どれを選べばいいのか?

  

 例えばシンプル イズ ベストという基準:

 さて、矛盾がないというだけではこれまた無限に(あるいは幾らでも)仮説が出てきて、仮説があふれかえることが分かってしまいました。 

 困りました。どうすればいいのでしょう?。

 じつは科学の世界で仮説を選ぶ基準は私達が何気なく行っていることとあまり変わりないようです。ここでもう一度パズルを見て考えてみましょう。以下の3つの組み合わせのうち、あなたはどれを選びますか?。

  

  

 

 直感的に言って、ほとんどの人は最初の2つのいずれかを選ぶのではないでしょうか?。少なくとも3番目を選ぶ人はほとんどいないはずです。でもどうして上の2つを選ぶのでしょう?。

 

 シンプルという基準:

 まず第一に、上の2つがシンプルであるということです。特に一番最初の組み合わせはもっともシンプル、単純です。たいていの人はこの組み合わせを選ぶでしょう。

 科学でもこうした基準、つまりシンプル・イズ・ベストで仮説が選ばれることが圧倒的に多いように見えます。ではシンプル・イズ・ベストとはなんでしょうか?。それはつまり

 余計な仮定(あるいは仮説を成り立たせるための前提)が少ない

 ということです。これが幾つもの仮説から、ある特定の仮説を選びだすひとつの基準となります。ではどうしてこの基準がよいのでしょうか?。

 

 単純なものがよいという理由は?:

 まず第1に、

 不必要に余計な仮定を立ててどうするのか?

 ということです。右のように3番目の組み合わせはたくさん余計なものを組み込んでいます。青い線で描かれた仮説的な風景は多いですし、おまけに写真のピースに写りこんでもいないわらしちゃんがいることになっています。

 あるかないかわからないものをこんなに持ってこないと成り立たない仮説ってなんでしょう?。もちろん、仮説はたいていの場合、なんらかのまだ知られていない前提(仮定)を必要とします。ですから前提や仮定があることが悪いわけではありません。

 前提や仮定をやたら多くすることが問題になるのです。

 例えば異星人がUFOに乗って地球に来ているがアメリカ政府はそれを隠している、という仮説が成り立つには非常に多くの仮定を必要とします

 :異星人がいる、それが地球にきている

 :その異星人は人類にコンタクトしようとしない

 :それをアメリカ政府が隠している、

 この仮説は非常に複雑怪奇な仮説です。もちろん、この仮説に矛盾はありません。そればかりかあらゆることを説明できます。例えばなぜ異星人が地球に来た証拠がないのか?、ということさえ、アメリカ政府がそれを隠しているから、と説明できます。

 しかし、UFOというものを説明するのにはもっとシンプルな仮説もあります。

 質問:UFOとは何か?

 答え:何かの見まちがいでしょ

 これは非常に簡単に、つまりシンプルにUFOを説明する仮説です。またこの仮説が必要とする仮定はほとんどありません。このようにシンプルで仮定が少ない仮説で説明できる。それなのになぜわざわざたくさんの仮定がないと成り立たない仮説(アメリカ政府の陰謀説)をあなたは選ぶのか?。

 科学の世界ってのは仮説を選ぶ点ではかなり常識的なものであるらしく、余計な仮定がすくなくて済む仮説がよりよい、と判断します。逆にいうとアメリカ政府がUFOを隠しているという説を科学者のほとんど全員、そればかりか私たちの大部分が受け入れないのはそのせいなんでしょうね。

 これはしばしばオッカムの剃刀、とか最節約と呼ばれる考え方で、同じような発想は昔からいろいろな人が主張していました。

 しかしながらこれはあくまで”証拠から導き出された幾つもの仮説からどれを選ぶか?”ということでしかありません。シンプル・イズ・ベストという基準で選びだされた仮説は、他よりもよさそうだという理由で選ばれたわけですが、それで正しいというわけではありません。

 それなら、科学では仮説を選んだ後、どうするのでしょう?。

 

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