軍楽隊行進中。写真ネタがつきてきた...

9月17日(金)


曇り、時々晴れ

 

6時半に起床。今日は朝10時からリソグラフィの実験をする予定。その時間から装置の使用予約をしてある。その前にメールのチェックなどをしておきたいので、早めに家を出ることにする。

 

実験を開始したのは9時半頃から。昨日の蒸着は、ただ試料を釜に放り込んでおしまいだったので、まともな実験はこれが初めてと言えるかもしれない。先生、学生と一緒にクリーンルームに入る。今日はレジストを塗って、めっき用のパターン出しをして、試料ホルダーにマウントするところまでを目標にする。

 

実験室が変われば実験の作法というか、やり方も変るものだ。この研究室では、主としてリソグラフィーにはネガタイプのレジストを使っているそうで、聞いたことのないレジストを使っていた。注射器の先端にフィルターを付けたものにレジストをいれて、スンピコーターに載せた試料に滴下するやり方で塗布していく。露光装置は、Karl Suss 製の密着式のアライナーを使っていたが、北大にあるものの1つ古いタイプらしい。

 

今回のリソグラフィーは、電気化学プロセスの条件だしのためのパターンだしで、単純に200ミクロン四方位の窓開けをしたかったのだ。そのためのマスクを準備している余裕はなかったので、デバイス作製用のマスクの、オーミック電極用のマスクを使うことにする。マスクはデュポン社で作ってもらっているようで、ケースにデュポンの名前がみえる。露光には PEB (Post Exposure Bake) を取り入れているようだった。現像後のパターンを見せてもらった。パターンが切れているのは当然のことだが、自分の興味は、むしろパターンの設計にある。パターンの配置や、アライメントマークの置き方で、デバイスを設計した人の考え方や技量がなんとなく分かるものだ。

 

パターン出しが終わると、もうお昼になっていた。ランチは例によって3種類のメニューがあって、今回は、「ムース」と呼ばれる鹿(?)の肉のシチューにした。臭みや嫌味のない味で、キノコソースとよくあっていた。もっと北の方にすんでいる人は、ムース狩りにいくのだそうだ。

 

午後も引き続き実験。電気化学プロセス用の治具を作らなければならない。といってもテフロン板に穴を開けるだけなのだが。同じ建物の地下に工作室があって、そこで面倒を見てくれるらしい。学生が穴を開けたいんだ、とスタッフの一人に声を掛けている。気難しそうな(いかにも職人みたいな顔をしていた)男の人が、ボール盤の前に案内してくれる。どうやら穴をあけるところまでやってくれるらしい。どれくらいの大きさなんだ、位置は正確じゃなくていいんだろう?、というようなことをたずねられた。板はテフロン製なので、簡単に穴があく。結構、その職人さん、楽しんでいたみたいだった。目の前でものが出来ていくというのは、見ていても楽しい。作業そのものは5分もかからないで終わった。穴を開けてくれ、なんていうから、もっと大仕事だと思ったよ、こんなことならお安い御用さ、と口に出すまでもなく笑顔が物語っている職人さんに、サンキューと言って工作室をあとにした。簡単なことなのだが、こういう物作りに携わる者がもつ独特の感触というのは、世界中のどこでも同じなのかもしれない。

 

その後、学生と一緒に電気化学プロセス用の電解液を調合したり、試料をマウントしたりと、それなりに作業らしいことをしたおかげで、その日はなんとなく充実感があった。それでは良い週末を!、と声を掛け合って研究室をあとにした。


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