デス・レース2000年 米 1975年 |
十年ほど前、TVゲームの制作に関わっている後輩から「何か面白いゲームのアイデア、ないすか?」と訊かれて、即座に「デス・レース2000年!」と答えたことがある。大陸横断のレースゲームで、人を轢き殺すとボーナス得点。大人よりも子供や老人、身障者の方が得点が高い。面白いじゃないか。 西暦2001年、アメリカは独裁国家になっていた。国民の不満のガス抜きは年に一度のデスレース。優勝者は国民的ヒーローとして奉られる。昨年の優勝者、フランケンシュタインはレザーのつなぎに黒マスク、黒マントをなびかせた謎の怪人。これに対するのがマシンガン・ジョー。シチリアン・マフィアの風貌をした、あからさまのワルである。西部劇から抜け出たようなカラミティ・ジェーンは、長い黒髪にウエスタン・ハットの似合う、小股の切れ上がったいい女。かたや、金髪美女のマチルダ・ザ・ハンはネオ・ナチスの信奉者。ファッションは鉤十字一色で、これはこれでソソるものがある。そして、まるで『ベンハー』のような衣装のネロ・ザ・ヒーロー。以上、5人のレーサーたちが民間人をドカドカ轢き殺しながら競い合うが、レジスタンスの工作により、一人また一人と抹殺されていく.....。 |
レーサーたちが個性的なら、轢き殺される方も個性的だ。 |
製作はロジャー・コーマン。「B級映画の帝王」の異名を持つアメリカ映画界のドンである。うまい、安い、早いの三拍子、吉野屋のような映画を量産し、娯楽映画の王道を極めたお方。本作の原作を読んでブラックコメディに仕上げることに決めたのは彼である。さすが、心得ていらっしゃる。 コーマンの決定を受けて監督に抜擢されたのは、ブラックコメディを得意とするポール・バーテル。後に『フライパン殺人』というバカな映画を監督・主演した変なおじさんだ。 無名時代のシルベスター・スタローンが出演していることも、本作がカルト化した要因の一つだろう。ちなみに、彼のギャラはたったの1000ドル。『ロッキー』でブレイクする数ケ月前のことだった。 |
備考 |
本作はトム・クルーズにより『DEATH RACE 3000』としてリメイクが企画されているそうだが、『スパイ大作戦』の例がある。「オレってカッコええやろ?」節フルスロットルの、まったく別の映画になることは間違いない。 |
関連人物 |