キートンの探偵学入門
SHERLOCK JR.
米 1924年 50分
監督 バスター・キートン
出演 バスター・キートン
キャサリン・マクガイア
ウォード・クレイン
ジョセフ・キートン
旧題『忍術キートン』の本作は、前作『荒武者キートン』とは打って変わって、漫画的なギャグが目白押しだ。漫画的なのも道理、すべてが夢の中の物語なのである。
窃盗の容疑をかけられた映写技師のキートンは、映写中に不貞腐れて寝てしまう。すると、夢の中の映画でも盗難事件が発生。キートンは映画の中に入り込み、難事件を解決する。
「映画の中に入る」というアイディアが秀逸である。客席から舞台に上がり、映画に入り込むキートン。ところが、悪漢に押し出されてしまう。再び入り込んだものの、どういうわけか背景がコロコロと変わる。玄関先が交差点に変わる。車に轢かれそうになるキートン。慌てて逃げると、崖の上に変わって落ちそうになる。ライオンに囲まれたり、汽車に轢かれそうになったり、溺れそうになったりする。困り果てたキートンの姿で画面はフェイドアウト。次の場面でキートンはようやく映画に受け入れられて「シャーロック・ジュニア」の役を与えられる。
後半はキートンが舞台で培った離れ技の連続だ。窓を飛び抜けると衣装が変わる早技や、鞄の中に飛び込む脱出技等々。
スタントマンを使わない彼は怪我が絶えなかった。本作の撮影中にも首の骨を折っている。列車の屋根を走り、給水塔のノズルに掴まって落下する場面である。エレノア・キートンは語る。
「彼は大量の水を浴びて落ちるのですが、水の勢いを誤算していました。線路に叩き落とされた彼は後頭部を強打して、撮影は数日間中断されました。その後も数ヶ月は酷い頭痛に悩まされたそうです。それから10年ほど経った或る日、彼は検査した医師に訊かれました。『いつ首を骨折したんですか?』『首を骨折?』『ええ、折れてますよ』。彼はしばらく考えて『ああ、あの時だ。給水塔から落ちて後頭部を打ったんです』。医師は『なるほど』と納得したそうです」
『探偵学入門』は大ヒットしたが、批評は芳しくなかった。曰く「独創性に欠ける」。この作品のどこが独創性に欠けるのか?。当時の批評家はバカったれか?。
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