児童・生徒の視力低下
毎年、新聞で、視力の悪い児童・生徒が増えてきているという記事が載ります。診察
しているとそのような印象は受けないのですが、実際はどうなのでしょうか。
厚生省の統計で調べてみました。
裸眼視力1.0以下の割合
過去30年の学童・児童についての厚生省の資料をグラフにしてみました。学校の検査で、
視力が1.0見えなかった割合です。視力の悪い原因として、近視・乱視・遠視・弱視・目の
病気などがありますが、検査は裸眼視力といって矯正しない視力ですので、原因について
はわかりません。ただ、経過を見ることで大体の傾向がわかります。
グラフから分かること
@ 30年前より15年前までは視力が1.0以下の割合が、小学校・中学校・高校とも微増し
ている。
A その後は、小学校で25〜30%、中学校で50%、高校で60%が視力不良である。
B 最近3年間では、小学校・中学校で微増が認められるが、高校では微減している。
どう考えたらいいでしょう
30年前から15年前までは、視力不良の児童・生徒は10%ほど増えている。
→ 多少とも環境による影響を受けたと思われます
15年前と現在では大差ない
→ 最近15年間は環境に大きな変化がなかった、または
視力の悪くなる割合は、日本人ではこの程度が上限かもしれない
15年前より高校生の60%が視力不良で、この割合に変化はない。
→ 日本人では、成人するころには60%程度の人が視力が悪い
40%の人は、環境に関係なく視力が良い
私の考え
視力は、多少は環境の影響を受けているようです。日本人は、最近15年間のような生活
をしていると60%ほどの人が視力が1.0以下になる。小中学校のうちは、環境に気を付け
ると多少は視力にいいかもしれない。
ただし、視力の悪くなる年齢を多少遅らせるだけで、結局は悪くなる人は悪くなる。 → 無駄な努力はしないで好きに見て暮らしたほうが得ではないでしょうか。
環境の影響
おもしろいデーターがあります。旧制中学、高
校の近視の割合です。戦前は40%が近視でした。
戦争が始まると近視は少なくなり、戦後にまた近
視が増えています。戦争中は、勉強をしなかった
ためでしょうか。いずれにしろ、このくらい大き
な環境の変化は視力に影響するようです。テレビ
を見たとか、ゲームをしたとか、照明が明るい暗
いなどは、視力への影響は少ないと思います。
視力が悪くならないようにするには戦時中のよう
な生活をするしかないです。30年以上前の生活に
戻ると10%の人には有効かもしれません。
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