1998年4月24日、ペンシルバニア州エディンボロでの出来事である。
その日の晩、郊外のダンス・ホール「ニックス・プレイス」ではパーカー中学校の卒業パーティーが催されていた。
卒業生の1人、アンドリュー・ウォースト(14)が現れたのはパーティー終了の20分前、午後9時40分頃のことだった。入口の前にいた教師のジョン・ジレット(48)は彼に声を掛けた。
「よく来たな。もう来ないかと思っていたよ」
すると、ウォーストはジャケットのポケットから拳銃を取り出し、ジレットの額に目掛けて発砲した。即死だった。
その後、ウォーストはパーティー会場に入り、弾を撃ち尽くすまで無差別に発砲した。これにより2人の男子生徒と1人の女性教師が負傷した。その時、パーティー会場には映画『タイタニック』の主題歌『マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン』が流れていたという。或る男子生徒曰く、
「恐ろしい出来事でした。まるで悪夢のようでした。私たちはみな泣き叫び、そして、神に祈りました」
会場を後にしたウォーストは、間もなくダンス・ホールのオーナーにショットガンを突きつけられて降伏した。
ウォーストは地味な生徒だった。だが、特にイジメられていたという訳ではない。では、動機はいったい何だったのか? ウォースト曰く、
「当日はダンス・ホールで自殺しようと思っていました。ところが、あんなことになってしまいました。どうしてそうなったのかは自分でも判りません」
実際に彼の枕の下から遺書が発見された。死ぬつもりだったことは確かなようなのだが、どうしてまた…。
法廷において、弁護人は精神異常を主張したが、結局、司法取引に応じて有罪を認め、30年から60年の刑を云い渡された。つまり、2029年以降は仮釈放が認められることになる。
思うに、ウォーストが精神を病んでいる可能性は高い。仮釈放される前に是非、治療を受けて頂きたい。
(2013年1月5日/岸田裁月) |