ユタ州ソルトレイクシティ在住のウォルター・ケルバック(28)とマイロン・ランス(25)は共に前科者の同性愛者だった。おまけにサディストの彼らの犯行には目に余るものがある。
1966年12月17日深夜、ヤクでラリラリの2人はガソリンスタンドに乗りつけ、店員のスティーヴン・シェア(18)を銃で脅して147ドルを奪うと、彼をステーションワゴンの後部座席に押し込み、町外れまで飛ばして交替で犯した。その後、コインでどちらが殺すかを決めた。勝ったのはケルバックだった。彼はナイフで胸を5回刺すことで目的を遂げた。そして、遺体を放置してトンズラした。
これに味をしめた2人は翌日にも別のガソリンスタンドを襲い、マイケル・ホルツを犯して殺した。このたびコインで勝ったのはランスだった。彼は心臓への一突きで鮮やかに決めた。
3日後の12月21日にはタクシーを襲った。運転手のグラント・ストロングは目配せする2人の客を不審に思い、無線の送信ボタンを2回押した。これはタクシー会社で決められていた緊急事態の合図だった。その直後に銃を頭に突きつけられた。
「金をよこせ!」
手持ちの金はたったの9ドルしかなかった。ケルバックはそれを奪うと、躊躇することなく引き金を引いた。飛び散る脳漿。思わずケルバックは叫んだ。
「なんてこった! こんなに血を見るのは初めてだ!」
警察が運転手の遺体を見つけた頃には、2人は空港近くのバーを襲撃していた。9ドルじゃ足りなかったのだろう。
店に入った彼らは、まず客を物色した。
「あの中年男が手頃じゃないか?」
かくしてジェイムス・サイズモア(47)が標的に選ばれた。ケルバックがピンボールをしている間、ランスがサイズモアの後ろに回り、冷淡にその頭を撃ち抜くや否や叫んだ。
「強盗だ! 金を出せ!」
レジの中の300ドルほどを奪うと、2人は5人の客と店主に向けて次々に発砲。これによりフレッド・リリー(20)とビヴァリー・メイス(34)が死亡した。
トンズラするイカレぽんち2人組は「いやっほう!」ってなもんだが、お楽しみの時間はこれまでだ。数時間後に検問であっけなく逮捕された。本来ならば死刑になって然るべきだが、当時の死刑廃止の風潮に従って終身刑に留まった。しかし、ケルバックがNBCテレビのインタビューでニヤケながらこのように語った時には、誰もが死刑にしなかったことを悔やんだことだろう。
「犠牲者に対しては何も感じない。人が死のうが気にしない。だって俺は死んで行くのを見物するのが好きなんだ」
(2009年2月5日/岸田裁月) |