近視の進行抑制の点眼をどう考えるか 2023.3
「近視の進行を遅らせる目薬が出たそうですがどうですか」と聞かれることがあります。
日本では承認されていませんので、輸入して処方している施設もあります。
どのような点眼か
アトロピンの点眼です。アトロピンは瞳を開いたり、目の調節という働きを抑制する働きが
あり、主に検査に使われています。
低濃度のアトロピンの点眼が近視を抑制する可能性があるとされ注目を浴びています。
詳しい作用機序はわかっていませんが、眼軸が伸びるのを抑制することが期待されています。
海外では図のような製品(アトロピン0.01% アトロピン0.025%)が販売されています。
日本では認可されていないので、輸入して使うことになります。
認可されていない点眼を使うので、視力などの検査は健康保険を使えず自費での診察になりま
す。検査料、点眼液の代金を含めて年間4~5万円かかります。
最近の研究の結果
いままでシンガポールからの報告が多かったですが、2021年に日本の7大学の共同研究の調査
結果がでました。
対象 6歳から12歳の近視(-1.00D~-6.00D)の児童171名を、アトロピン0.01%を点眼をす
る群としない群に分けた。
調査期間 2年間
結果 点眼していなかった群では-1.48D近視が進んだ。点眼していた群では-1.26D近視が
進行し、眼軸の伸びも抑えられた。
結論 アトロピンの点眼は近視の進行抑制効果があった。
どう考えたらいいか
肯定的意見 副作用が無く、効果がある。
疑問の意見 この程度の効果しかないし、点眼を中止してからリバウンドすることも考えられる。
私の考え
近視の進行を少し抑制するが期待したほどではない。有効性の根拠となっているシンガポール国立眼
センターの報告(点眼しないと-1.20D、点眼すると-0.49D)より効果が少なかったです。
例えば、初め-2.00Dの近視の児童が点眼を続けると2年後には-3.26D、点眼しないと2年後には
-3.48D。 メガネを比べても差がわからないほどの違いです。
少しでも効果があるなら点眼をしてみたいと考えている方は、処方します。
戻る