旅行記1











王様と仏教

 タイの人々は、敬虔な仏教の信者でそして王様を尊敬している。
 寺院に行くとびっくりするくらい多くの人が子供も女の子もお年よりも、真剣にお祈りを捧げている。
 ところでタイのプミポン国王は、大変有名な犬好きでいらして、街中の野良犬に予防接種をするよう取り計らわれるくらいです。(ということをポタサイトさんの日記で拝読していました)おかげさまでタイの街は犬犬パラダイスです。寺院も歩道も犬まみれ。ジャンルがジャンルなもので、我々は行く前から国王のプチファンでした。
 折りしも丁度国王の在位60周年記念式典真っ最中。街のあちこちに王様の肖像画が飾ってあり、人々は国王おめでとう!のTシャツを着ていました。それがこう、ファンというか尊敬というか微笑ましいお祝いの仕方だったので私達も仲間に入りたくて「あのTシャツ欲しいねー」と言い合ったものでした。
 いえいえ、プミポン国王の長所は犬好きな所だけじゃなくて(笑)!世界最長の在位期間を誇る、最高の賢王と評される方なのですが。







 空港を出るとそこは、野良犬の楽園でした。右往左往に犬がいました。無防備に道に寝そべり、吠えない、こんなに暑いのに舌をネクタイみたいにべろんと出したりはしない。
 タイの犬は賢い自立した目をしていました。じっと見つめる瞳には媚びも服従もない、穏やかな人間のように静かな目。存在を認められ自由に生きる犬はこんなに穏やかなのか、と感心します。
 自由過ぎて、昼は焼けつくコンクリートの上でコの字に足を投げ出して眠っておられる。プールのしたたる水の足跡もじゅうっとすぐに消えてしまいそうな真っ白なコンクリートの上に横たわっておられるので、死んでるのかとびびる私達に目もくれず、すぅすぅお腹をゆらして熟睡。日陰に転がしたくなりましたが(いや、触れないですが)、そんなことをしたら「この程度の暑さで日影に入るほど軟弱ではない」と鼻で笑われそうです。
 見かける野良犬は毛あしの短い大型犬ばかりでした。「やっぱり小型犬は喧嘩に弱いから、大型野良に追い出されるんでしょうねぇ」と私が言うと、旅の仲間がそれはそれは、もう、君は小型犬の一種なのか?と思うほど不安そうに「じゃあ小型犬はどうなるんですか」とおっしゃるので「街の外に小型犬だけで暮らしているのかも」と言うと、ほっと息をつかれました。というわけでタイの街の外、人と大型犬が知らない場所に、小型犬の楽園があります。
 オレはいつも冷房吹き荒れる中にいるぜだからこんなにクルクルなのさ…的体毛の飼い犬マルチーズなどを見かけました(あんなに犬がいても犬を飼うタイ人が好き)。
 一番暑い時に地上から内臓を少しでも離すためでしょうか、タイの野良犬は足が長かった気がします。
 総括すると、自由で知的な瞳と長い足と大きな体のパッドフットは、タイ野良犬として十分やっていけると思います。毛が長いとつらいでしょうが。
 にっこりと「その方がタイになじむと思うんだ。」とかみそりをかかげるルーピン先生が思い浮かびます。「大丈夫、顔の回りとしっぽの先は残すよ、ライオンみたいで君に似合うよ」と優しく言い、追ってくる先生から一目散に逃げて、ホテルの小さな丸テーブルの下で体の8割はみ出ながらも、震えて首を横に振るパッドフット氏(混乱して、人間になったら安全な上に説得しやすいと思い至らないシリウス氏)





ある犬

 寺院を観光していた時の事だった。痩せた大きな黒い犬が、アンニュイな感じで寝そべっていた。私達が通ってもぴくりとも動かなかった。まあ暑いから当然だ。
 しかしバイクの音がして、お父さんに連れられた男の子が登場すると、犬は豹変した。鳴きまくり、跳ね回り、尻尾を振り回し、そのうち2本足で立って踊りだすんじゃないかというくらい犬は喜んでいた。
 「大好きー」「大好きー」「大好きー」と
 全ての動作がそう語っていた。
 男の子も嬉しそうに犬の頭をなでていた。犬もあんなに人間の好き嫌いがあるなんてびっくりした。

 私と彼女はしばらくその様子を見ていたが「あの犬は嬉ションしていたに違いないね」と語り合いながらその場を後にした。







 タイといえば象!なので、象に乗りました。象は大きいというより高かった。トラックの運転席の上の屋根に乗っている気分です。私たちを乗せた象は道路脇をのっしのっしと行くので、タイの強い日差しにぴかぴか光る車の屋根を眼下に眺めながら進んでいきます。
 象の歩くリズムは「ゆっうぞっらはっれて あきっかぜっふきー」と同じであることを発見しました! 試しに歌い、「違う歌じゃだめかな?」と他の歌も歌ったですが、やはりあの歌だけでした。歌うわしらに象使いのかたが振り向いていました。すみません。お仕事中後ろで歌ってすみません。
 そのリズムでのっしのっしゆっらゆっらと川べりを歩くので、その上の私たちは気を緩めればごろんごろんと落ちて行きそうです。というか、象が「水、気持ちよさそー」と思ってざふんと飛び込むんじゃ…と想像してしまうほど水は心地よさそうで、象の上は危うかった。
 怖くて、だけどゆったりとしたリズム、というのは笑いのツボを刺激するハーモニーで、大声で笑い出しそうになって困りました。







タイの猫ちっさい……! どこで見かける猫も、日本の猫より小さかったです。タイ猫は小さな種類が多いのか、野良犬天国では身軽な小さな猫が繁殖しやすいのか、タイの犬が大型犬ばかりだから、目の錯覚で小さく見えたのか。
公園の花畑の縁で草花に埋もれるように隠れて、油断ならない様子で歩いていました。
子猫を見て「かわいい!」と興奮していると、タイの人に微笑まれた。タイは微笑みの国ですが、あの微笑みは「だよな!外国人もびっくりなぐらい猫かわいいよな!」だったような気がします。












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