左ヒラメ右カレイ
左ヒラメ、右カレイという言葉を聞いたことがあると思います。二つの目が体の左側に
あるのがヒラメ、右側にあるのがカレイということです。はたしてこの言葉は正しいの
でしょうか。私は以前、水族館で左側に目のあるカレイを見たことがあります。
辞典で調べてみました
ヒラメ(写真1番目)
カレイ目ヒラメ科の魚。両目とも頭部の左半分に偏ってついているのが特徴である。カレイ
に比べて口が大きく、歯も一つ一つが大きい。成長するにつれて魚類を捕食するようになる
カレイと異なり、体全体を使った比較的俊敏な動きが可能である。ヒラメの寿命は短く数年
程度である。ヒラメの中にも1%程度右に目があるものもある。
カレイ(写真3番目)
カレイ目カレイ科の魚。両目は原則として頭部の右側に集まっている。ただ、ヌマガレイは
アメリカ西海岸では右側、左側にあるのが半分ずつ、日本と米国の中間のアラスカ沖では、
70%が左側、日本近海では100%が左側。ヒラメと違って海底の無脊椎動物(ゴカイ・
イソメ)を食べている。そのためヒラメに比べて下顎の発達が悪い。概して長寿で寿命は
10年以上。一般には、カレイ、ヒラメ類のうちで目が右側にあるものをカレイと言ってい
ることがある。
眼の位置だけではわからない
ヒラメはほとんど左側に両目があるが、カレイは左側に目があるものも多くいるようです。
カレイとヒラメは先祖が同じで、進化の過程で右側に目のあるものと、左側に目のあるもの
に別れてきたと考えられています。そのため進化の程度の低い種類では反対側に目が移動す
ることがあるのではと考えられています。
決め手はアゴ
ヒラメは小魚を食べているのでどう猛な顔をして口が裂けて、歯も大きく尖っています。
(2番目写真)カレイは虫を食べているので口は小さく歯も小さいです。(4番目写真)
真カレイは特に口が細く山形県庄内ではクチボソカレイといっています。
目がどちらかに移動するメカニズム
ヒラメもカレイも稚魚のうちは他の魚と同じように両側に目があります。その後、成長に伴
って20日から40日して片側に目が移動してきます。その理由はいろいろと考えられてき
ました。最近になって、その仕組が解明されてきました。
東北大学農学部の鈴木徹教授が目の偏位を決める位置決定遺伝子「pitx2」を突き止めまし
た。魚では右目の視神経は左脳、左目の視神経は右脳につながっています。「pitx2」の働
きで左右の視神経が交差している部分に歪みが生じます。そこから脳全体のゆがみが進み、
引っ張られるように目の位置がずれてきます。この遺伝子は人の心臓が左側に位置するとき
にも働きます。「pitx2」が働くと右側に両目があるカレイ、働かないと目が右側にあるカ
レイ、左側にあるカレイ、目のずれていないカレイが生まれてきます。(左図)
右図はカレイの右側に両目があるとき、右はカレイの左側に両目があるときの目と脳と視神
経の関係です。左側に両目があると視神経のねじれが強くなっているのがわかります。ねじ
れが少ないほうが具合いいのでカレイは右側に両目が移動するのが普通だと考えられます。
しかし、結局はなぜ片方に目が集まるかはわかっていません。生きていく上で有利だとは思えな
いですしね。
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