無理矢理ロッキー破り
PLAY SAFE (a.k.a. CHASING CHOO CHOOS)
米 1927年 22分
監督 ジョセフ・ヘナベリー
出演 モンティ・バンクス
ヴァージニア・リー・コービン
今回はサイレント喜劇の隠れた傑作を紹介しよう。もっとも、筒井康隆氏が『不良少年の映画史』の第1回で紹介しているので「隠れた」というほどでもないのかも知れないが。
『追跡珍名場面集/ザ・グレート・チェイス』という63年製作の、往年のドタバタ喜劇のオムニバスで初めて観たのだが、これがもう面白いのなんの。スタントもかなりの命懸けだ。例えば、左の写真を見て頂きたい。対向車線の汽車が自動車に衝突する瞬間に、間一髪のところで乗り移るのだ。今観てもハラハラドキドキなのだから、当時の観客は大興奮だったことだろう。
ところで、筒井氏は『不良少年の映画史』の中で、故淀川長治氏との対談を引用している。そのやりとりがあまりに面白いので、一部紹介しよう。
「チャップリンそっくりの扮装のモンティというのをご存じですか?」
「モンティ・バンクス。よく知ってますよ」
こんなマイナーなコメディアンを「よく知って」いるのだから、さすがは淀川、恐るべし。
「やっぱりあれはチャップリンのにせものですか?」
「にせものじゃないんですね。モンティ・バンクスというのは、やっぱりモンティ・バンクスの個性で出てきたんですけどね。(中略)あなたがチャップリン風に思われたこと、小男なんですね。そうしてちょっと八の字のチョビ髭はやしているんですよ。それであなたがチャップリンのことを思われたんでね。ちょっと違いますね」
「チャップリンのにせもの」との筒井氏の表現も抜群だが、淀川氏の説明も抜群に面白い。惜しい人を亡くしてしまったなあ。
ちなみに、この「チャップリンのにせもの」(←だから、にせものじゃないんだって)、モンティ・バンクスは、チャップリンやロイド、キートンとは異なり、スタントマンを使っていたそうである。
やっぱりにせものなのかな?(←だから、にせものじゃないんだって)
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