコット
   ヴァンパイラ
   トー・ジョンソン
   ジョン・ブリッケンリッジ
   クリズウェル


 60年代アメリカの深夜テレビでイヤというほど放映された、アメリカ人なら誰もが知っている映画である。しかし、劇場公開はされていない(註1)。あまりにヒド過ぎたために買い手がつかなかったのだ。そして、ひと山いくらで売られて、テレビで頻繁に放映されて、そのヒドさがゆえに有名になった。月日は流れて1980年、『ゴールデン・ターキー・アワーズ』という本で「史上最低の映画」に選ばれて今日に至る。

 とにかく、これほど瑕瑾の多い映画も珍しい。それを挙げ列ねるだけで一冊の本が書けてしまうほどだ。
 最大の瑕瑾は何といっても、主演のベラ・ルゴシが途中で死んでしまっていることだろう(註2)。だから、彼が登場するシーンは同じフィルムの使い回しだし(左写真)、代役が登場すれば、マントで顔をわざとらしく隠している。


 セットもチャチなことこの上ない。飛行機の操縦席は学習椅子を二つ並べただけ。操縦桿はただの板だ。
 更に驚くべきなのはダンボール製の墓石である。出演者が倒れるとこの墓石も飛び跳ねる。これがギャグではないのだから驚きである。
 そして、空飛ぶ円盤はどう見ても自動車のホイールキャップである(註3)。しかも、映画が進むにつれて、こんな台詞が飛び出す。
「今日、宇宙船を見たんだ。葉巻型だった」
 おい、形が違うぞ。

 物語も不可解そのもので、とても言葉では説明できない。とにかく宇宙人がやってきて、墓荒らしをして死体を蘇らせて自らの存在を市民にアピールしているらしいのだが、その手段がどうして墓荒らしなのか?。まったく理解できない。
 ラストで宇宙人が延々5分にも渡る演説を打つが、何を云っているのやら、さっぱり意味が判らない。それを直立不動で聞いている地球人(左写真)。まるで前衛芸術を見ているかのようである。

 なお、この不可解な映画の監督エドワード・D・ウッド・Jr.の恐ろしく数奇な半生は、奇才ティム・バートンにより『エド・ウッド』として映画化されている。彼が本作の製作に向けて暴走して行く様が丁寧に描かれており、本作を見た後だと大爆笑できること請け合いである。

註1 実は59年に添え物として公開されている。
註2 実はルゴシが死んでから本作は製作された。
註3 実は当時発売されていた円盤のプラモデルらしい。


備考

 この映画のことを我が国で初めて紹介したのは、私の知る限りでは、88年頃に『テレビぴあ』に掲載された久住昌之氏のコラムである。史料的価値があるので、ここに掲載しよう。

「『今まであなたが見てどんなにヒドイ映画よりもクダラナイ映画がここにある』という開き直った売り文句の『死霊の盆踊り』。あまりにツマラナクて逆に面白いかな、という裏読みは見事に外れ、本当に死ほどツマラなかった。ボクは夜中にひとりで見ていて、腹が立つより死にたくなった。
 という話をするとみんな面白がるので、そういう人のためにもう一つ紹介したい。日本ではまだ未発表なのだが、これは『盆踊り』以上によくできたヒドさである。『プラン9・フロム・アウタースペース』がそれだ。ビデオ盤には『ザ・ワースト・ムービー・オブ・オール・タイム』とサブタイトルが入っている。オールタイム最悪なのだ。
 これは有名なドラキュラ役者ベラ・ルゴシの宇宙ドラキュラものなのだが、実はこの映画がクランクインしてわずか二週間でルゴシが死んでしまったんだそうだ。で、普通だとそこで中止される撮影がなぜか続けられて、できた映画がこれでござい。
 ルゴシの生前に撮った場面を何回も使っている。しかもその時たまたま後ろを白い車が通るので、ドラキュラが出るといつも白い車が通る。別人が扮している場面では、妙にマントで顔を隠したり、サッと後ろを向いたりする。セットのチャチさ、円盤のオモチャ具合、話の強引さもバツグンだ。
『ありゃないよなァ!』とか『ほら、白い車が通るぞォ通るぞォ、ホラ来た!』とか『顔隠すなよォ!』とか、みんなで画面に向かって言いながら見ると盛り上がる。
 このビデオは作家の鏡明さんがアメリカで買ったもので、ボクは南伸坊さんちで見た。
 鏡さんはこれを南さんに貸す時に、
『絶対にひとりで見ないように』
 と注意したそうです。ひとりで見ると単にヒドい映画で、ひとりでツマラナイ思いをする。ビデオの側から見方を指定してくれるような作品、もっと増えていくでしょう」


関連人物

エドワード・D・ウッド・Jr.(EDWARD D. WOOD JR.)
ベラ・ルゴシ(BELA LUGOSI)


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