1909年生まれのブルーノ・ルートケは、ジョン・クリスティーと同じタイプの男だった。意識のある女では勃たないのだ。
だから絞殺後に屍姦した。成人する頃には既に屍姦の常習犯だった。
ナチスの台頭と第二次大戦の混乱の中で、彼の犯行は発覚を免れていた。しかし、いいことばかりではなかった。ヒトラーが唱えた優生学政策の下、知恵遅れの彼はSSに捕らえられてパイプカットされてしまうのである。ナチスのおかげで逮捕を免れてきたというのに、そのナチスに子種を奪われてしまったのだ。皮肉なはなしである。
もっとも、屍姦専門なので子種は必要ないのだろう。性欲はなくなるどころか、以前にも増す勢いである。彼の犯行は益々エスカレートしていった。
その命運が尽きたのは1943年1月29日のことである。女性を絞殺したかどで逮捕されたルートケは、否定するどころかあっさりと85人の殺害を自供した。あっさりと自供したのには訳があった。彼は精神異常者は訴追されないことを知っていたのだ。抜け目がない男である。知恵遅れどころか、むしろズル賢いんじゃないかしら。
当局も精神異常者と判断し、彼を訴追しなかった。その代わりにウィーンの病院に収容すると、様々な人体実験を行った。
ズル賢いルートケ君。たしかにナチス政権下では精神異常者は訴追されないが、人権もないのだよ。
かくして生きながらにしてズタボロにされたルートケは、もう使い物にならないと判断されるや、薬物投与により抹殺された。1944年4月8日のことである。
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