これほど評価が分かれる作品も珍しい。私の知る限りでは「傑作」か「最低」かのどちらかである。
で、私の評価はと云えば、初見の当時は「最低」であった。とにかく、あまりにも陰惨なのだ。
一言で云えば、イタリアの古城を相続した一家がトンデモない目に遭う物語である。この城には化け物が幽閉されていて、こいつがただひたすらにヤリたい一心で娘と嫁にフルチン(ボカシあり)で襲いかかるのである。
《陰惨・その1》
この化け物、実はこの城の主たる老婦人の一人息子であった。夫に逃げられた腹いせに5歳の時から40年にも渡り地下牢に幽閉されて、毎日のようにムチで虐待されてきたのである。
《陰惨・その2》
古城を相続した一家もトラブルを抱えていた。夫=ジェフリー・コムズの不注意で交通事故を起こし、幼い息子は死に、娘も盲目になってしまったのだ。妻=バーバラ・クランプトンは夫をなじり続け、夫婦生活もお預けのままだ。
《陰惨・その3》
老婦人は老衰で死に、その息子である化け物もそのまま朽ち果てる筈だった。ところが一家が越して来たために、長きに渡り封印されてきた性欲が爆発。手錠から抜け出すために己れの親指を喰いちぎる。
《陰惨・その4》
妻になじられた夫は救いを酒に求め、そして、行きずりの女(実は商売女)と一夜を共にする。この一部始終を化け物が目撃。情交後の女を誘拐し、その乳房に喰らいつく。
《陰惨・その5》
化け物に惨殺された商売女は、なんとその村の警察署長のイロだった。無実の夫は逮捕され、弁護士からも恐喝される。その間に化け物はチンポコをパンパンに腫して娘に迫るのであった。
とまあ、明るい話題が一つもないのである。重い、重い。
「娯楽映画でどうしてこんなに重い気分にならなきゃならないの?」
と云うのがほとんどの観客の正直な感想であろう。この監督の旧作『死霊のしたたり』や『フロム・ビヨンド』のブラックユーモア路線を期待した者ならなおさらである。
よく出来たゴシック・ホラーには違いないが、もう少しユーモアを交えてもよかったのではないか?。
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