血の魔術師 米 1970年 96分 |
本作のタイトル「血の魔術師」は、世界に先駆けていくつもの血みどろ映画を世に放ったハーシェル・ゴードン・ルイスの代名詞となっている。ルイスの演出は「手品師」と呼べるほど手際のよいものではなかったが、血のイリュージョンを見せていたという意味で、ルイスの代名詞としてこれほどふさわしいものはない。本作もまた、ルイスの代表作と云える内容になっている。 「何が現実で、虚構であるのか、諸君にはその境界が判らない。しかし、その支配者がこの世にたった一人だけいる。それが私、モンターグなのである」 |
ジャックはテレビ局に走るが、モンターグはブラウン管を通じて視聴者を催眠術にかけて、何十万人という人々を一度に殺害しようとしていた。手始めにシェリーを焼き殺そうとしているところにジャックが乱入。間一髪のところでモンターグに体当たりして炎の中に押し込む。断末魔の叫びを上げて灰となるモンターグ。かくして大量殺戮は未然に防がれたのであった。 『血の魔術師』は極めて異常な作品である。と同時に、映画の虚構性を描ききったという意味で、ヌーベルバーグ以上に自覚的な作品である。私は初めて観た時、アラン・レネの『去年マリエンバードで』を思い出してしまった。『血の魔術師』にはレネの作品ほどの品格はないが、その質において決して見劣りするものではない。そして、それほどに自覚的な作品をルイス如きがものにすることが出来たこと自体が、本作の異常性を更に高めているのである。 |
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