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 その日はルーピンの誕生日だった。以前から話題の出るたび特別な何かは必要ない、プレゼントなども絶対に購入しないようにと何度も言い渡していた彼は、当日の朝それを忘れているくらいの関心度合いだったのだが、黒髪の同居人の姿がなく代わりに黒犬が居間にいるのを見て今日が何の日だったかを思い出した。しばらく躊躇った後で「私へのプレゼントかい?」とルーピンが尋ねると犬は尾を振ったので彼は嬉しいような悲しいような気持ちで黒犬の頭を撫でた。曰く「私は人間の姿の君も、きちんと好きだからね?」。しかしその日シリウスを洗ったり、乾かしたり、ブラッシングしたりしているルーピンの顔は、どんな馬鹿でも分かるくらいあからさまに幸せそうだった。(さすがに頬をぺろぺろと舐められた時は「これを30過ぎた男がやっているのか……」と一瞬我に返りかけた彼だが、黒犬の目があまりに愛らしいので、すぐに現実を忘れた)その扱いをどう思っているのかは犬の顔からは読み取れない。シリウスは寡黙に、そして実に上手に犬の真似を続けた。その努力の甲斐あって、ルーピンは幸せな一日を過ごす事が出来たのだった。



今年の誕生日は、とても嬉しいプレゼントを
もらったので記念に書きました。
心の底から、ともかく嬉しかったことだよ。
2003/09/02



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