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ジョン・ダフィー
John Francis Duffy (イギリス)



ジョン・ダフィー

 ジョン・ダフィーは、ジョン・クリスティーピーター・サトクリフ等に比べたら遥かに小物であるが、英国犯罪史上、初めてアメリカ流プロファイリングにより逮捕された男としてその名を記憶されている。

 ダフィーは、当初は2人組の強姦犯として犯罪界にデビューした。のっぽとチビの2人組で、チビの方がダフィーである。のっぽの方は未だに誰なのか判明していない。1982年から83年にかけて、実に18人も手篭めにした。やがて、のっぽが引退し、チビがピンで働き始めた。

 1985年7月、ダフィーは別居中の妻を強姦し、その男友達に暴行を加えたかどで逮捕された。この件で彼も一連の強姦事件の容疑者リストに加えられたが、2千人のうちの1人に過ぎなかった。
 釈放後、ダフィーはすぐさま女性を犯し、その容疑者として首実検に引っ張り出された。ところが、被害者はショックのためにダフィーの顔を憶えていなかった。この時、彼は思った。
「被害者を殺らないと捕まる」
 かくしてダフィーは連続殺人犯として再デビューすることになる。

 1985年12月29日、ロンドンに住むアリソン・デイ(19)は恋人に逢うためにハクニー・ウィック駅に向った。しかし、彼女は二度と恋人に逢うことはなかった。2週間後、石の重りをつけられた彼女の遺体が、駅近くの水路で発見された。
 彼女はレンガで頭を殴られ、後ろ手に縛られて強姦された。そして、彼女のシャツを裂いて作った布切れを首に巻かれて、棒でねじって絞殺された。

 1986年4月17日、マーチェ・タンボーザー(15)が自転車でイースト・ホースリー駅の脇の路地を抜けようとしたところ、ナイロンの紐が張ってあったために転倒した。そこでダフィーに襲われて強姦された。彼女もまた後ろ手に縛られて、棍棒で頭を殴られていた。
 ダフィーはよほど神経質になっていたようで、こんな奇抜な行動に出る。精液の痕跡を消すために、被害者の膣にティッシュペーパーを突っ込み、火をつけたのである。
 コンドームをつけた方がいいと思うんだけどなあ。
 しかし、この涙ぐましい努力は徒労に終わった。膣の中には精液が残っていたのだ。そして、現場に残された「異常に小さな足跡」から、あの「チビ」の犯行であることがバレてしまった。

 5月18日にはアン・ロック(29)が3人目の犠牲者になった。彼女も膣をティッシュペーパーで燃やされていた。
 その前日、エセックスのノース・ウィールドで、獲物を求めてブラついていたダフィーが警察の職務質問に遭っていた。彼のポケットにはナイフとティッシュが入っていた。ナイフのことを訊かれたダフィーは、
「日本の武道を習っており、それでナイフを使うんです」
 などと説明した。我々ならば「んなバカな」としょっぴくところだが、英国のポリ公はそのままリリースしてしまう。愚かなり。

 その頃には犯人の血液型と「チビ」が判っていたため、容疑者はかなり絞り込まれていた。7月17日にはダフィーも召喚されたが、彼はなんと、弁護士を伴って警察署に現れた。そして、血液の採取を拒んだ。神経質になるにもほどがある。これでは自白しているようなものである。
 更にダフィーはダメ押しをする。友人に頼んで、ボコボコに殴ってもらったのである。そして、よろよろとした足取りで警察署に行き、ごうとうにあいまひた、と申告し、そのまま病院に収容されたのであった。

 ダフィーは病院に逃げたつもりだったが、警察はサリー大学のデヴィッド・カンター博士からアメリカ流のプロファイリングのレクチャーを受けていた。博士が推理したプロファイルは以下の通り。
「年齢は20〜30歳。小柄な男ということだが、レイプする小柄な男は、自分に魅力がないと思っている可能性あり。こういう男は武術に興味を持っている。安定した結婚をしているとは考えにくい」
 それぐらい、レクチャーを受けなくても判りそうなものなのだが。
 とにかく、このプロファイルにドンピシャリの男がダフィーだった。「プロファイリングにより逮捕された」と云うよりも「プロファイリングが口実となり逮捕できた」というのが実情ではないだろうか。

 ダフィーは結局、終身刑を宣告され、最低30年は釈放されるべきでない旨を云い渡された。その際、判事はダフィーに念を押している。
「30年経ったら出られると思ったら大間違いだぜ」


参考文献

『連続殺人紳士録』ブライアン・レーン&ウィルフレッド・グレッグ著(中央アート出版社)
『世界犯罪百科全書』オリヴァー・サイリャックス著(原書房)
『世界犯罪クロニクル』マーティン・ファイドー著(ワールドフォトプレス)


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