美女の皮をはぐ男 スペイン=仏 1961年 86分 白黒 |
「スペインを代表する映画監督は誰か?」と訊かれて、普通の人は、まず答えられない。スペイン映画なんて見たことない、ってのが大多数なのだろう。 |
もっとも、本作のプロット自体は、大ヒットしたフランス映画『顔のない眼』からの盗用であり、その点での志の低さは否めない。しかし、作品全体を覆う猥雑な雰囲気と、斜に構えた不安定なカメラ・アングル、そして、何よりも美女を襲う不気味な男の存在感が奏功して、『顔のない眼』よりも怖い作品に仕上がっている。 オーロフ博士の目的は、顔に傷を負った娘に皮膚の移植をすることだった。そのために博士は、処刑された殺人鬼モルフォを蘇らせて、彼に美女を誘拐させるのだが、移植手術は一向にうまくいかない。やがて、モルフォが恋心を抱く娘にも手を出したために、博士も彼に殺されるのであった。 なお、フランコは88年に、本作のリメイクと呼ぶべき『フェイスレス』を撮っている。ヴィスコンティ映画でお馴染みの色男ヘルムート・バーガーが博士に扮し、キャロライン・マンローを誘拐するのであるが、あまりのヒドさに同じ監督なのかと見紛うほどだ。テリー・サバラス扮する刑事(註1)がことのあらましを知り、「そりゃ大変だ」とか云って、現場に向かうショットでブチッと切れて、物語が完結しないままに映画は終わる。フランコの投げやりな姿勢に唖然としたものである。 註1 見直したら、刑事じゃなくてマンローの親父だった。 |
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