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特集:マンガ原稿流出事件を考える。
030701 update
030703 ちょい修正
041017 「追記:マンガ原稿流出事件のその後」を追加しました。「さくら出版原稿流出事件を考える。」から「マンガ原稿流出事件を考える。」に改題しました。一部のリンクを修正しました。
050406 「追記:マンガ原稿流出事件のその後」に追記しました。
050502 「追記:マンガ原稿流出事件のその後」に追記しました。


目次
はじめに。
1)事件の経緯
2)作者と出版社の関係(原稿はだれのもの?)
2.1)破産関係(原稿を預けていた相手が破産してしまった!)
3)作者と古書店の関係(買った物は自分の物?)
4)作者は古書店に原稿返却を請求できるか?(どうすれば原稿は戻ってくるの?)
5)今回の事件で古書店は「善意の占有者」か。(不正品と知ってて買い取ったのか?)
6)まとめ……ちょっと待った!
7)著作物の譲渡権(著作権よ、もう一度)
8)最後に。(契約は大事。)
以上の記事は03年7月までに書かれたものであり、現状に即さない部分があることをご了承下さい。
追記:マンガ原稿流出事件のその後


はじめに。
法律には全くの門外漢なのですが、自分の頭を整理する意味で今回の事件を考えてみたいと思います。間違いや不適切な部分がありましたらご指摘いただけますようよろしくお願いします。

法律ははたして無慈悲か理不尽か。民法の占有や契約、破産法まで出てきて結構複雑になってしまいました。しかし現実社会ではよくあるタイプの事件であり、いろいろ考えさせられます。本事件はまだ明らかになっていない部分が多いので、今後の展開も予断を許しません。

参考リンク(041017一部修正)
[漫画原稿を守る会] 未返却原稿・会計報告ページ
刑法
民法
著作権法
古物営業法
破産法

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1)事件の経緯

概要は朝日新聞の記事流出漫画原稿、売らずに返して 弘兼憲史さん提訴へを参照。
詳細は旧[漫画原稿を守る会] ページから関連情報を辿ってください。

03年6月、さくら出版が発行するマンガ雑誌に掲載された作品の原稿、およびさくら出版から単行本を発行するために出版社に預けられていた原稿が、作者が知らないまま、マンガ系古書専門店のまんだらけで販売されていることがわかりました。さくら出版はここ数年、作家による原稿料支払いや原稿返却の要求に応じないなどの問題がありました。02年?にさくら出版は破産しました。しかし関係者への連絡はなく、責任者が姿を消して連絡が取れないため、未払い原稿料や預けたままの原稿の問題が宙に浮いてしまいました。数十名の作家の原稿が返却されておらず、その量は数千頁にのぼります。03年6月下旬になって、その原稿の一部がまんだらけで売られていることが作家の知るところとなりました。作家は、原稿の返却をまんだらけに求めています。

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2)作者と出版社の関係(原稿はだれのもの?)

著作者は、その著作物を複製する権利を専有しています(著作権法 第21条 複製権)。作者の許可無く好き勝手にコピーして配ることはできません。(ただし制限あり。第30〜50条)

作者と出版者の関係は、著作権法の出版権(第79条〜)によって定められます。作者は出版社に「自分の作品を複製して出版してください」と『出版権の設定』を行います。引き受けた出版社は出版権者となり、その作品を複製することができるようになります。出版権が設定されているときは、同じ作品を別の出版社が複製することはできません。出版権者は作品を独占的に印刷し、出版できるわけです。

ただし、出版社には義務があります(第81条)。出版権者となった以上は、作者から原稿を受け取ったら6ヶ月以内に出版しなくてはいけません。また、慣行に従って継続して出版しなくてはいけません。出版する約束だけして出版せず、権利を独占したまま他社からも出版できないと、作品の発表を妨げることになってしまうからです。

設定された出版権は、契約で特に決まっていなければ、最初の出版があった日から3年で消滅します(第83条)。また、出版社が上記の義務に違反したときは、作者は出版権を消滅させることができます(第84条)。出版権が消滅したら、作者は別の出版社と契約してあらためて出版権を設定し、そちらから作品を出版することができます。

出版者との関係において、原稿の所有権と著作権は基本的に作者にあります。出版社はそれを複製して出版するために一時的に預かっているに過ぎません。目的を果たしたら作家に原稿を返却するのが正当です。しかし、現実には出版社が長期にわたって原稿を預かる状況が見られます。後に単行本化や再録などを行う際に便利、などの理由があります。しかし、仮に重版を行う場合でも、出版社が勝手にやってはいけません(第82条の2)。

原稿が作者の所有物である以上、作者が返却を求めているのに出版社が原稿を返さなければ、不法行為で損害賠償責任を負います。(漫画原稿返却拒否事件 平成10年10月22日 東京地裁判決)
「本件原稿は原告の所有であって、被告会社においてその返却請求を拒む正当な根拠がないことは明らかである。」
「また、出版社がその出版に係る書籍について在庫品の販売を継続している間は出版権が存続しており漫画原稿を返却しなくてよいという商慣習が出版業界にあることをうかがわせる証拠はないから、被告会社が商慣習を根拠に本件原稿の返却を拒むことができるとはいえないし、原告の引渡請求が権利濫用になるということもできない。」
(判決文より)

また、原稿を紛失してしまった場合も出版社に対して賠償命令が出ています。(「損害賠償:原稿紛失した学習研究社に支払い命じる 東京地裁」毎日新聞02年8/26)
判決は、原稿料を払ったからといって原稿が出版社のものになるわけではなく、原稿の所有権は作者にあることを認めています。

基本的に、と書いたのは、著作権(第21条から第28条までに規定する著作権)は譲渡できる(第61条)からです。新人賞の投稿規定などの例に見られるように、著作権を出版社に譲渡する、また「原稿は返却しません」などの契約をした場合は、著作権や所有権は出版社に移ります。ただし著作人格権(第18条第1項、第19条第1項および第20条第1項)は譲渡できませんから、「誰々が描いた作品」という部分は変わりません。

前置きが長くなりました。

それでは、作者の所有物である原稿を預かっている出版社の人間が、作者の知らないところでその原稿を古書店に売ってしまったらどうでしょうか。人から預かっているものを、自分のものであるかのように好きにしてしまう(この場合売ってしまう)わけですから、これは刑法で定める横領の罪に当たります。しかも、出版社の人間が仕事で原稿を預かっているわけですから、業務上横領(第253条)でしょう。

(業務上横領)第253条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。

占有、というのは民法の占有権(第180条)によります。本来の所有者かどうかはともかく、現状で実質的な支配力を持っていると認められる状況……という感じです。人から預かって自分の手元に置いている状態も「占有」にあたります。

あるいは、原稿料を払うと言って払わない、原稿を返すと言って返さないことなどから、これは詐欺じゃないかという考えもあるかもしれませんが、今回のケースでは原稿の作品を収録した出版物は出版されているようなので、「出版契約を騙って原稿をだまし取った」というよりは、債務不履行および不法行為と考えられると思います。ちなみに刑法の詐欺罪は業務上横領と量刑は同じで、10年以下の懲役です。

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2.1)破産関係(原稿を預けていた相手が破産してしまった!)

今回の問題がややこしい理由のひとつは、原稿を預けた出版社が破産したとか倒産したとか債権処理がどうとか、その辺の事実関係や時系列がはっきりしていないことです。

破産は破産宣告によって効力を持ちます(破産法第1条)。破産すると、破産した会社のその時点での財産は破産財団となります。破産者に対する財産上の請求権は、破産債権として破産手続きに入ります。乱暴に言ってしまうと、破産した会社に残っている財産を差し押さえて、原稿料や印税や印刷代や家賃などを払ってもらえなかった人たちの間で公平に分けましょうということです。

破産した場合、出版社にあった原稿はどうなるでしょうか。破産法では、破産者に属さない財産を破産財団から取り戻せる取戻権(87条)を定めています。原稿の所有権も引渡請求権も作者にあり、原稿は出版社の財産ではないと思われますので、作者は破産管財人から原稿を取り戻せるでしょう。

しかし、原稿が第三者に譲渡されてしまっている場合は、取り戻す条件はかなり厳しくなります。(民法の占有権、即時取得との絡み。)

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3)作者と古書店の関係(買った物は自分の物?)

買い取りが古物営業法の遵守事項に基づいて有効に行われると、本来の所有者が誰かはともかく、古書店は原稿の占有権を取得します。このとき、売った人物が本来の所有者でなかったとしても、その取引が有効であれば、買い取った時点で古書店は原稿の所有権を取得し、原稿は古書店のものになります。元の持ち主である作者はなんと所有権を失ってしまいます。
これが即時取得(第192条)です。今回の事件のキモになる部分でしょう。

第192条 平穏且公然ニ動産ノ占有ヲ始メタル者カ善意ニシテ且過失ナキトキハ即時ニ其動産ノ上ニ行使スル権利ヲ取得ス

即時取得は、取引の安全を確保するための制度です。
詳細はこちらなどを参照してください
即時取得の要件について説明(SUZUMEの法律勉強会)
即時取得 - 知っトク!法律用語の小道

つまり、物を取引するときは、相手がその物の持ち主だと思って取引するのが普通で、後から別の人が「実はそれはわたしの物でした、返してください」と来られると困ってしまうわけです。正当な取引の上で、もう自分の物だと思って使ったり消費したり売ったりしているのに、知らなかったことを後から言われて返さなくてはいけないようでは、安心して物が買えません。かといって、あらゆる物の所有権を全て確認した上で取引を行うのは現実には困難です。そこで、取引の安全を確保する上で、占有者を所有権者と信じて目的物をゆずり受けたような場合は、取引相手に本当は所有権がなくても、受け取った者に所有権等の取得を認めるとされているのです。

即時取得が成立する条件は「平穏かつ公然に動産の占有を始めたる者が善意にしてかつ過失なきとき」です。無理矢理奪ったりこっそり盗んだのではなく、取引相手が本来の権利者だと信じた上で、適法に取引が行われた場合、ということです。
なお、占有は平穏、公然、善意、無過失になされているだろうと推定されることになっています(186条、188条)。

即時取得が成立しても、占有物が盗品または遺失物の場合は、被害者または遺失主は占有者にその物を返すように請求できます(第193、194条)。さすがに、盗まれて転売されて元の持ち主に権利なしではあんまりなので、このような回復の規定があります。ただし期間の制限がありますし、占有者に代価を弁償しなければならない場合があります。

ところが、横領や詐欺で取られた物についてはこの回復は適用されません。横領や詐欺の場合は、本来の持ち主が自分の意志で相手に預けた、渡したという積極的な関与があり、単に盗まれたり遺失した場合と違って、元の持ち主にも多少の責任はあるとみなされてしまいます。
即時取得では「持ち主の権利保護」と「取引の安全の確保」が対立します。盗品と遺失物の場合は前者が優先されますが、横領では後者が優先されてしまうのです。

従って、今回の事件で古書店に即時取得が認められる場合、原稿の所有権は古書店にあり、古書店は原稿を自分の物として自由に扱う(売ったりする)ことができます。

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4)作者は古書店に原稿返却を請求できるか?(どうすれば原稿は戻ってくるの?)

上記の通り、即時取得が成立していれば既に所有権は古書店にあります。客として市場から買い取る以外に、作者が原稿を取り戻す手はありません。

それでは古書店から直接原稿を返却させることはできないのでしょうか。法的には難しいと思います。あえて法的手段をとるなら、即時取得が成立しているかどうかを争うことになると思います。即時取得成立に必要な「平穏、公然、善意、無過失」という条件を崩す必要があります。ただし「平穏、公然、善意、無過失だと推定する」ことが法律で決まっているので、即時取得の無効を主張するためには、これらの条件が満たされていないことを作家側が立証しなければなりません。

無理矢理奪ったりこっそり盗んだのではないこと、適法に取引が行われていることは、おそらく今回は争う余地がないでしょう。となると、残るは「善意」(取引相手が本来の権利者ではないとは知らずに、取引相手が本来の権利者だと信じた上で取引した)かどうかです。

もし、古書店が「善意の占有者」であるという推定が裁判で覆った場合、起訴の時から「悪意の占有者」と見なされます。悪意の占有者は、占有物によってもたらされた収益を返還し、消費したり損なった物は代価を支払い、損害を賠償する義務を負います(第189〜191条)。即時取得の条件は満たされないので所有権は元の作者にあり、原稿は作者のものです。

ただし、これは原稿が古書店にある場合で、古書店からさらに第三者に売られてしまった場合は、同様のことをその第三者についても検討しなければなりません。そしてこの第三者(古書店で原稿を買ったお客さん)はおそらく善意の占有者と見なされるでしょうから、即時取得が成立します。原稿の所有権は買ったお客にあり、作家は所有権を失ってしまいます。つまり、原稿が店頭で売られ続けている状況は、どんどん作者への返却を難しくしていくのです。

作家が原稿を取り戻すために打てる手としては、
・とにかく原稿が第三者に渡らないようにする。問題が解決するまで原稿を古書店で保管してもらうようお願いするか、第三者に買われてしまう前に自分で買い取る。
・原稿の返却を求める訴訟をおこし、古書店が悪意の占有者であることを裁判の中で立証する。

という感じでしょうか。裁判に勝てば原稿は作家に返却されますが、負ければ原稿は古書店のもの。反訴される可能性もあります。
さくら出版の業務上横領そのものは原稿の返却それ自体にはあまり影響を与えないように見えますが、捜査の過程でどの原稿をいつどこにどれだけ売ったのかを明らかにすることになりますから、こちらも進める必要があります。そもそも今回一番悪いのは横領した奴なので法的責任を問うてしかるべきです。

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5)今回の事件で古書店は「善意の占有者」か。(不正品と知ってて買い取ったのか?)

まず買い取りの段階で不正品と判断できるかどうかですが、品物の真贋については鑑定する目利きもあるでしょうが、盗品や遺失物であると判断するのは実際には困難です。仮に不正かもしれないと思った場合でも、「買い取りの際は住所氏名等も記録するわけだし、嘘をついて盗品を持ち込んだとわかれば、即通報されて素性がバレて逮捕されるのだから、まさかそんな危険を冒して盗品を持ち込むことはないだろう。」と考えて、結局相手を信じて買い取ることはあり得ます。

生原稿が古物市場に出るはずはないのだから、生原稿があった時点で盗品等じゃないか、という気持ちは分かりますがこれは正しくないと思います。現状では「生原稿が古物市場に出ない」ことを推定できるようなシステムはないと思います。

今回の事件では、原稿がまんだらけに持ち込まれたときの状況は明らかになっていません。まんだらけに原稿を持ち込んだのが誰か、単独か複数か、一度に大量に持ち込まれたのか、分割されて何度も持ち込まれたのか。何人の作家の何頁分の原稿が持ち込まれたのかも公表されていません。原稿が持ち込まれたのはまんだらけだけではない可能性もあります。ただし、古物商は買い取り時にその人物の住所、氏名、職業及び年齢を確認して記録しています(古物営業法 第15〜16条)。まんだらけは在庫管理がされているので買い取り品の内容も把握しているはずです。まんだらけ社長は、警察の要望を受けて売った人物の情報はすでに警察に行っているとコメントしています。

さて、マンガジャパンというマンガ家の団体があります。マンガジャパンは、作者本人の知らない間に流出した原画がまんだらけで売られている問題に関して、まんだらけと話し合い、平成7年10月30日にまんだらけから合意事項の覚え書きを得ています。内容は以下の通りです。

------
マンガジャパン事務局長宛
       まんだらけ 編集(?)部より(平成7年10月30日 22:47)
 まんだらけで扱うマンガ家の原画、原稿の入手経路について色々噂されておりまし
て、噂だけなら放っておこうと考えていたところ”マンガジャパン”さんからお話が
ありまして、そのおおよその合意事項を書いておこうと思います。まずまんだらけに
入荷する品はすべて身元確認をします。法律上では、この身元確認が済めば買取
はOKとなりますが(近頃法律が改正されて1万円以下は確認しなくても良くなりま
した)、挙動不審者、明らかに盗難とわかる品に関しては、即警察に通告するシステ
ムになっています。
 これに加えて、これからは”マンガジャパン”さんの要望により”マンガジャパン”
に属する作家の原稿類が持ち込まれた場合は、”マンガジャパン”に連絡する事にな
りました。
 また、売りに来られたお客様には、品物の入手経路も説明して頂く事となります。
確認事項が増えますが、大切なマンガ家の原稿の不法流通を防ぐため、
ぜひご協力くださるようお願いいたします。
                           以上

------
マンガジャパンのホームページより転載)

この覚え書きでは、マンガジャパンに所属する作家の原稿が持ち込まれた場合はマンガジャパンに連絡することが合意されています。また、これは原稿の不法流通を防ぐための措置であることが確認されています。

ところが、この覚え書きは全く機能していませんでした。一度該当する原稿がまんだらけに持ち込まれた際に処理がうまくいかなかったことなどから、まんだらけ社長は「その団体とのお約束は立ち消えになってしまいました。」とコメントしています。マンガジャパンの事務局長は、その件は知らず、約束が消失したとは考えていないようです。

覚え書きでは「連絡する」ことが合意されており、その対応までは定められていません。一度対応に不満があったからと言って、それを理由に一方が勝手に契約は失効したものと決めることはできません。契約を解除するには相手に対してその意思表示をする必要があります(民法第540条)。契約が有効だとすると、マンガジャパンに所属する作家の原稿が持ち込まれたにもかかわらずマンガジャパンに連絡しなかった場合は契約不履行にあたるでしょう。(まんだらけ社長は、約束は立ち消えになったとして、その後マンガジャパンに連絡はとっていないとコメントしています。)

(※7/1現在、マンガジャパン会員で流出原稿がまんだらけに売られた方は確認されていません。)

マンガジャパンに連絡が入っていれば、持ち込まれた原稿が不正品か否かが判明した可能性があります。買い取り前に身元と品物を押さえられますし、盗品等だった場合も素早い対応が期待できます。不正品であれば古物商は警察に報告しなければいけません(古物営業法第13条の3)。ところが、この原稿の不法流通を防ぐための合意契約を、まんだらけは一方的な意思により不履行にしていました。

マンガジャパンはこの契約不履行によって、契約が履行されていれば不正流出を阻止できた原稿が、古物市場に出回って失われるという被害を受けるかもしれません。
まんだらけはこの契約不履行によって、契約が履行されていれば不正流出を阻止できた原稿を、売買して利益を得るかもしれません。

これをもって、まんだらけに対して契約不履行あるいは不法行為に基づく損害賠償請求を行うことはできるかもしれません。少なくとも7年以上の間、故意または過失によって約束を破り、防げたかもしれない不正流通によって利益を得ていたとすれば心証の悪化は免れません。
しかし、原稿が作家の元に戻るかどうかはまた別の問題です。

例えば原稿を持ち込んだ本人があらわれて、まんだらけが買い取りの際に原稿が不正品であるとわかっていたかどうかなどを証言すれば、重要な事実が出てくるかもしれません。

いずれにせよ、善意の推定を覆すのは容易なことではありません。

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6)まとめ……ちょっと待った!

横領された物が、それと知らない者の間で転売されると、物は買った人間の所有物となります。所有権は元の持ち主から失われてしまい、元の持ち主に返却させることは法律上できません。

さくら出版の責任者は雲隠れし、まんだらけは現在のところ情報提供に非常に消極的です。さくら出版破産の事実関係、および原稿買い取りの事実関係というふたつの大きなブラックボックスが立ちはだかっています。さくら出版の責任者を捕まえないとクリアにならない部分が多すぎます。警察の動きは非常に鈍いです。

作家は、不正流出した自分の原稿が他人の物として売られ続けるのをこのまま黙って見ているしかないのでしょうか?

ちょっと待ってください。たしかに民法の物権(占有、所有)で考えればそうかもしれません。
しかし、マンガの原稿は「物」であると同時に「著作物」です。
いま一度、著作権に登場してもらいましょう。

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7)著作物の譲渡権(所有権がなくても著作権はある)

(譲渡権)
第26条の2 著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。以下この条において同じ。)をその原作品又は複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。以下この条において同じ。)の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。

2 前項の規定は、著作物の原作品又は複製物で次の各号のいずれかに該当するものの譲渡による場合には、適用しない。
1.前項に規定する権利を有する者又はその許諾を得た者により公衆に譲渡された著作物の原作品又は複製物
2.第67条第1項若しくは第69条の規定による裁定又は万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律(昭和31年法律第86号)第5条第1項の規定による許可を受けて公衆に譲渡された著作物の複製物
3.前項に規定する権利を有する者又はその承諾を得た者により特定かつ少数の者に譲渡された著作物の原作品又は複製物
4.この法律の施行地外において、前項に規定する権利に相当する権利を害することなく、又は同項に規定する権利に相当する権利を有する者若しくはその承諾を得た者により譲渡された著作物の原作品又は複製物

(著作権法)

譲渡権は平成11年の著作権法改正で新設されました。著作権者は著作物やその複製物の流通をある程度コントロールできる、という権利です。
著作権者が許可していない著作物やその複製物を譲渡することは譲渡権の侵害です。(ただし第26条の2の2項にある消尽条件、および第113条の2にある特例を除く。)

上述したように、この事件では即時取得(民法 第192条)が大きな壁のひとつだと考えます。即時取得は取引の安全を守るための決まりです。そして譲渡権には、著作物についてはこの譲渡権を付与することで取引の安全確保に対抗し、両者の調和を保つ意図があります。
→栗田隆:著作権法注釈 第26条の2(譲渡権)

第26条の2の2項では、譲渡権の消尽条件が4つ定められていますが、著作権者はさくら出版や古書店に対して原稿の譲渡を許諾も承諾もしていませんから1と3はクリアです。2と4もこの場合関係ありません。
だとすれば、古書店にある原稿に対する作者の譲渡権はまだ生きていると考えられます。(というか、著作権自体が生きているわけか。)

ということは、作家(著作権者)の許可なしに原稿(著作物の原作品)を古書店が客に売る(譲渡する)ことは譲渡権を侵害していると考えられます。

著作者は、譲渡権を侵害する者または侵害するおそれがある者に対して、侵害の停止または予防を請求できます(第112条)。損害賠償請求もできます。
なお、著作権侵害の量刑は3年以下の懲役又は300万円以下の罰金です(第119条)。

これは作家の逆転勝利か……と思いきや、まだまだそう簡単にはいきません。『善意者に係る譲渡権の特例(第113条の2)』があるからです。

著作物の譲渡を受けた時において、当該著作物の譲渡権が消尽していないを知らず、かつ、知らないことにつき過失がない者が、当該著作物を公衆に譲渡する行為は、譲渡権を侵害する行為でないとみなされます。
つまり、譲渡した者が「譲渡権がまだ有効な著作物だとは知らなかったし、知ることもできなかった」場合は、譲渡権の侵害になりません。

なんだか物権の占有と似た展開になってきましたが、しかし。
上記サイトの記事などを読むと、以下の2点で著作権者側の権利がより強化されています。
・取得者の善意のみならず無過失が要求されるようになったこと。
・証明責任の転換(善意・無過失は、取得者が証明しなければならない)


細かいようですが、これが意外に大きいのです。物権のところでは、作家側が古書店側の「善意」の推定を崩せるかがひとつのポイントだと書きました。しかし、譲渡権侵害の訴では逆に、問題の原稿について「譲渡権がまだ有効な著作物だとは知らなかったし、知ることもできなかった」ことを『古書店側が』立証しなければいけません。
「無過失」の部分ではマンガジャパンとの覚え書きの存在も効いてきそうです(知ろうとすれば知るための手段はあった?)。

譲渡権侵害の訴で著作権者に有利な点は、盗品か横領物かといった区別に関係なく、著作権者が譲渡を許諾していない著作物であればよいことです。つまり、さくら出版事件と無関係でもいいのです。著作権者の譲渡許可がない著作物またはその複製物が、店のカウンターに並んで公衆に売られていた時点で譲渡権侵害が成立しそうです。(一度著作権者の許諾を得て売られたものは譲渡権が消尽しているのでこの限りではありません。)このような譲渡権侵害に該当する例としては、例えば海賊版などが挙げられますが、原著作物である生原稿についても同様だと考えられます。また、著作権の保護期間は著者の死後50年と長いのも特徴です。

一方、譲渡権侵害の訴で著作権者に不利な点は、店が著作物やその複製物を倉庫に保管して店頭に公開せず、公衆に譲渡しようとしなければ譲渡権侵害は成立しないことです。当たり前ですが、持っているだけでは譲渡権は侵害しません。
また、所有権はおそらく古書店にあるままです。遺失または廃棄されたら……それまでです。

ただ、これはちょっとトリッキーなのですが……。
譲渡権侵害の裁判で、仮に古書店側による自身の善意の証明が通らなかった場合は、物権の方の「善意の占有」および「即時取得」の条件の一角が崩れるかもしれません。もし悪意の占有者ということになれば、原稿の返却も損害賠償も通ります。古書店側にとっても「善意」の証明は重要なポイントになるということでしょう。

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8)最後に。(契約は大事。)

最後に、ひとつだけ冷静に心に留めておくべきことがあります。
法律や裁判に拠らずとも、作家と古書店が話し合って原稿の一時差し止めや返却の合意をとりつけるよう努力する、という道はいつでもあるということです。(不幸にして機能しませんでしたが、)マンガジャパンがまんだらけと覚え書きを交わしたときのように。
マンガ文化を支える権利や利益を守る方法は訴訟だけではありません。

今回の事件が起こった背景として、原稿の管理の杜撰さ、作家と出版社間の契約の杜撰さが指摘されています。これらの問題はできるだけ早く改善されるべきでしょう。

作家は、原稿の返却期限、原稿料の支払期限、定期的な状況報告義務、違反した場合の原稿引き上げや賠償などを具体的に盛り込んだ契約書を交わしていれば、今回のような事態になる前にもっと多くの危険信号を受け取ることができます。

出版社にとっても、契約は重要です。著作権はかなり強力でコワイ権利です。口約束だけで原稿を掲載して、もし後になってから複製権や譲渡権の侵害で訴えられたらどうしましょう? 合意と許諾があったことを出版社側が証明しなくちゃいけません、証拠になる契約書も無しに。

また、マンガ家の業界団体の役割も今後ますます重要になっていくと思われます。
平成10年の漫画原稿返却拒否事件では、原稿の返却を拒否する出版社に対して、マンガ家から相談を受けた日本漫画家協会が出版社との交渉に当たり、裁判の決着前に原稿は作者に返却されています。(裁判は作家が勝訴し、出版社に損害賠償が命じられました。)

さくら出版原稿流出事件でも、マンガジャパンとまんだらけの間に交わされた覚え書きがしっかり機能していたら、事態はずっと違っていたでしょう。そして、たとえ守られていなかったとしても、この覚え書きが存在した事実そのものが、この問題に対する意識や姿勢を映し出し、関係者の心証に影響を与えることは否定できません。正式な書式もないたった一枚の覚え書きが、幾千の憶測よりも強い意味と力を持ちうるのです。


今回の事件については、持ち込まれた原稿のリストの公開など、事実確認の部分でまんだらけが積極的に情報提供してくれることを願っています。自慢の在庫管理システムが、マンガ原稿不正流出事件の全容解明に役立つはずです。今まんだらけにしかできないことです。

事件はまだ収束していませんが、原稿が著作権者の手元に戻って適切に管理、活用されることを願っています。
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追記:マンガ原稿流出事件のその後(B館MANGA NEWSより)
今回の事件に関わる記事・コメントを時系列順に転載しました。(041017)
当時から時間が経過して、残念ながら多くの1次、2次情報が現在はリンク切れになっていますこと、どうぞご了承下さい。

030617
マンガ家に無断で出版社から大量の原稿がまんだらけに流出!?(日々是無事)
日々是無事、どころじゃないひどい話。被害にあったマンガ家は複数の模様。

この場合、盗品あるいは不正品かどうかの認定がネックになると思われます。古物営業法そのものは盗品等の売買防止や被害の迅速な回復を目的とした法律で、特に盗品の扱いには罰則を含めた規定がありますが、警察が必要と認めて動かない限りは実効力はないように読めます。(19〜21条など。)(今回のケースは15条の3に照らしてどうだろうか? 1000頁を越える生原稿が持ち込まれた際、買い取り時に業者は不正品の疑いを持つものだろうか。まんだらけの扱うグッズ系アイテムのことを考えると量だけでは不正の傍証にはならないだろうが。)
でもって、描き上げて出版社に送った生原稿の所有権がどう管理されているかという問題。出版社は普通出版権を持っているだけなので、出版後の原稿はあくまで作者に返却されるべきものというのがスジ。ここは当事者間の契約に負うところも大きい。契約違反や盗難が立証できないと警察は動かないとなると、出版社が機能停止状態で連絡がとれない状況では、それこそ泣き寝入りに終わりかねない。
改めてマンガ業界の原稿管理の杜撰さが露呈された事例だと思う。

ただし最近の判例では、漫画家の原稿を紛失した出版社に対して賠償命令が出ている。(東京地裁平14・8・26判決)
原稿紛失した出版社に賠償命令……(特ダネ生情報2002年8月号8/27)
原稿紛失で学研に賠償命令=漫画「天使のたまご」作者勝訴(アニオタニュース02年8/28)
(Yahoo!や毎日の元記事は軒並みリンク切れ……。)
民事の損害賠償請求がひとつの方法だと思う。単行本未収録による損害推定や古物市場からの自費回収コストを請求する線はアリだと思うけど、相手出版社に対応、支払い能力はあるのかな?

030620
さくら出版から大量の生原稿が流出した事件の経過と現状(井出智香恵のホームページ 6/19日記より)
被害はかなりの範囲に及ぶ模様。弘兼憲史氏も被害に。
事件の発端となった渡辺やよいのホームページ「日々是無事」に、過去にさくら出版から発行された初期作品シリーズの作品リストがアップされた。

030622
さくら出版からの原稿流出問題についてまんだらけ社長がコメント(まんだらけ 社長部屋 目安箱No.117書き込み)
連絡があったものについては販売を差止めているし返却の意志はあるとのこと。
漫画家の原稿が流出する最大の原因は漫画家の怠慢ではないかという意見を含め、重要な問題提起だと思う。

出版社は、著作権者が設定した出版権に基づいて、著作物(原稿)を複製し出版することができる。しかし、出版権者自身が他人に対してその著作物の複製を許諾することはできない。原稿を受け取った日から6ヶ月以内に出版することや、慣行に従い継続して出版することが「義務」として定められていて、これらの義務に違反した場合は出版権を消滅させることもできる。また、別途契約がなければ一度設定された出版権も最初の出版から3年で消滅する。
著作権法の規定は、複製権者すなわち作者が、自分の作品に対して強い権限を持っていることを示している。作者はその権利に見合った責任を果たしているだろうか。

今回の事件では、
1)作者は出版社に原稿を横領された(原稿遺失、あるいは市場からの自費買い取り分の損害。別途原稿料の未払いなど。)
2)まんだらけは問題のある商品を掴まされた(今後「作者に」返却すると思うけど、その場合買い取りコスト分の損害。)
3)出版社は倒産して、対応・賠償能力なし
ということで、作者もまんだらけも損害を被ったことになるだろう。で、このような事態に至った原因は、原稿の管理が杜撰だった事に尽きる。これは作者と出版社が一番に改善していかなければならない点だと思う。
事件はまだ収束していませんが、原稿が著作権者の手元に戻って適切に管理、活用されることを望みます。

030623
■さくら出版からの原稿流出問題の経緯と現状については以下のサイトを参照のこと。
渡辺やよいのホームページ「日々是無事」6/11〜
井出智香恵のホームページ 日記6/19〜
まんだらけ 社長部屋 目安箱No.116〜
作者と古物商と弁護士と警察が積極的に(かつ冷静に)問題解決に当たれば、変にこじれるような話ではないと思います。
(6/12、13にマンガ家が警察に何度も相談しているのに結果的に対応が遅れたのは痛い。)
損害賠償の実現は難しいかもしれませんが、できれば刑事で、そうでなくても民事で、出版社の関係者の法的責任を明らかにして今後の糧にできればと思います。

030625
「さくら出版」原稿流出事件・関連リンク集(最後通牒(期間限定))
予想以上に根が深い模様。出版社が倒産し関係者が姿をくらませている状況では、まんだらけの対応次第では真相と原稿がヤミに葬られてしまう恐れもある。
警察の動きが鈍いと思う……。出版権絡みの業界の慣習ってそんなに不可解なものかしら?

030627
流出漫画原稿、売らずに返して 弘兼憲史さん提訴へ(朝日)

030630
「緊急特集:さくら出版原稿流出事件を考える。」(B館)←このページです
ここ数日に書き込んださくら出版原稿流出事件関連の文章をまとめなおしてアップしました。(状況が流動的なので期間限定のつもりです。)それにともなって、記事の元となる文章2件(昨日とおとといの分)を削除しました。
内容はこんな感じです。
1)事件の経緯
2)作者と出版社の関係(原稿はだれのもの?)
2.1)破産関係(原稿を預けていた相手が破産してしまった!)
3)作者と古書店の関係(買った物は自分の物?)
4)作者は古書店に原稿返却を請求できるか?(どうすれば原稿は戻ってくるの?)
5)今回の事件で古書店は「善意の占有者」か。(不正品と知ってて買い取ったのか?)
6)まとめ……ちょっと待った!
7)著作物の譲渡権(著作権よ、もう一度)
8)最後に。(契約は大事。)

普段馴染みのない法律関係をわかりやすくまとめようという意図でしたが、力不足を痛感しています。誤り等ご指摘いただければ幸いです。

030703
『創』2003年8月号(7月7日発売)(創出版)
さくら出版マンガ原稿大量流出の顛末 渡辺やよい
さくら出版倒産とマンガ原稿流出事件 篠田博之(さくら出版前社長2名に直撃取材!)
など。

030704
生原稿流出に有名漫画家たちの怒り(TBS)
「犯罪の話になるので話せない」かよ……。>さくら出版元社長(弁護士コメント)
破産した出版社からマンガ原稿が大量流出(ANIMAXIS.com)

030706
この度のさくら出版の原稿流出の件について(マンガジャパン)
マンガ生原稿流出について(AMI-Web)

030707
『創』2003年8月号 マンガ原稿 大量流出事件の怪(創出版)
締め切り直前に滑り込んだ巻頭記事2つ。
「さくら出版マンガ原稿大量流出の顛末 渡辺やよい」はホームページの日記をまとめて日記風の記事にしたもので、そちらをフォローしている人には新しい情報はない。後から事件を知った人が読めば事態の概要がわかりやすいだろう。「さくら出版倒産とマンガ原稿流出事件 篠田博之」は4P記事。こちらはさくら出版が破産に至る過程、マンガ家らによる集団訴訟の内容、元社長への取材、マンガジャパンへの取材などを記事にしている。原稿料未払い分の支払いを求めた01年の訴訟では、被告のさくら出版社長は答弁書も提出せず、裁判にも全て欠席。被告に約1890万円の支払いを命じる原告勝訴の判決が01年3月に出ている。驚くべきことに、この訴訟に先立って調べたところ、既にさくら出版は売り上げ1億5千万円を他社に債権譲渡していて、原告が差し押さえるべき財産がない状態になっていたという。事件後の対応を裏付けるような悪質さである。警察の動きが鈍いと言われているが、立件できなかったら法務の仕事を疑ってしまう。

030713
「漫画原稿を守る会」が発足(川島れいこのホームページ、日記)
渡辺やよいのホームページ、日記
[代表]渡辺やよい・バロン吉元・大島やすいち
[窓口]渡辺やよい・川島れいこ
[支持者]弘兼憲史・桜井美音子・井出智香恵・水島新司・里中満智子・村野守美・ビッグ錠・一峰大二・三浦みつる・日野日出志・関口シュン・森園みるく・御茶漬海苔・北川玲子・さかもと未明・眠ノ木葵(7/12時点)
特集:弘兼憲史先生、原画流出に怒り 漫画と知的所有権(まんがたうん)

030718
漫画原稿を守る会(公式サイト)
マンガ原稿大量流出事件(続報)(ANIMAXIS.com)

030807
「創」2003年9月号(創出版)、購入。
さくら出版マンガ原稿大量流出事件のその後 渡辺やよい
さくら出版原稿流出事件のその後 篠田博之

030817
渡辺やよい氏のホームページ「日々是無事」の8/10、8/11に、さくら出版原稿流出事件についてマンガ業界と古書店の姿勢について書かれているが、原稿の管理問題について、現状のよくまとまった要約になっている。
根本的に何とかしようとするならマンガ家が交渉すべき相手は出版社だと思う。少なくとも「近代化」へと動くことが必要だ。個人的にこの問題については、まんだらけには当事者の責はあっても咎はないと思うし、その責も一方的に大きいとは思えない。さくら出版事件だけにこだわるならともかく、今後システムをどうにかしたいなら出版社や古書店と積極的に話し合ってルール作りをしていく必要がある。そして、出版社との交渉はもっと厳しいものになるだろう。

030831
「漫画原稿を守る会」ミーティングと会見のお知らせ(日々是無事8/31)
関係者向け……ということでいいのかな。
マンガ家でも報道関係者でもないただのマンガファンのためにも、事後レポート希望。
■創作系同人誌即売会コミティア65へ行く。
「漫画原稿を守る会」の『漫画の生原稿を捜しています!』チラシなど受け取る。

030905
「漫画原稿を守る会」が記者会見を開催(ANIMAXIS.com)

030908
「漫画原稿を守る会」が初会合、不正流出防止求め声明(朝日)
関連:「漫画原稿を考える会」記者会見速報(漫画原稿を守る会)

030909
人気漫画家の原稿流出で「守る会」結成(TBSニュース)
弘兼憲史氏やさくら出版の元社長が登場する3分半のニュース動画(TBS「ニュースの森」で放送されたビデオのよう)。
漫画家:生原画大量流出「守る会」が返却訴える(毎日)
漫画原稿の所有権確立へ 漫画家有志が守る会設立(Yahoo!ニュース)
原画・原稿流出・回収の現実問題(まんだらけ 社長日記)
2003/09/09付の投稿。
言わんとすることはわからなくもない。で、具体的にさくら出版の原稿の時はどんな状況でどのような対応をされたのでしょうか?

●さくら出版原稿流出事件に関して「漫画原稿を守る会」の初会合&記者会見が9/8にあって、そのニュースが各方面に出ています。しかし、今回の報道で初めて事件を知った方や最近になって関心を持たれた方が、事件の概要と現状の問題点(法的問題や業界の慣習)を把握するためのまとまった記事があまりないのが残念です。
漫画原稿を守る会公式サイトのメイン掲示板などでは何度目かの議論ループが忍耐強く行われていますが、整理された記事があれば多くの人が助かるはずです。

事件の発端から事態の推移を精力的に書き込んでいる渡辺やよい(5/31〜)川島れいこ(6/20〜)井出智香恵(6/19〜)各氏の6月以降の日記ログに加え、「さくら出版」原稿流出事件・関連リンク集などから記事を漁って状況を理解しろというのはかなり大変です。(しかし本当に把握したいならやる価値はあり。)

公式サイトだと書けないこともあるし労力的にも厳しいのでしょうが……。
(うちの特集記事にしても7月以降の状況をフォローできていなかったりして、自分のことを棚に上げてなんだと言われても仕方ありませんが。)
根の深い問題なので、各ニュース記事を見てもいまいち全体像が見通せない気がして、すっきりしません。

なんというか、出版社サイドはだんまりを決めてじっと嵐の過ぎ去るのを待つ感じ? もしマンガ家がまんだらけに刑事で勝ってしまったりすると(これは簡単ではないと見ますが)、マンガ家と出版者の関係はこのままずるずる行きそうで心配。
大量の日本製アニメが、ライセンスや著作権の意識がないままタダ同然で海外にたたき売られてずたずたに翻案された歴史を、どうかMANGAが繰り返しませんように。

030930
毎日新聞の9月30日(火)付け朝刊で、今回の「漫画原稿大量流出事件」に関する記事が、ほぼ半面を使った大きな特集として掲載されました。(漫画原稿を守る会)

031005
「漫画原稿を守る会」第2回ミーティング報告(漫画原稿を守る会)
10/4(土)に行われた懇談会の報告。素早い情報公開。
関連:漫画原稿を守る会2回目のミーティング(川島れいこのホームページ 10/4,10/5日記)
警察の認識の浅さには驚くばかりです。
「原画返して!」、訴え続々=被害防止へ自衛の動きも−弘兼さんら(Yahoo!ニュース)
民事訴訟で論理をどう展開しているのかが知りたい。ことが裁判なので情報が出にくいのはある程度仕方がないけれど。「心を込めて描いたのに」とか「自分の子どものように愛着がある」とかの感情論は記事に載るけれど、大事なことはてんでわからない。(こういうこと書くと現場で頑張っている方に鞭打つようで心苦しくはあるのですが。)

031010
「漫画原稿を守る会」メンバー、文化庁と2回目の会談(漫画原稿を守る会ニュース)

031021
大量の漫画原稿がもどる!(漫画原稿を守る会ニュース)
関連:渡辺やよいのホームページ 日記10/21
10/17、さくら出版元社長が都内に保管していた大量のマンガ原稿が、原稿引き渡しを求めていた(株)大島プロダクションに引き渡された。現在「漫画原稿を守る会」有志の手によって原稿の確認と目録の作成が行われている。なお、返却された原稿の中に復刻単行本用の原稿は含まれておらず、またさくら出版以外の原稿も多く含まれているという。原稿の量が膨大なため、確認作業には時間を要する模様。
これは朗報。原稿流出に関する事実関係の解明が進むことを期待したい。原稿返却に進展があれば、原稿管理問題へ取り組む体制も取りやすくなる。

031022
漫画:生原稿の一部戻る(毎日)

031023
さくら出版のマンガ原稿、返却される(新文化)
返却漫画原稿リスト(漫画原稿を守る会)
返却された原稿総数は21,327ページ、作者の数は196名にのぼるとのこと。

031024
「漫画原稿を守る会」に大量の漫画原稿が戻る(ANIMAXIS.com)

031206
新宿「ロフトプラスワン」で漫画原稿流出問題に関するトークライブ (漫画原稿を守る会)
12/26(金)18:00〜19:30。

031216
弘兼憲史の原稿もどる(漫画原稿を守る会)
漫画原稿を守る会」メールマガジン 第5号 2003/12/12発行(井出智香恵のホームページ 日記12/16)

031221
漫画原稿:古書店側が弘兼憲史さんに無償返還 和解成立(毎日)
「まんだらけ」が弘兼さんの生原稿を無償返還(zakzak)
<漫画原稿>古書店側が弘兼憲史さんに無償返還 和解成立(Yahoo!ニュース)

031230
(略)03年のトピックのひとつとして、さくら出版マンガ原稿流出事件に触れる必要があるでしょう。出版社が作家から原稿を預かったまま倒産し、作家への原稿料不払い、原稿の未返却のみならず、原稿の一部を古書店へ売っていたことが発覚し、業界に衝撃を与えました。当初、出版社元社長と古書店に感情的な批判が集中しましたが、事件の背景となった杜撰な原稿管理の実体も強く意識されるようになりました。執筆依頼から掲載、支払いまで口約束で行われることが当たり前の業界では、原稿の所有権すら曖昧です。今回の事件の被害者らが原稿返却を求めて作った「漫画原稿を守る会」は、預かり証の発行など、マンガ家の権利を明らかにするアイデアを出しています。しかし、この問題に関して出版社は完全に沈黙を守っており、マンガ家も立場の弱さを理由に反応は鈍いです。どちらの側も、長年享受してきたメリットを失うことを恐れて、厄介な契約問題・権利問題からできるだけ目を背けようとしているのでしょう。(略)

040301
「漫画原稿を守る会」第3回ミーティング報告(漫画原稿を守る会)
裁判の結果と経過、会の今後など。

040421
「−走る!漫画家 漫画原稿流出事件−」(渡辺やよい 著)創出版より5月上旬発売(渡辺やよい的過激倶楽部)
渡辺やよいの日記日々是無事の4/5〜に出版に関する漫画原稿を守る会との一連の騒動について記されている。

040426
渡辺やよい先生『走る!漫画家〜漫画原稿流出事件』発売記念トークショー(まんがの森)
>場所:本店BSホール
>日時:5月26日(水曜)18時30分〜20時30分
>出演:渡辺やよい氏、弘兼憲史氏、里中満智子氏、みなもと太郎氏)


040501
『走る!漫画家 漫画原稿流出事件』発売のお知らせ(漫画原稿を守る会)amazon

040509
■「走る!漫画家」(渡辺やよい)創出版[amazon]
件のさくら出版漫画原稿流出事件の当事者として文字通り走り回った1年弱の出来事を綴る。Webサイトの日記や雑誌「創」の記事などをこの一年追いかけてきた人間にとっては新味な内容ではないが、そこまでフォローしている人はどれだけいるだろうか。そういう意味でも一冊の本としてまとまったことに意義がある。文章は読みやすく迫力もある。

「漫画原稿を守る会」を閉会いたします(漫画原稿を守る会)
「漫画原稿を守る会」閉会のお知らせ
会としての裁判の終結、ある程度の原稿の返却、会の世話人であった渡辺やよい先生の本の出版を機に、「閉会」とさせていただきます。
(閉会宣言より)

さくら出版からの漫画原稿流出事件をきっかけに作られた「漫画原稿を守る会」が閉会することとなった。公式サイトには閉会のお知らせとともに、会の代表である弘兼憲史の閉会宣言、世話人の渡辺やよい、大島やすいち、川島れいこの退任が告知されている。

会の発足から閉会までの主な動きをまとめてみる。

・流出原稿返却及び情報提供の呼びかけ(関係者への呼びかけ、webサイトでの告知や同人誌即売会でのチラシ配布)
・マスコミ向け記者会見の開催
・賛同者およびカンパを募る(カンパは後に閉じられた。)
・公式サイトの開設および運営
・被害者3名を原告とした、出版社元社長に対する原稿引渡を求める民事訴訟(裁判費用の一部をカンパで充当。裁判中に原告2名の原稿が下記大島プロへの返却原稿の中に見つかったため、2名は告訴取り下げ。残る1名によって裁判は続き、原告完全勝訴となった。ただし被告は裁判を終始欠席しており、返却や賠償の意思・能力は不明。)
・弘兼憲史個人による、まんだらけに対する原稿の販売差し止め請求裁判(原稿の無償返還で和解成立。ただし、被害原稿の盗難届が警察に受理されているため、出版社元社長に対する捜査は続行中?)
・渡辺やよい個人による、まんだらけに対する損害賠償金請求の民事訴訟(継続中。)
・文化庁職員との懇談(2回)
・出版社元社長から大島プロに原稿が引き渡される。(しかし復刻単行本用など一部の行方不明原稿は含まれていなかった。)作家196名分、計21,327ページの整理と返却作業。(現在までに約7割を返却。100余名の作家と連絡が取れないなどの理由で約6,000ページが引き取り手がない状態。)
・本事件を綴った渡辺やよいの著作「走る!漫画家」が出版

約10ヶ月の出来事としては決して少なくない。なにより、前代未聞の大量原稿流出事件を社会に知らしめ、業界の体質改善を訴えたことには大きな意味があると思う。世話人の方々の奮闘ぶりにあらためて敬意を表したい。

「漫画原稿を守る会」は、会の目的として以下の3つを掲げてきた。
・不正流出した原稿を取りもどすために全力を尽くします。
・漫画原稿の所有者は誰であるのかを明確にしていきます。
・漫画原稿の管理について出版社と話し合っていきます。

このうち第2項と第3項については、結果的に厳しい現実を突きつけられた格好となっている。作家と出版社の間で所有権を含めた権利関係を取り決めた契約書を作る慣習がなく、口約束で仕事が動いていく業界の体質と、作家と出版社の双方がその利点を享受している現実が、このような事件の解決と再発防止を難しくしている。しかも、明確な契約の存在が現場の負担になることを恐れる意識は根強く、性急な改革に対する抵抗も大きい。(これはアニメでも同じ。先日の下請法改正でも問題になった部分である。)

しかし、結局のところ最も割を食うのは末端の作家たちである。この事件の後、せめて納品書や預かり証を発行していこうとする意識はどれほど高まったのだろうか。大手、中小を問わず各出版社はほぼ完全に沈黙したままだ。

デジタル制作、デジタル入稿が当たり前になる時代がもう来ている。生原稿の意味も根本的に変わっていく。権利と管理の問題をおろそかにしたまま、出版業界はどこまで行けるのだろう。物書きとその作品で商売するプロとして、半歩でも前に進む姿勢、変化の可能性を見せて欲しい。

最後に一言。
会の世話人や賛同者が各個人サイトの日記に会の内情を自由に書き込み応酬し合うという歪んだ状況が続く中で、情報が降りてこない公式サイトの管理人として、一般の人々に対してもバランス感覚と誠意を失わず対応し続けたすがやみつる氏に、この事件をネットで追いかけたひとりとして感謝申し上げます。

040511
「漫画原稿を守る会」顛末記(MSugaya's Weblog)
先日閉会した「漫画原稿を守る会」の公式ホームページ管理人を務めたすがやみつるが書く顛末記。会の組織、運営面での弱さがあらためて明らかに。本件に関心のある方には必読の連載です。

040520
「漫画原稿を守る会」顛末記(MSugaya's Weblog)
「漫画原稿を守る会」公式サイトの管理人を務めたすがやみつるの視点からまとめられた顛末記。連載が一区切りついたので再掲。

040602
[漫画原稿を守る会]未返却原稿・会計報告ページ

040623
『創』2004年7月号。
・日本マンガの現状と漫画原稿流出事件 弘兼憲史×里中満智子×みなもと太郎×渡辺やよい
漫画原稿流出事件の記事は5/26にまんがの森で行われた『走る!漫画家〜漫画原稿流出事件』発売記念トークショーの内容をまとめたもの。

040827
破産出版社からの流出原稿販売、まんだらけに賠償命令(読売)
破産出版社からの流出原稿販売でまんだらけに賠償命令(ANIMAXIS.com)
−まんだらけ裁判の続報です…判決が下りました−(渡辺やよい的過激倶楽部)
「被告は原稿の所有権の確認を怠っており、所有権を得たとは言えない」と述べ、同社に約18万円の支払いを命じた。(読売記事より)
古書店側の善意による即時取得の主張が退けられ、売買された原稿の所有権は作者にあると認定されたようです。損害賠償額については原稿の売買価格などから算定。将来の再録の可能性による遺失利益が認められなかったことは平成10年の東京地裁判決(漫画原稿返却拒否事件)を考慮しても妥当な判断と思います。

マンガ界に衝撃を与えた事件であると同時に、マンガ家渡辺やよい個人にとって大きな負担を伴う裁判でしたが、本判決の重要性は疑いようもありません。判決文をどこかで読めないのかな……。
貴重なマンガ原稿が適切に管理され有効に利用されることを願って止みません。

041017
−「まんだらけ」が控訴しました−(渡辺やよい的過激倶楽部【過激NEWS】)
●一審の判決を不服として、まんだらけが控訴してきました。また裁判になります。
正直、時間もお金もかかります。受けるしかないと思いますが、今後のことは、
弁護士とよく相談して決めようと思います。
(記事より)
040826の地裁判決を受けてまんだらけ側が控訴。さてさて。

050406
マンガ原稿流出事件の控訴審判決出る(渡辺やよい的過激倶楽部 過激NEWS)
漫画原稿を守る会跡地(星海銀の日記 4/5,4/6)
原稿の所有権が漫画家にあること、まんだらけの買取は善意取得にあたらないこと、という本件の争点は、すべてこちらの主張がそのまま認められました。(過激NEWSより)
大量の原稿を預かったまま破産状態となったさくら出版からマンガ原稿が流出し、まんだらけで販売されていた事件で、マンガ家の渡辺やよいがまんだらけを相手取って損害賠償を求めていた民事訴訟の控訴審判決が4/5に下った。04年8/26の東京地裁判決は、原稿の所有権は作者にあると認め、古書店側の善意による即時取得の主張を退けた。まんだらけに賠償金の支払いが命じられたが、まんだらけは不服として控訴していた。高裁判決は、1審判決を大筋で踏襲する内容だった模様。

050416
4月16日、判決が確定しました。(渡辺やよい的過激倶楽部 過激NEWS)
まんだらけは上告はせず、高裁の判決が確定しました。(記事より)
漫画原稿の所有権は作者にあると認めた貴重な判例になります。

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