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溶解人間
THE INCREDIBLE MELTING MAN

米 1977年 85分
監督 ウィリアム・サックス
脚本 ウィリアム・サックス
特撮 リック・ベイカー
出演 アレックス・レバー
   マイロン・ヒーリー
   バー・デベニング


 1977年、『未知との遭遇』や『スターウォーズ』と同じ年に製作された50年代怪奇SFへのオマージュ。明らかな低予算で、演出も凡庸。サスペンスが盛り上がらないダメ映画であるが、私にとっては結構大切な映画ではある(註1)。

 帰還した宇宙飛行士が怪物になっていた、というありがちな物語。ドロドロと溶けるに比例してドンドンと怪力になる不思議。しかも、どういうわけか人肉を喰う。彼のかつての同僚が救いの手を差し伸べるが、こいつがまったくの無力能ナシで、何もできないうちに死ぬ。やがて怪物も力が尽きて、ばっちいゲロ状物質へとドロドロ溶けてなくなっておしまい。

 とまあ、そんな無情且つ無意味な物語はどうでもよろしい。この映画で特筆すべきなのは、本筋とは関係ない、どうでもいいようなシーンが極めて印象的に描かれている点である。

 例えば、溶解人間が看護婦に襲いかかるシーン。長い廊下の向こうからかなり太めの看護婦がこちらに向かって走って逃げるさまを延々とスローモーションで映し出す。しかし、このショットにどれだけの意味があるのかクエスチョンである。たまたま長い廊下がある倉庫(とても病院には見えない)をロケハンで見つけて、
「なんかいいよな」
 とか云いながら、無理矢理に付け加えたとしか思えない(註2)。
 しかし、どういうわけか妙に記憶に残るのだ。

 この他にも、殺された釣り人(写真上)の頭部が小川を流れて、滝から落ちてクチャリと潰れるまでを執拗に追いかけたりとか、グラビア撮影のモデルが「おっぱいは見せないっていったじゃないよ!」とカメラマンに怒鳴ったりとか、将軍が夕食を摂ろうと冷蔵庫を開けるとフライドチキン一切れしか入ってなくてガッカリとか、そんなどうでもいいようなシーンばかりが記憶に残る。これは何かの狙いなのか?。一度監督に訊いてみたいものだ。

註1 何がどう「大切」なのかは「スパイダーマン」の項を参照して下さい。

註2 この長い廊下の倉庫は、この監督の次回作『ギャラクシーナ』でもロケ地に使われている。よっぽど気に入ったようだ。


関連作品

ギャラクシーナ(GALAXINA)
スパイダーマン(THE AMAZING SPIDER-MAN)


 

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