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特集:マンガ喫茶と著作権を考える。(主に法的側面から。)
010610 updated


■はじめに
■記事の内容についての前置き
■参考にした資料など

■マンガ喫茶は著作権法に違反しない?
■貸与権の創設(レコードレンタル業の普及と著作権法改正)
■著作権法は頻繁に改正されている
■書籍・雑誌の貸与権は復活するか
■マンガ喫茶と新古書店

■図書館での利用と著作権 図書館のせいで本が売れない?
■図書館サービスと著作権法
■書籍はどこまで著作権を主張できるか


■はじめに

01年5月、「21世紀のコミック作家の著作権を考える会」による緊急アピール文が、大手出版社のマンガ雑誌各誌に見開き2ページで掲載された。

「21世紀のコミック作家の著作権を考える会」は、新古書店やマンガ喫茶の台頭が著しい現状への危機感から昨年4月に設立された。このアピール文では、「私たちは新古書店でのコミックスの売買に反対します。」という見出しで、作品の購入や利用の代金が作家らに全く還元されない現在のシステムが作家活動とマンガ文化への脅威となっている、と抗議の声をあげている。また、アピール文掲載に同意した同会会員リストとして、二百数十名のマンガ家の名が挙げられている。さらに、「同会の要請を受け、漫画作家の方々の考え方を理解した上で、このアピール文を掲載することにいたしました。(○○編集部)」と掲載各誌編集部の同意を明示しているのも特徴だ。

ところがこのアピール文をよく読むと、「反対します」と威勢がいいものの、具体性や展望は乏しい。「抗議の声を挙げる」以外のアクションはなく、「私たちの主張をお考えいただければ幸いです」と慎重である。

以前飲み会で、著作者・出版社がマンガ喫茶と新古書店を相手取って訴訟を起こしたら勝てるだろうか?というネタが出たことがある。僕は「勝てないだろう」という意見だったが、「新古書店には難しいかもしれないが、マンガ喫茶には勝てるのでは?」という意見もあった。

僕が「勝てない」と思った理由のひとつは、明らかに法に触れるのであればとうに訴訟を起こされているはずと思ったからだ。素人の僕ですら、この商売が出てきたときはこれはやばいんじゃないかと思ったくらいなのだから、コミックス売り上げの落ち込みにあえぎ、原因の一つとして「新古書店・マンガ喫茶の出店ラッシュによる新刊書店への影響」を挙げている出版業界がだんまりに近い態度なのは腑に落ちない。(不正返品への対応要請などの動きはあったものの。)

そこで、この問題と著作権法等の関係と現状について一度自分なりに整理したいと思った。

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■記事の内容についての前置き

この問題に対する僕自身の基本姿勢は、一言で言うと「マンガ喫茶も古書店も便利なので、新刊書店ともども今後も利用していきたい。」です。しかし著作者の権利を不当に侵害するのは本意ではないので、利用者の利益とのバランスに配慮しつつ適当な落としどころを探れないものかと考えています。

この記事を読む際は、著作権法財団法人著作権情報センター)のページを同時に開いて、実際に対応部分を参考にしつつ読むとわかりやすいのでお薦めします。

僕は法律の専門家ではないので、以下の文章を読む方には、内容を鵜呑みにせず関連資料文献を自分であたって調べることを強くお薦します。また、このページの内容について、誤り等のご指摘をお待ちしています。

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■参考にした資料など

この記事を書くにあたって参考にさせていただいた資料を以下に記します。
中でも、平成11年の著作権法一部改正までがフォローされ、個々の権利・条文の拾い読みに配慮して編集された「詳解 著作権法」作花文雄 著(ぎょうせい)には非常に助けられました。門外漢でも読みやすく、お薦めの一冊です。また、直接内容には触れなくともこの問題を考える上で参考になると思われる資料も挙げました。

「著作権法」
「詳解 著作権法」作花文雄 (ぎょうせい)
「著作物の利用形態と権利保護」半田正夫(一粒社)
「出版指標年報 2000年版」(全協・出版科学研究所)
「出版指標年報 1999年版」(全協・出版科学研究所)
「著作権と中古ソフト問題」藤田康幸 藤本英介 小倉秀夫(システムファイブ)
「出版社と書店はいかにして消えていくか―近代出版流通システムの終焉」小田光雄(ぱる出版)
「ブックオフと出版業界―ブックオフ・ビジネスの実像」小田光雄(ぱる出版)
財団法人著作権情報センター
「貸本漫画のページ」
コンピュータソフトウェア著作権協会
「図書館活動と著作権Q&A」日本図書館協会著作権問題委員会 編著(日本図書館協会)
日本図書館協会
「新文化」
特集「図書館でマンガを提供するには」(「みんなの図書館」1999年9月号)
『図書館にマンガを! 市民ネットワーク』

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■マンガ喫茶は著作権法に違反しない?

冒頭で触れた「21世紀のコミック作家の著作権を考える会」アピール文には、
「音楽CDやビデオの場合は、貸し借りする際などに、著作権法等の規定により、創作した人らの利益を擁護する措置がとられています。ところが、現在の著作権法では、コミックスにはこの措置が認められていないのです。」
とある。これは具体的にはどういうことだろうか。

著作権法では、ビデオの場合は頒布権(第26条)が、音楽CDのレンタルについては貸与権(第26条の3)が、それぞれ認められている。

(頒布権)
第二十六条 著作者は、その映画の著作物をその複製物により頒布する権利を専有する。
2 著作者は、映画の著作物において複製されているその著作物を当該映画の著作物の複製物により頒布する権利を専有する。

頒布権は映画の著作物について認められているものであるから、コミックスは含まれない。ちなみに「頒布」とは、有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸与することである。(第2条第1項第20号による定義参照)

(貸与権)
第二十六条の三 著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)をその複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提供する権利を専有する。

貸与権は昭和59年の著作権法一部改正の際に創設された新しい権利である。後述するが、その創設の契機となったのはレコードレンタル業の急速な広まりだった。貸与権は、レコードだけでなく、(頒布権で扱われる映画の著作物を除いて)全ての著作物に対して原則認められている。

ただし、これには例外がある。

(書籍等の貸与についての経過措置)
附則 第四条の二 新法第二十六条の三の規定は、書籍又は雑誌(主として楽譜により構成されているものを除く。)の貸与による場合には、当分の間、適用しない。

附則第4条の2にあるとおり、貸与権は「書籍又は雑誌」については「当分の間」適用されない。この経過措置が設定された理由としては、歴史的に見て貸本業が社会に定着しており、規制による貸本業界への影響に配慮したこと、貸本業の存在により本の売れ行きが落ちている状況にないこと、貸本に貸与権を適用するにしても、実際の権利行使を行うための集中処理体制が整っていないことなどがあった。

ちなみに、貸本というのは僕を含めて現在のマンガ読者にはあまりなじみがない言葉だと思うが、マンガ史を語る上で貸本・古本は欠かせないキーワードである。「貸本漫画のページ」などを参照されたい。

ところで、マンガ喫茶関連の訴訟事例といえば、店にPS2を置いて権利者の許諾無しに客にソフトを使わせていた経営者らが著作権法違反の疑いで逮捕された事件が記憶に新しい。→「まんが喫茶」でゲームソフト無断上映 経営者ら逮捕(コンピュータソフトウェア著作権協会 2001年1月31日 トピックス)
また、「DVDの店内上映、著作権法違反=北九州市のネットカフェー摘発」(時事通信社)というのもあるが、いずれもコミックを対象としたものではない。
これらはともに著作権法22条の2に定められた上映権の侵害である。

(上映権)
第二十二条の二 著作者は、その著作物を公に上映する権利を専有する。

「上映」とは、著作物を映写幕その他のものに映写すること(第2条第1項第17号による定義参照)で、パソコンディスプレイへの表示等も含まれる。しかし当然ながら本であるコミックスには適用されない。ただし、マンガをスキャナーで取り込みDVDなどに収録したものをディスプレイに表示して読ませた場合は、上映権が及ぶと思われる。

つまるところ現在、コミックスを含む書籍や雑誌については、マンガ喫茶での利用を著作権者側がコントロールできるための著作権法上該当する規定を見つけることが出来ない。上記「21世紀のコミック作家の著作権を考える会」アピール文の記述は、このような状況を踏まえたものだと思われる。
(貸与権をめぐる簡単な解説は、社団法人著作権情報センターのコピライトQ&Aの貸与権の項なども参照されたい。)

ここまでの僕の理解をまとめると、
「著作権法26条の3により、著作者は著作物とその複製物を貸与する権利を専有するが、同法附則4条の2の規定により、書籍および雑誌には貸与権が当分の間適用されない。このため有償・営利目的の貸本業は、現行法の範囲では著作者の許諾・契約を必要としない。」
ということになる。

ポイントは、現行法の規定が貸本業への配慮を意識している点である。マンガ喫茶が貸本業であるなら、この規定が適応されるのは道理だろう。

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■貸与権の創設(レコードレンタル業の普及と著作権法改正)

さて、それではマンガ喫茶ビジネスはこのままの形で未来永劫やっていけるのだろうか。この問題を考えるには、レンタルレコード業の急速な普及を受けて昭和59年に著作権法が一部改正され、新しく「貸与権」が創設された過程が参考になる。以下にその経緯をまとめた。

最初の貸レコード店の登場は昭和55年6月頃、東京の三鷹市でだったという。その後、貸レコード業は急速に拡がり、レンタルしたレコードから個人がテープにダビングするという利用スタイルによって、レコード業界の売り上げに影響するようになった。日本レコード協会が昭和56年に行った調査では、貸レコード利用によるレコード購入量の減少は約33%で、これは小売店売り上げの減少割合とほぼ符合するとされた。また、貸レコードをテープ録音している者は97.4%だった。

昭和56年にはレコード会社13社などが貸レコード店大手4社に対して、昭和57年には日本音楽著作権協会が貸レコード最大手の会社を相手取り、それぞれ訴えを起こす。
この際の理屈は、「顧客による複製を前提とする貸レコード業は著作権上の複製権を侵害する」というものだった。当時の著作権法には、貸与に関する規定は映画の著作物を対象とした頒布権しかなかった。そこで著作権者側は、レンタルした先で複製されることを前提とした貸し出しは、著作物の複製権を侵害している、というロジックで争うことになったのだ。

こうした訴訟と並んで、権利者サイドは貸レコード規制の立法化を働きかけていく。
昭和57年に自民党文教部会に著作権問題プロジェクトチームが設置され、同年に議員立法の形で国会に法案が提出された。文化庁も著作権法の一部改正を企画していたため、それまでの暫定措置法として昭和58年に「商業用レコードの公衆への貸与に関する著作物等の権利に関する暫定措置法」が成立した。

同年に著作権審議会が答申した報告書では、ビデオやレコードのレンタルといった公衆への貸与が現在著作物の有力な利用手段になりつつあって、著作者の経済的利益に影響を与えている現状に鑑み、著作権者に著作物の複製物の公衆への貸与について新たな権利を認める必要がある、とされている。

※ただし書籍その他の出版物は、長い年月に渡って貸与による利用が自由に行われてきた経緯、および貸本などが出版流通に影響を及ぼし著作者の利益を著しく損なうという利用の実態はないこと、貸本に権利が働くにしても実際の権利行使のための集中管理体制が整っていないこと、などから例外として貸与権は及ばないとされた。

そして昭和59年5月に、著作者の貸与権が新設された著作権法改正案が国会で成立した。同改正法では、最初の販売から一定期間(1〜12ヶ月)は貸与に実演家と制作者の許諾が必要であるとか、それ以降は許諾は要らないが利用料を払わなくてはいけないなど、音楽CDレンタルでお馴染みの規則も定められた(第九十五条の三、第九十七条の三)。

最初の貸レコード店登場から法改正まで4年足らずであった。

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■著作権法は頻繁に改正されている

法律は、社会状況の変化や技術の進歩に対応して、その立法および改正が行われる。著作権法も成立以来数多くの改正を経てきている。以下にその改正履歴と主な内容をまとめた。

昭和45年 著作権法成立
昭和53年(海賊版レコードの防止)
昭和59年(レコードレンタル業への対応)
昭和60年(プログラムの著作物への保護)
昭和61年(データベースの著作物の保護)
昭和63年(頒布の目的での海賊版所持を規制)
平成元年
平成3年
平成4年(デジタル方式の録音・録画への対応)
平成6年(万国著作権条約の実施に伴う改正)
平成8年
平成9年(インターネット時代への対応、「公衆送信権」の新設)
平成11年(コピーガード回避装置の規制、譲渡権の新設、上映権の対象拡大、録音物の再生演奏についての経過措置の廃止)

昭和60年以降は2年に1回を上回るペースで改正が行われているのがわかる。情報産業の発達やデジタル技術の進歩は急速であり、それに伴い著作権も素早い法的対応を迫られているのだ。

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■書籍・雑誌の貸与権は復活するか

こうした経緯を見ると、マンガ喫茶に対して著作権者の法的権利を及ぼすためには、現状では例外的に認められていない書籍・雑誌への著作者の貸与権を認めること、すなわち附則第4条の2の廃止を含めた法改正が必要になると考えられる。

最も新しい平成11年の著作権法改正では、「録音物の再生演奏についての経過措置」を記した附則第14条が廃止された。昭和45年の著作権法制定で、録音物の再生に著作権者の権利が及ぶことが定められたが、当時の社会状況からみて影響が大きいことから、附則第14条によって、放送や営利目的の利用以外の再生演奏は「当分の間」自由とされていた。その後約30年が経過し、音楽著作物の利用について関係者のコンセンサスが得られたということで、附則第14条は廃止となった。

それでは、書籍・雑誌には貸与権が「当分の間」適用されないと定めた、附則第4条の2「書籍等の貸与についての経過措置」については今後どうなるのだろうか。この例外規定が定められた際の根拠となった3点をあらためて考えてみよう。

まず、歴史的に貸本業が存在してきたこと。これは事実だが、当時の貸本業が現在に至るまで継続して存るとは言い難い。高度経済成長期以降、子どもはマンガを個人で購入できるようになり、貸本マンガ界も衰退していった。一方、マンガ喫茶はここ数年の間にあらわれた新しいスタイルの商売である。それまで床屋や飲食店に少数の新聞や雑誌が置かれていて客が自由に読めるというケースはあったが、当日発売の新刊を含めた数万冊のマンガや雑誌を店内に揃えて、時間料金制で客に利用させるという業務形態は、著作者への利益還元が全くないままの状態で、社会的に十分受け入れられていると言えるだろうか。

2点め、貸本業によって権利者の経済的利益が損なわれている状況にないこと。これは関係者にとって最も重要な点だろう。マンガ喫茶の登場によって新刊書店の営業が深刻な影響を受けているかどうか。ここ数年の景気と出版不況の中で因果関係の有無を立証することは簡単ではないだろうが、詳細な調査データによる検証が必要である。(新古書店問題が同時期に重なっていることも厄介だ。)

3点目、貸与権が適用されたとしても集中処理体制が整っておらず、行使は実際上困難であること。貸レコード問題では、日本レコードレンタル商業組合が存在し、権利者側各団体(日本音楽著作権協会、日本レコード協会、日本芸能実演化団体協議会)との間に貸与許諾についての協定・契約が結ばれることで貸与権管理に道を開いた。書籍の場合にもこうした管理システムがなくては、貸本業という形態が存続することは難しい。個別に権利者との許諾交渉を行うことは非現実的だからだ。仮に書籍・雑誌へ貸与権を適用する場合には、貸レコードにおける95条の3や97条の3のような、実際の行使に関わる規定が合わせて制定されるべきだし、その作業を担う業界団体が整備される必要がある。

しかし、現在のマンガ喫茶はこうした許諾業務を取り入れることを考慮していない。時間制で料金を取っているため、客が利用する作品のタイトルをいちいち把握しておらず、従って各作品の著作権に個別に対応することは難しい。仮に今後貸与権の整備が速いペースで進んでいくとすれば業務形態の急激な変化を迫られるのは必至であり、その過程で撤退したりインターネットカフェなどへ転身する店も多いのではないかと思われる。結果的にマンガ喫茶という存在自体が無くなる可能性も否定できない。

これら3点に加えて、レコードレンタル業とマンガ喫茶との相違点にも留意しておきたい。前者では、借りたレコードを自分でダビングすることにより、その後何度でもコピーされたレコードの内容を聴くことができるため、新品を別途に購入する必要は減少することが想像できる。それに対して後者では、基本的に店内での閲覧のみが想定されており、複製は生じない。利用者がそれ以外の場所で読もうと思えば、書店で現物を手に入れなくてはならない。この差をどう見るか。

マンガ喫茶の利用者が新刊書店の読者につながるというプラスの効果も期待されるので、貸レコード業ほどの脅威ではないという見方がある。逆に、マンガについても「一度視聴されてしまえば視聴者に満足を与え、同一人が繰り返し視聴することが少ないという特性を考慮」(「中古ゲームソフト著作権侵害行為差止請求事件」平成11年大阪地裁判決より)するなら、貸レコード業相当の影響があると見なせるかもしれない。さらに、マンガを蒐集物としてでなくソフトウェアと考えるならば、読みたくなればいつでもマンガ喫茶を利用することができる現状は、その度に著作者に還元されない利益が累積していくことになり問題が大きいと考えられるかも知れない。

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■マンガ喫茶と新古書店

マンガ喫茶とは異なり、古書店については現在に至るまで流通において一定の地位を占めており、社会的にも認められている。著作権者の権利を古書にまで拡大することはなかなか受け入れられないだろう。古本屋が関係する法律としては古物営業法があり、その施行規則第2条では「古物」の区分を定めているが、その中には「書籍」と明記されている。古書流通に著作権者の権利が及ぶことは、現状では社会的にも法的にも考え難い。そして、古書店と新古書店とを明確に区別できる基準もないのである。

著作権者としては、古本業と貸本業を区別した上で、現在は営利貸本業が自由に認められる社会状況になく、むしろ著作者の経済的利益を著しく損なっていると主張することで、マンガ喫茶だけを法規制の対象とする方が、状況は整理されるし著作物利用の環境整備も進みやすいのではないだろうか。

平成11年の著作権法改正では譲渡権が新設されたが、その際にfirst sale doctrineと呼ばれる考えが導入され、権利消尽の規定が定められている。

(譲渡権)
第二十六条の二 著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。以下この条において同じ。)をその原作品又は複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。以下この条において同じ。)の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。
2 前項の規定は、著作物の原作品又は複製物で次の各号のいずれかに該当するものの譲渡による場合には、適用しない。
  一 前項に規定する権利を有する者又はその許諾を得た者により公衆に譲渡された著作物の原作品又は複製物
  二 第六十七条第一項若しくは第六十九条の規定による裁定又は万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律(昭和三十一年法律第八十六号)第五条第一項の規定による許可を受けて公衆に譲渡された著作物の複製物
  三 前項に規定する権利を有する者又はその承諾を得た者により特定かつ少数の者に譲渡された著作物の原作品又は複製物
  四 この法律の施行地外において、前項に規定する権利に相当する権利を害することなく、又は同項に規定する権利に相当する権利を有する者若しくはその承諾を得た者により譲渡された著作物の原作品又は複製物

すなわち、一度権利者によって公衆に譲渡された著作物については、その先は著作者の譲渡権は及ばない。(映画の著作物の場合は別に頒布権で規定されており、こちらは譲渡後も権利消尽しないとされる。ここは中古ゲームソフト問題を考える際のポイントのひとつである。)

貸与権に関して貸レコード問題が参考になったように、古書の扱いについては、ここ数年訴訟を含めて議論がたたかわされている中古ゲームソフト問題が参考になる。頒布権や消尽理論など法的な部分や、中古市場が存在することの新作ソフト業界への影響など、新古書店問題にも通じるポイントが議論されている。どうひっくり返しても書籍は映画の著作物とは言い難いものの、双方にとって望ましい関係を模索していく上での重要なケーススタディだろう。

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■図書館での利用と著作権 図書館のせいで本が売れない?

ここまでに書いてきたとおり、映画ソフトに認められる頒布権も、音楽ソフトなどに認められる貸与権も、書籍には今のところ適用されない。これは書籍や雑誌が古本や貸本として自由に流通・利用されてきた歴史と社会状況をふまえての措置だが、このところの出版不況もあって、現状を問題視している著作者、出版業界からは法改正を含めた著作権見直しの道を探る声も挙がってきている。

昨年、出版業界唯一の専門誌を謳う「新文化」00年4/20号に、
「増加一途の図書館貸出冊数−書籍販売の伸びをおびやかす一要因」と題する記事が掲載された。「図書館貸出冊数」を「マンガ喫茶や新古書店」に置き換えると、どこかで見たような表題である。

中見出しで図書館を「今や市民迎合の公立無料貸本屋」と評しているこの記事の内容に対して、日本図書館協会は5/11付の同誌で「図書館の貸出増加は書籍販売を脅かすのか」という反論記事を掲載した。経緯と反論記事の概略が日本図書館協会JLAニュースで読める。

「公立図書館である以上、市民の要求に応えることは当然であり、それを「迎合」というのはいかがなものか。」という反論はなるほどごもっとも。図書館側にしても、自治体の財政悪化による資料費削減に頭を悩ませている実状があり、元記事の主張に対して看過できないものがあったらしい。

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■図書館サービスと著作権法

著作権法には、著作物を扱う図書館サービスに関連する条文がある。31条(図書館等における複製)と、38条(営利を目的としない上演等)がその主なものである。このうち38条の4を以下に全文引用する。

4 公表された著作物(映画の著作物を除く。)は、営利を目的とせず、かつ、その複製物の貸与を受ける者から料金を受けない場合には、その複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提供することができる。

このように、非営利である公共図書館での著作物の複製物の貸与、すなわち図書資料の貸し出しは38条の4で認められてる。ちなみに図書館資料のコピーは31条で条件付きで認められている。閲覧については条文では触れられていないが、利用者への貸与や複製を認めているのだから閲覧も問題ないとされる。従って、仮に今後法改正によって書籍に貸与権が認められた場合でも、図書館の関連サービスはこれまで通り行うことが出来る。

ところで、営利目的のマンガ喫茶にはこれらは当てはまらない。「マンガ喫茶はあくまで喫茶店であって本は置いてあるだけ。」という意見がいまだにあるのかどうかしらないが、これは通らないだろう。著作物の営利目的の貸与と解釈するのが妥当だと考える。

図書館は、いわゆる活字本と同様にマンガを蔵書とすることができる。現在、出版流通に占めるマンガの比率は、販売額で2割を超え、部数では3割を超えている。一方で、公共図書館におけるマンガ蔵書は一般に貧しく、内容も偏っているのが現状である。(「とりあえず手塚」とか……。)原因のひとつには、マンガを選ぶ際の目安となる資料や見識が不足していることもあるようだ。図書館でのマンガ利用を促進するには、図書館員と利用者の意識改革とともに、マンガ書評や販売統計が質量ともにいっそう充実することが必要だろう。

さて、最近では図書館でも映画などの視聴覚ソフトを見ることができるが、映画の著作物(とその複製物)は38条の4の規定からは除外されている。一般の著作物に貸与権があるのに対して、映画の著作物には頒布権という権利があるからだ。映画の著作物を扱う(複製物の貸与により頒布する)場合は、38条の5に別に規定されているとおり、非営利であっても権利者に相当な額の補償金を支払わなければならない。つまり、貸与権に比べて、頒布権はより影響力の強い権利だと理解できる。

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■書籍はどこまで著作権を主張できるか

そんなこともふまえて「新文化」のWebサイトへ行くと、最近の見出しの中に以下のようなものが見つかる。
『複写権・貸与権・頒布権など「出版者の権利」法制化を/デジタル技術革新による複写・複製などの新しい状況への対応も』(5/31号本誌 1面特集)
『いま、改めて「著作権侵害」を問う/書籍にも頒布権を』(5/10号本誌 1面特集)

書籍に著作権上のより強力な権利を、と求める声を、IT時代における著作物利用の新しい流れの一環と見るか、出版不況からくる過剰反応と見るか、はたまた頭打ちの市場にあって更なる利益追求を図るための苦肉の策と見るか。

昨今の再販制度見直し問題で、出版業界は公正取引委員会から度重なる規制緩和への圧力を受けている。01年3/23に公取委は、再販制は当面維持するとの結論を打ち出した。しかし同時に「公正かつ自由な競争を促進することが求められている今日、競争政策の観点からは同制度を廃止し、著作物の流通において競争が促進されるべきであると考える。」としている。→著作物再販制度の取り扱いについて(公取委プレスリリース)

このような状況下で権利要求だけが一人歩きすることは社会的にも抵抗が大きいと思われる。法改正は、流通構造の大胆な見直しをはじめとした改革を見据えたものであって欲しい。その一環として、「読む=買って所有する」という固定観念にとらわれない、マンガ喫茶などの著作物の新しい利用形態を取り込んでいってもらえればありがたいと思う。

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長文おつき合い下さいまして感謝いたします。
「B館」--極私的マンガウォッチング-- は、マンガとアニメをネタにした基本的にお気楽な個人Webサイトです、ええ。