糖尿病網膜症の光凝固治療
糖尿病網膜症で光凝固を受けるようにいわれました、どのような治療ですか。以前治
療したのですが、また追加が必要だといわれました。治療してもよく見えません。
治療後に暗く感じるのですが。お金だけかかってよくなりません。血糖値はいいと言
われるのに悪化しています。
糖尿病網膜症とは
血糖が高い状態が続くと、網膜(眼底)の細い血管が損傷をうけて、詰まったり変形して
きます。血管がつまると網膜の隅々まで酸素が行き渡らなくなり、新しく血管(新生血管)
を作って酸素を補おうとします。ところが新生血管は急ごしらえの血管ですので漏れやす
く出血しやすいです。新生血管から出血がおきます。出血から膜ができて、膜に引っ張ら
れて網膜剥離になってきます。上左写真は、糖尿病網膜症の眼底です。出血や新生血管が
あります。
網膜光凝固の目的は
@レーザー光線で網膜の細胞に熱を加えて殺します。網膜の細胞が少なくなると必
要な酸素の量が減ります。必要な酸素量が減ると新生血管の発生を予防したり、
すでに出現してしまった新生血管を減らすことが期待できます。
A 網膜の細胞(網膜色素上皮細胞)を傷害すると新しい細胞ができてきます。新し
い上皮細胞から血管新生を抑制する因子の産生が期待できます。
将来の失明を防ぐ有効な手段ですが、決してもとに戻す治療ではありません。正常な
網膜の一部を犠牲にしますが、全ての網膜がだめになるのを防ぎます。言葉は悪いの
ですが、間引きだと思ってください。上中央の図はレーザー光線を眼底に照射してい
るところです。
網膜光凝固の実際の方法は
治療は外来で行います。点眼麻酔をしてレンズを角膜に付けて、レーザー光線を眼底に
照射します。網膜症の進行の状態によってレーザーの照射数や範囲はことなります。
痛みはなく当日も入浴などしてかまいません。
治療の後はどうなりますか
網膜を間引きしますので、治療前より暗く感じたり、一時的に見えにくくなります。
悪化している最中ですと、治療したにもかかわらず、見えにくくなってくる
こともあります。網膜に浮腫があるときはレーザー治療によって視力が良くなるこ
ともあります。上右の写真は上左の症例の治療後3ヶ月の時のものです。
費用は
一割負担で18100円、三割負担で54300円です。数回に分けて治療することもあり
ますが治療が終了するまでの費用です。
追加の治療が必要になりますか
光凝固をしても悪化してくることがあります。経過を見て悪い場所が見つかれば光凝固
を追加します。一度、網膜症が始まってしまうと、糖尿病のコントロールを良くしても
網膜症は進行すると考えてください。糖尿病のコントロールが悪ければ、どんどん進行
すると思ってください。経過観察をして、必要な時期に光凝固すれば将来の失明をかな
り防げます。
大切なのは、血糖のコントロールと定期的な眼科の受診です。血糖のコントロー
ルは厳しすぎるということはありません。
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