小人の饗宴 新西ドイツ 1970年 96分 |
トッド・ブラウニングの伝記『『フリークス』を撮った男』(水声社刊)にはこのような記述がある。『フリークス』撮影中のことである。 「シャム双生児と小人だけは、食堂内で他のフリークスたちに無視された。(中略)映画で見せた団結とは全く対照的に、彼らは普通の人間と同じように、虚栄心や自尊心があり、競争意識も持っていたのである」。 『フリークスたちのプロとしての嫉妬心には驚いた。誰一人として、互いに他の者を表現する言葉を吐かなかったのだから。(中略)彼らも皆、サイドショーの世界ではスターだったんだ。というのもサイドショーでは本物の怪物が何人もいるなんてことはなく、たいていの者は皆、それほど目立たない畸形の者たちなんだよ。私のもとには12人のスター、それも世界でも珍しいフリークスたちがいたんだ。だから、今までハリウッドのスターが受けたことのないような機嫌取りをしなきゃならなかった』(トッド・ブラウニング) この記述を読んだ私は「そうだろうそうだろう」と嬉しくなった。『フリークス』の邦題に「神の子ら」とかサブタイトルを付けたりだとか、そうした畸形や障害者を神聖視する態度にキナ臭いものを感じていたからだ。障害者にだって性欲はあるし、畸形だって差別する。 小人ばかりの施設で叛乱が起きる。院長(これまた小人)を監禁して、木に火をつけたり家畜の豚を殺したり自動車を崖から落としたりと、とにかくメチャクチャに暴れまわる。 筒井康隆には『人世に三人在れば』という未発表の作品があるという。ホステス全員が身体障害者のクラブを舞台にしたブラックユーモアだそうだが、この映画とテーマが通じる。 |