このQuodlibet とは「ごたまぜ」、「寄せ集め」とか、「メドレー」という意味のドイツ語です。
過去の Quodlibet: 2005年 7月

ラッパを吹く上で、私が避けてきた練習課題3つ。「リップスラー」、「フラッタリング」、そして「トリプルタンギング」。リップスラーは柔軟な唇を作る上で重要だ、とか、音を豊かにするとか、それはもう、万病に効く膏薬のような売り文句は承知していたけれど、「キツイから」やらなかった。小学3年生以来、金管楽器を吹き続けてきたけれど、リップスラーの練習にまじめに取り組んだのは学生を卒業した30歳目前の時で、「キツければ、休みながらやれば良い」という「騙し文句」的な発想を取り入れてから、ようやくのことでした。ご利益はありました。早くやっとけばよかった。

フラッタリングは、いまだに避けてます。必要に迫られていないので。課題曲に入っていたらどうしよう、などという余計な心配がありましたが(そんな年もありましたね...あの年は、さぞや数多くのラッパ吹きがフラッタリング対応に成長されたに違いない)、いまやそんな行事とは無関係。オケ活動に返り咲いたとしても、マークすべきは「だったん人の踊り」に出てくるらしい、という未確認情報くらいですから、きっとフラッタリングを使う事はあるまい、とタカをくくっております。(一説によると、「サッポロ、とろろ芋」と言いながら舌をトゥルルル...と震わせる練習をすると良い、という話がありますが...それでも言えない私は舌足らずなのでしょうか?)

そんな訳で、フラッタリングが出来なくても、さして不自由は感じなかったのですが、トリプルタンギングはフラッタリングよりも頻度の高いワザで、これを避けて通るとすると、ラッパ向きのソロの曲の選択の幅がぐっと狭くなります。アーバンの教則本には、軽快なトリプルタンギングが要求される変奏曲が多くあって、その第3変奏だか第4変奏だかを抜かして吹くというのは、戦わずして負けているようで後味が悪い。(私にはフラッタリングも不戦敗かもしれませんが...相手を選ぶ権利はあるはずだ!)ということで、トリプルタンギング克服に挑戦。

レッスンでの話。私のトリプルタンギングの発音を聞くと、[Tu-Tu-Ku]と発音しているつもりでも、[Tu-Tu-Gu]に聞こえたり、スピードが早くなるとリズムが転んで聞こえるとのこと。問題は3つ目のKuの発音を改良するところだというのは分かった。基本的には、舌の付け根のあたりが上に上がって息を切った後、素早く下に下がってTuと発音した後と同じ状態に戻るように、ということなのですが、なかなかクリヤーな発音にならない。私の場合、どうやら喉の奥のほうで発音をしてしまっているのが問題だというは分かったのですが...。楽器を離して口で言ってみると、それなりに舌の動きは理解できるのですけどね...。

レッスンの後で、いろいろ考えてみた。1つはこのページ(2005年6月)に書いた英語の発音の事。ひょっとしたら、Kuと発音することが大事なのではなくて、息が入っていないのではないか? そう考えて、もっと極端に息を流すようにしてみたら、発音が明確になってきました。以前は、発音はしていたけど、肝心な息が入っていなかったので、「言っているだけで音になっていない」状態だったのですね。

それでもまだクリヤーさがない。先生に聞いてもらいながら、いろいろ試しているうちに、偶然、あることに気づきました。舌を全体にちょっとだけ(感覚的な問題ですが、ほんとうにちょっとだけ)持ち上げるようにして、[Tu-Tu-Ki]と発音するつもりでタンギングしてみました。そうすると、キレも良く、乾いた感じの、軽いタンギングができるようです。

まとめてみると、「どういう発音をしたら良いのか?」、という問題ではなくて、「どんな口の状態を作ったら、舌がスパッと動いて、息が淀みなく楽器に入っていくのか」、というところがポイントのようで、それを考えて追求した結果です。これは私にだけあてはまる改善方法だったのかもしれませんが、努力してみれば、それなりに道は拓けるという勉強にもなりました。以前よりも数段、それっぽく聞こえるトリプルタンギングができるようになって、満足しています。(2005/7/18)