「エスパー・スパイ=エスパイ」の映画だというので、ワクワクしながら座席に着いたら、尾崎紀世彦が唱う『愛こそすべて』なるバラード(演歌調)がタイトルに流れて嫌な予感がしたが、その予感は適中した。
クールなスパイ物かと思ったら、「最後に愛が勝つ」とアジる女々しい映画であったのだ。
レーサーの草刈正雄がハトを轢き殺すまいとして念動力を使い、エスパー開眼するのは、まだいいとしよう。
由美かおるの貞操を守るために念動力を使い、そのために「超能力インポ」となる藤岡弘も、まあいいだろう。
しかし、圧倒的に強かった敵方の大将、若山富三郎が藤岡弘の「かおるちゃんラブラブパワー」にあっさりと負けて、
「愛か。愛ゆえの超能力か」
などとホザきながら焼け死ぬラストはどうしたものか?。案の定、バックに尾崎紀世彦が唱う『愛こそすべて』が流れ、観客の期待を台無しにして映画は終わる。
内容は「エスパイ」ではなく「エスピー」の物語である。主人公たちの任務は諜報活動ではなく、要人警備に尽きるからだ。
で、彼らに敵対するオロロフ一家は、世界征服を企む超能力集団。設定こそ『スキャナーズ』にそっくりだが、超能力者の苦悩を描くことなく単なるポリティカル・アクションに終始している。
しかし、ポリティカル・アクションとしても、今となっては時代遅れだ。米軍が研究していた「超能力の軍事利用」というのは「念動力」ではなくて「遠隔視」なのだよ。敵の基地なんかを千里眼で探るやつ。この線をベースに、念動力を交えた諜報戦を描けば面白いものになったんじゃないか?。
しかし、テーマが「愛」じゃあねえ。
どうも小松左京ってえ人は『さよならジュピター』といい、「愛」が大好きなんだねえ。
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