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 自分の誕生日に、黒い犬を1日中思う存分可愛がるという楽しい遊びをしたルーピンは、その返礼に何か希望するプレゼントはないかと友人に尋ねた。
 彼の想像していたのはそう、素敵なごちそうを作ることであったり、ヒマラヤの氷を取ってきて手渡したりといった微笑ましい類のものだった。
 しかしシリウスは日頃ルーピンをよく悩ませる「冗談なのか本気なのか判別のつかない真面目な顔」をして間をおかず答える。
「俺の膝の上で一日を過ごすというのはどうだろう」
 ルーピンはたっぷり15秒、ものを言わず彼の黒い目を凝視していた。これがジョークであるなら仕返しをしなければならないし、彼が本気ならば誠意ある対応をしなければならない。
「誰が?」
「お前が。他に誰がいる」
 シリウスは大人が子供に見せる寛大な様子でルーピンの質問に答えた。どうやら本気らしい、と早くも後悔が彼の胸に満ちる。
「1日を過ごすというと、食事や……」
「俺の膝の上だ」
「ええと、読書も」
「当然」
「どこかへ移動したい時はどうするんだい?」
「どうすると思う?」
「…………腕の中?」
「その通り」
 彼の頭骸の形はこんなにも美しいのに、どうしてこうも馬鹿げた事ばかり思いつくのだろうとシリウスの額の辺りを睨みながらルーピンは尚も抵抗を試みた。
「理解が悪くて済まないけれど、それで君の得るものは何なんだろう。筋肉をつけたいとか」
「そうだと言ったらお前は今後ずっと俺のトレーニングに協力してくれるのか?」
「嫌だ」
「だろうな。だから誕生日限定だ」
 口にすべき質問がなくなってしまって明らかに困り顔のルーピンへ、シリウスは邪気無く自分の思うところを述べた。
「そんな大仰な問題ではないのでは?別に裸で膝の上に乗れと言っている訳じゃなし」
「当たり前だシリウス。そんな不吉な事をして何が楽しいんだ」
「俺はかなり楽しいと思うが。ところでどう不吉なんだ」
「マグルの有名なキリスト教施設の像に『ピエタ』というのがあって……私の言いたい事はちょっと不謹慎なのだけれど……」
「ああ……。しかし誕生日までに、お前にもう少し肉が付けばいいんだろう?」
「そういう問題じゃない」
 黒犬が尻尾を振っている姿など決して思い出さないようにしながら、ルーピンは穏やかに微笑んだ。いつもその顔をするとシリウスが言葉を失って自分を見つめてくる、同じ角度同じ笑顔で。ルーピンはいざとなれば手段を選ばないのだった。
「君の持っているセンスや価値基準を私はとても信頼しているし、客観的に見てもたぶん優れているのだと思う。けれどシリウス、前前から話そうとしていたんだけれど……その、こんな事を自分で言うのもつらいけど、君は私に対してだけ評価が狂っているよ」
「評価?」
「私は膝の上に乗せて可愛がるようなものではない。間違っても」
「ああ、うん。それはいいんだリーマス」
「正気に返ってくれ。どうしたら直るんだ」
「俺はお前を評価しているんじゃない。好きなんだ。つまりこれは好き嫌いだ。センスは関係ないから安心しろ」
「安心って……シリウス」
「お前は友人を美醜や機能で選ぶか?リーマス」

 ああ、そうなのか。と納得した勢いで、ルーピンはシリウスの希望したプレゼントを約束してしまった。その時はそれが自然な事のような気がしたのだ。彼が青ざめたのはその日の深夜を過ぎた頃だった。


どうしてこんな馬鹿げた事ばっかり思いつくのですかね
貴方のハンサムなお友達は。先生。

もういっそ胸にメッセージを書いてみたり
手を使わずにご飯食べてみたり
あるいは逆にイス役の人を頂いちゃったり
するくらいの勢いで。ファイト!
2003/10/20



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