弱視・斜視の訓練を考える       2012.7 

斜視や弱視の訓練を勧められたという子供がいます。
週に何回か通院して訓練するとか、自宅で寄り目の訓練をするとか………
はたして、そのような訓練は有効でしょうか、必要な訓練は何でしょうか。

私が考える有効な訓練は三つです

@  メガネ
    ぴったり合ったメガネをかけて、しっかりとピントを合わせることが、治療の第一
    歩です。また一番大切な訓練です。
A  健眼遮閉(けんがんしゃへい)
   視力の発達に左右差があるときに、視力の悪いほうの眼を使わせる訓練をします。
   アイパッチといって視力のいい方の眼にシールをはります。点眼薬を使って視力の
   いい方の目を見えにくくする方法もあります。
B  近くの物を沢山見ること
   視力の発達のためには、沢山物を見ることが重要です。
   ゲームでも絵本でもテレビでもなんでもいいので見ることが大切です。

やってはいけない訓練は
   輻輳訓練(寄り目の訓練)
    ときどき眼が外を向く間歇性外斜視で勧められている訓練です。
    輻輳とは「寄り目」をすることです。つまり寄り目をする力をつけることで眼が
   外にずれるのを防ごうということです。いろいろな道具(例えば図のように紐
   に目印をつけてそこを見ます)が工夫されていますが、目的は同じです。



 なぜやってはいけないのでしょう
   本来、眼を寄せるのは近くを見るときの動きです。近くを見るときには調節といって
  近くにピントが合うような力も働きます。つまり、外斜している眼を輻輳の動きで正
  面にもってくると、調節がおきて遠くが見えにくくなります。外にずれている眼を真
  っ直ぐにしながら遠くを見えるようにするのは、本来の眼の働きと違います。眼の神
  経のバランスがくずれます。また精神的にも良くないです。
 こんな例を経験しました
  18歳で受診しました。幼少時より間歇性外斜視があり寄り目の訓練をしてきたそうで
  す。私が診察した時には、眼は外に行ったり、内に来たり、つまりキョロ
キョロして
  眼の動きが自分でコントロールできなくなっていました。
  輻輳訓練をまじめに続けたために精神的にも不安定になっていました。

やっても無駄な訓練は
  抑制をとる訓練とか、両眼視を得るための訓練とかは効果がありません。
    害はありませんが、子供たちに苦痛を与えるだけです。

正常な視力と眼位は、度のあったメガネ、健眼遮閉、適当な時期の手術で得られます
両眼視は、正常な視力と眼位の結果得られるもので、訓練で発達することはありません

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