32 夕食の後「血液が全部胃の方へ行ってしまって頭が朦朧とする」とルーピンが言ってソファに横たわった時、シリウスは諦めたような無力な様子でそれを見ていた。ルーピンは自分の睡眠欲を満たす為ならどんな理屈でも捏造する男だと知っていたので。 時刻は夜。きっと朝まで彼は目覚めないだろうと、慣れからかシャツでも片付ける調子で彼の頭の下に差しこまれたシリウスの右の手のひらは、しかしそこではたと止まってしまった。 あまりに軽すぎる。 まるで犬や猫の頭の重さだった。片手で易々と持ち上がってしまう彼の頭部。これまでの経験の中の比較対象(主に女性)と比べてみても、この軽さは異常なことのようにシリウスには思われた。いくら彼が痩せていて、彼女達より髪が短いと言っても限度がある。 何か1つ2つ中身が足りないのではないかと彼を揺り起こしたいのを辛うじて堪えて、シリウスは傾けた自分の首の重みを自分の左手で量るという、どう考えても無理な行為に挑戦した。 ところでルーピンは眠っているのではなく、実は単に目を閉じて休憩していたのだった。持ち上げられた自分の頭のあまりに長い滞空時間にさすがの彼も不審に思い、 「私の頭で筋力トレーニングをするのはやめてくれ」 という至極尤もな要求を友人へ訴えた。 左手と右手にそれぞれ、激しく傾げた自分の首と友人の頭部を載せるという、シュールリアリズム絵画の人物さながらのポーズをとっていたシリウスは、驚きのあまり友人の頭を取り落とした。 記念すべき1周年記念の更新にしては あまりに馬鹿っぽい……らしいと言えば らしいけれど。 その後の先生。 「それは私の頭のめぐりが悪いということを 遠回しに言っているのかな?」 違うんだリーマス。(笑) 2003/05/24 BACK |