Calcichordata

カルシコルダータ

 

 Rhenocystis latipendunculata

レノキスティス・ラティペドゥンクラータ

Calcichordata (カルシコルダータ)

Mitrata (ミトラータ)

胴体の長さ:22mm

全体の長さは50mm程度

 

 カルシコルダータ(石灰索動物)は一般的に棘皮動物であると考えられています。とはいえ、カルシコルダータは他の棘皮動物と比べると違いが目立ちます。そこで、棘皮動物の中でも彼らは独自のグループとして分類されて、Carpoidea:カルポイディア(海果類と訳されています)という名前でも呼ばれていました(カルポイドという呼び方もあります)。

 さらにカルポイディア(カルポイド)には以下のようなグループがあると考えられていました。

 Cincta:シンクタ目

 Soluta:ソルータ目

 Cornuta:コルヌータ目

 Mitrata:ミトラータ目

 

 しかし、イギリス・大英博物館のJefferies (ジェフリーズ)は、これらカルポイドを棘皮動物、半索動物、脊索動物を生み出した動物群であると見なし、カルシコルダータ(石灰索動物)という名称を与えました。

 ジェフリーズの主張に従えばカルシコルダータは系統を反映したグループではありません。対して複数の研究者はカルシコルダータが系統を反映したグループであるという結果を得ています。

 ようするにジェフリーズさんの意見はかなり”過激”なものですが、様々な理由から興味深いものであると言えます。詳しいことは、

 「脊椎動物の起源 H.ジー著・藤沢弘介 訳 培風館 2001」

 「棘皮動物は、いかにつくられたか 雨宮昭南 1996 [科学 Vol.66 No.4 pp306~311 」

 を参考にしてください。

 

 さて、このページ、トップの写真はカルシコルダータの一種、レノキスティスです。この化石はミトラータに分類されています。ジェフリーズはミトラータは背索動物であると見なしていますから、この化石は背索動物(コルダータ)かもしれません。しかし、そう思ってトップの写真を眺め直してみても何がなにやら分からないでしょう。以下に写真の解説を行ないます。ジェフリーズの見解に従えばレノキスティスの身体は次ぎのように”コルダータとして解釈する”ことができます。↓

 

 

 レノキスティス・ラティペデュンクラータ:

 Oral spines:直訳すると”口部にあるトゲ、あるいは突起”の意味になります

 Mouth:口

 Ventral head:頭部の腹側

 Ventral ribs:ribには肋骨の意味がありますが、”波打った肋”というような意味もあるようです。腹側の波打ったしわのような構造とでも考えればよいと思います。これは背中側にもあります。

 Tail:尻尾。この場合、長い突起のある方(画面左、斜上に向かって伸びている)が背中側になります。

 

 

 ↓さて、以上の写真解説を見ても分かるように、この動物はここでは腹を私たちに向けている姿勢で化石になっています。というよりもどうもそうであるらしい、と解釈しました。写真の解説の中で(?)が入っているのはそのせいです。基本的には”尻尾の突起の向きが全体の姿勢を示している”と非常に楽観的に解釈しました。

 この動物はタイルのような外骨格に身体を覆われていています。腹側と背中側で外骨格のタイルの形が違うのですが、論文とにらめっこしても、この化石のタイルの形が背中を示しているのかそれとも腹側を示すのか、それがどうもよく分かりませんでした。

 参考:Ruta & Bartels.1998

 

 ともあれ、生きていた時は次ぎのような姿をしていたと考えられています。

 背索動物として復元されたレノキスティス

 

  

 Chordate Interpretation:背索動物としての復元

 Mouth:口

 Ventral head:頭の腹側(つまり下側)・以下に示すようにこの復元図は海底の泥の中

から動物を見上げる形で描かれています。

 Tail:尻尾

 mud:泥・この平面は泥の表面を表しています。泥の表面に描かれた紫の矢印は動物の移動の方向を示しています。

 この復元図はSutcliffe, Sudkamp & Jefferies. 2000 を参考にしています。

 

 レノキスティスをこのような形で復元するのは、ジェフリーズの見解に従った場合です。また、彼の解釈によればレノキスティスは”尻尾”を使って後ろに移動します。実際、彼はレノキスティスの化石が入った岩石の中に”移動の跡”を見つけて、彼らが”後ろに移動したこと”を論文で報告しています(Sutcliffe, Sudkamp & Jefferies. 2000)。

 

 しかしミトラータも含めてカルシコルダータを棘皮動物と考える研究者はまったく違う復元を行ないます。レノキスティスを”棘皮動物”として復元してみると次ぎのようになります。

 

 

 棘皮動物として復元されたレノキスティス

 

 

  

 Echinoderm Interpretation 棘皮動物としての復元

 Theca (dorsal):蕚部(がくぶ)の背中側・ヒトデやクモヒトデの身体の中央の部分にあたります。要するにさっきの復元とは上下が逆です。

 Anus?:肛門・棘皮動物である場合、これが肛門であると考えられるようです・・・・。

 Stem:茎・ウミユリなどの茎にあたります。

 

 棘皮動物として復元された場合、レノキスティス(および他のミトラータ)は上下が逆になります。ともあれ、このページでは[レノキスティスの化石の解説]を見れば分かるように、ジェフリーズの考え方に従っています。

 しかし、それは自動的に(?)ミトラータは背索動物になる、そういうことになります・・・・・・・・・・。これは大胆というか過激というか、しかし非常に面白く議論のある考え方です。さて、ジェフリーズの仮説は今後どういう展開、議論を見るのでしょうか?

 

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