近視の進行は予防できるか 2013.7
最近、日本の眼科の雑誌でも近視の進行を予防する治療についての論文が見られるよう
になりました。中国では遠近両用のメガネで近視の進行を予防している、韓国では進行
予防のためにオルソケラト(寝ている間に使うコンタクト)をしているとの新聞記事も
ありました。目薬が近視の進行を抑えるという報告もあります。
はたして近視の進行を予防できるようになってきたのでしょうか
近視の研究でわかってきたこと
① 近視は治せない
目の長さ(眼軸)が測定できるようになってきたために、近視のほとんどは眼軸が長
くなってくる「軸性近視」であることがわかりました。
→ 一度伸びたものは元に戻ることはないので近視を治すことはできません。
実験 ヒヨコの片目に凹レンズをかけさせる
→ 眼底の後ろにピントがあう(上左図)→
凹レンズをかけている目の眼軸が長くなる
→ ヒトではピント合わせの働き(調節力)があるので
これだけでは説明できない
→ そこで考えられた説明は
→ 近くを見るときに調節力がついていけず(調節ラグ)
眼底の後ろに像を結ぶ → 眼軸が伸びる(近視が進行)
③近視進行を予防するには眼底に常にしっかりした像を結ばせることが必要
遠近両用メガネを使って眼底にしっかりした像を常に結ぶようにする
→ 近視の進行を遅らせることができる
岡山大学の研究では、「多少は進行を抑制したが、効果が小さすぎて臨床で使
う意味はない」と報告しています。解りやすくいうと、メガネの厚さに影響す
るほどの効果はないということです。この目的のために、コンタクト・歪みを
少なくした眼鏡・オルソケラトなどが試されていますが今のところ効果は不明です。
④アトロピンの点眼が効くかもしれない
アトロピンは調節麻痺作用や散瞳効果があります。主に斜視や弱視の検査に使います。
「アトロピンを100倍に薄めた点眼を使うと、副作用はなく眼軸の進展を押さえて近視の
進行を予防する。 点眼していない子供に比べて近視の進行は1/3程度に抑えられた。」
という報告もあります。どこに作用するかはわかっていません。
積極的に使っている施設もありますが、もう少し様子をみて多くの報告が出てから検
討していきたいと思います。
未来は?
近視の進行を予防する薬や眼鏡やコンタクトが開発されるかもしれませんが、
現状では、これといった決め手はありません。
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