女囚さそり/第41雑居房 東映 1972年 89分 |
以下は伊藤俊也監督の弁。 「僕が『さそり』を短命に終わらせたのは、作品に対して決めたことがあったからなんです。一つは、ストーリーは連続させる。シリーズの要諦というのはフリダシに戻すということで、例えば『寅さん』なら必ず柴又に戻って来てマドンナを見つける、みたいなね(笑)。それをやめて、話はずっと続いていく、と。それと、これは馬鹿なことを考えてたんですが、1作ごとに方法論を変える。そういう方法論を取る限り、どこかでどん詰まりになるだろうと思ってました」 なるほど。だからこそ伊藤監督の『さそり』は毎回斬新で面白いのだ。 |
その5人の女囚たちを紹介しよう。 連れ子いびりの再婚相手を絞め殺した女には荒砂ゆき。この人、世間ではほとんど認知されていないが、『夜のメカニズム』というフェロモン満開歌謡で廃盤マニアにはかなり知られたお方。俳優小劇場出身の、これまた「正当派」だが、どうしたわけかお色気歌謡の方に進み、こうして『さそり』に出ています。 |
|
大映の女番長映画で名を馳せ、『プレイガール』にも出ていた八並映子は、不倫相手の妻を毒殺した色情狂。男に会えるうれしさからよかちん音頭を歌い狂うも束の間、追っ手に射殺されてしまう。 5人の中で唯一さそりと心を通わす女、てて親殺しの石井くに子は、3人の温泉客に犯された上に殺される。彼女の殺害シーンがこれがまた凄い。彼女の死を川下のさそりたちに知らせるために、伊藤監督は滝の上から大量の血糊を流すのである。一瞬で真っ赤に染まる濁流。あまりの壮絶さに開いた口が塞がらない。 石井の死に激怒した女囚たちは、温泉客を人質に観光バスを乗っ取る。残りの二人はレズビアンの放火魔伊佐山ひろ子と、売春婦の賀川雪絵。しかし、検問でさそりを裏切ったばっかりに、さそりの報復に遭い、皆殺しとなるのであった。 |
今回は梶=さそりは淡々と傍役を演じている。もちろん、彼女はドラマの軸であるが、むしろ、共に脱走した5人の女囚たちの悲惨な人生にスポットは当てられている。つまり、さそりは本作では傍観者に徹しているのである。 まず、冒頭。査察に来た法務省のエライさん(戸浦六宏)に牙を向き、彼を失禁させて大恥をかかせる。 郷田所長を刺し殺したラスト。さそりを先頭に、早朝の新宿を裸足で走る女囚たちが数十名。さそりのおかげで、彼女たちの怨霊は解放されたのだ。かくして奇妙な爽快感と共に第2部は終了。最も過激な第3部へとストーリーは続く。 |