双頭の殺人鬼 米=日 1959年 73分 白黒 |
この映画、実際に観てみると、巷で云われているほどにヒドくはない。50年代に流行した低予算怪奇SFにしては、まずまずの出来である。しかし、それでも我々に奇異な印象を残すのは、この映画が日本でロケされているからだろう。 日本に駐在する新聞記者のラリーは、ラジウムの人体への影響を研究する鈴木博士の研究所を訪れた。ところが、博士は人体実験に失敗したばかりで、次なるモルモットを模索中。飛んで火に入る夏の虫とばかりに、ラリーは睡眠薬を盛られて注射を打たれる。敏腕な新聞記者ならばこの時点で不審に思う筈なのだが、ラリーは温泉で接待されてイイ気分。鈴木博士の美人秘書までごちそうになって、炭坑節を踊り狂う始末。享楽三昧の日々を送る。 日本を舞台にした変な映画は数あれど、本作の文化考証は意外にマトモである。そのわけは、新東宝を中心とした日本人スタッフが参加していることにもあるが、私には原作・製作まで手掛けたジョージ・ブレークストン監督にあるように思えてならない。 |
などと断言してしまったが、ここまで書き上げた直後に我が国の怪奇映画を網羅した『銀幕の百怪〜本朝怪奇映画大概』(泉速之著・青土社刊)という本を入手、私の推理がまるでデタラメであったことを知る。 なお、我々の世代には「国分寺書店のオババ」として知られている武智豊子が出演しているのは意外であるが、その役はあんまりである(左写真)。『悪魔の植物人間』ばりのフリークス。両眼の位置がズレており、出っ歯はまるでミスター・ブーだ。檻の中に住んでいて「ウガー、ウガー」と唸るだけである。 |