糖尿病網膜症(眼科医の憂鬱)
糖尿病のコントロールが悪いと、眼底出血がおきて失明する可能性があることは皆さん
知っていると思います。失明を防ぐには糖尿病のコントロールが一番大切です。硝子体
手術などの進歩で、治療法は進んでいますが、決して正常な視力に戻せるわけではあり
ません。眼科では少しでも悪くなるのを遅くしようとする治療が主体となります。
外来で次のような患者さんを診察すると暗い気持ちになってきます。
@見えにくくなるまで受診しない患者さん
40歳男性。10年前より糖尿病で治療中でした。2週間前に急に見えなくなり受診しまし
た。視力は右0.08左0.09でした。糖尿病のコントロールも不良でした。
上の写真は、初診時の眼底です。糖尿病による眼底出血が見られます。すぐにレーザー
による治療を開始しました。見えなくなるのは、眼底の異常がかなり進んでからです。
自分でおかしいと気づく時はかなり進行してからです。
糖尿病といわれたら、まず眼科を受診してください。
A 失明寸前に受診した患者さん
70歳男性。20年前より糖尿病で治療を受けていました。最近見えなくなったので、白内
障の手術を希望して受診しました。視力右0.4左0.5両目に白内障もありましたが、左目
は、緑内障になっていました。血管新生緑内障といって、糖尿病が原因で起きる緑内障
です。すぐに、レーザー治療、白内障、緑内障の手術をしました。緑内障のために視野
が狭くなっていて失明寸前の状態が続いています。上右図は初診時の視野です。中心の
白い部分しか見えません。見えないのは、白内障のためで、白内障は見えなくなってか
ら手術すると思い込んでいて今まで、眼科を受診したことはありませんでした。
見えにくいなら、自己診断しないで眼科を受診してください。
B 糖尿病のコントロールはしたくないが、見えなくなるのはいやだと言う患者さん
65歳女性。以前から糖尿病といわれ、時々糖尿病の治療を受けていました。検診で眼
底出血を指摘されて受診しました。視力は両目とも1.2 まだ初期なので、「糖尿病の
治療をしっかりうければ、眼底出血は進行しない可能性があります。内科を紹介しま
しょうか。」と説明すると「糖尿病は自分で気をつけているから大丈夫です。目のほ
うはレーザーで治療してもらえばいいといわれました。」と糖尿病の治療を真剣に受
けるつもりがありません。
今、見えてるからといって油断していると取り返しのつかないことになります。
C 治療しても良くならないので診察を受けたくないという患者さん
60歳男性。糖尿病のコントロールが悪くて、腎不全になり透析を受けている患者さん
眼底出血がひどくなり、レーザー治療を開始しました。治療しても視力が良くならな
いのでもう受診しないと言ってきました。病気について時間をかけて説明し、ちゃん
と治療しないと失明しますよといっても受診してくれません。
眼科の治療の主な目的は、悪化しないようにすることです。
知っていて欲しいこと
@ 糖尿病による失明を防ぐ為に一番大切なことは糖尿病のコントロールです。
A
眼科での診療の目的は、異常を早めに発見し失明を食い止めることです。
糖尿病といわれたら眼科を受診し、定期検査を受けてください。
B レーザー治療、硝子体手術など眼科での治療は進歩しましたが、失明を防ぐことができるだけ
で正常の視力に戻れるわけではありません。
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