1986年11月、ウィスコンシン州フィリップスにおいて、カーラ・レンズという17歳の少女が行方不明になった。
その約2年後の1988年9月9日、ジョン・ウェバーという24歳の男がカーラの姉、エミリー・ウェバー(22)を暴行した容疑で逮捕された。2人はカーラが行方不明になる前から夫婦だった。
事件は概ね以下のようなものだった。
3日前の9月6日夜、ウェバーは「サプライズがあるから」とエミリーを車に乗せ、両親が所有する農家(但し、現在は空き家)へと連れて行った。そこでウェバーはエミリーにナイフと突きつけ、ガムテープで口を塞ぎ、両手を後ろ手に縛り上げて、スコップで二十数回にも渡って殴りつけた。その上、手足や胸をナイフで切りつけたり、性器に煙草の火を押しつけたり、手押し車のハンドルを挿入したりと、もうメチャクチャである。そして、翌日に病院に運び込んだわけだが、その際にウェバーはエミリーと口裏を合わせることを忘れなかった。
「いいか。医者や警察には3人の暴漢に襲われたと説明するんだ。俺の仕業であることをバラしたらどうなるか判ってるな」
しかし、保安官は彼女の説明を信じなかった。曖昧な点が多過ぎるのだ。改めて事情聴取を行うと、エミリーは夫の犯行であることを告白した。
ウェバーの車を捜索した捜査官は、オーディオ・プレイヤーに半ば差し込まれたカセットテープを発見した。早速、再生してみる。スピーカーから流れて来たのはウェバーの声だった。エミリーに宛てたそのテープの中で、ウェバーはカーラ・レンズの殺害を告白していた。如何にして虐待し、如何にして強姦し、如何にして殺害し、如何にして切り刻んで埋めたかを淡々と語っていたのである。そして、エミリーをこのように脅迫していた。
「俺に従わないなら、お前もカーラのように消してやる」
ウェバーは当初は犯行を否定していたが、カセットテープを聞いた旨が告げられると、素直に犯行を認め、遺体を埋めた場所を地図で指し示した。
かくしてジョン・ウェバーは1件の殺人と、その他諸々の罪で有罪となり、168年の刑が云い渡された。
なお、一部報道の中には、ウェバーがカーラの肉を食べたとするものもあったようだが、その真偽は定かではない。
(2011年5月2日/岸田裁月) |