1967年8月7日、エディンバラ近郊の田舎町、ビガーの墓地で15歳の少女、リンダ・ピーコックの遺体が発見された。彼女は前日の晩から行方不明になっていた。死因は絞殺である。強姦はされていなかったが、衣服は乱れ、右の乳房には歯形が残されていた。
当時、歯形は犯人の識別にはまだ用いられていなかった。そこで法医学の権威にお伺いを立てたところ、十分に識別可能との回答を得た。歯形にも指紋のような個性があるのだ。
地元の不良を中心に捜査を進めていた警察は、やがて一人の男に目星をつけた。ゴードン・ヘイという17歳の少年である。ヘイは一切の関与を否定したが、その歯形を取ることに成功した。そして、これが遺体の歯形と一致したために、遂に逮捕に至ったのである。
結局、ゴードン・ヘイは18歳未満であったために、有罪とはなったものの終身刑を科されることなく、不定期刑に留まった。本件は英国において、歯形が決定的な証拠になった最初の事件として知られている。
(2012年10月16日/岸田裁月)
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