1987年3月2日、ミズーリ州での出来事である。
ネイサン・フェリス(12)は優秀な生徒だった。しかし、内向的で、友人と呼べる者はたった一人しかいなかった。そして、些か太り気味の彼は、毎日のように学校でイジメられていた。
事件前日の晩、ネイサンは唯一の友達に電話をしている。
「もうイジメには耐えられない。明日、銃で決着をつけるつもりだ。だから、君は明日は学校に来ない方がいい」
しかし、その友人は真剣に受け取らなかった。
翌日、父親の拳銃を携えて登校したネイサンは、教室に入って席についた。やがて、いつものようにイジメっ子が彼のことをからかい始めた。
ズドン。
イジメっ子は床に倒れた。
ズドン。
ネイサンもまた崩れ落ちた。あっという間の出来事だった。彼は最初にイジメて来た同級生を射殺して、その直後に自殺することで「決着をつける」つもりだったのだ。
あってはならない出来事である。しかし、これが銃社会であるアメリカの現実なのだ。
(2012年12月15日/岸田裁月)
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