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 あまりに寒いので思考力が鈍って、窓の外の見慣れた景色が幻想的に見える。
 藍色の夜空や枝ばかりの木立のシルエットが、涙の滲んだ眼と痺れた頭には別惑星の広大な地表のようだった。寒いと発言する気力も既になくして、彼等は力ない笑顔を浮かべて寝室に向かう。1人で眠ると凍死するような気がするので、当然2人一緒に。
 その日のような特別寒い夜には暖をとるためにぴったりと背を合わせて眠るのが常だが、そうしているうちに何となく抱き合う形になり、そして何となくどちらかがどちらかの上に乗り上げる、ということが稀に起こる。その夜もそうだった。
 室内に居ながら吐息は白く、自分達が愛情ゆえに抱き合っているのか、或いは人命救助的な何かを行っているのかも胡乱になる寒さの中、彼等は互いの背に腕をまわした。
 寝間着の裾から差し入れられて背に触れるルーピンの指があまりに冷たいので、噛みしめたシリウスの歯がかちりと微かな音を立てる。何しろ間近にいるので、小さく息を呑む肺の動きまで感じ取れて、思わず彼等は顔を見合わせる。
 律儀に詫びて手を引っ込めるルーピンに
「まるで河童と始めるみたいだ」
 とシリウスは述べ、
「おそらく河童との交合は不可能だと思う」
 とルーピンは答える。
 手が暖まるのを待とうか、それともこのまま眠ってしまおうかというルーピンの考えと、彼の手が暖まるのを待とうか、それとも逆転しようかというシリウスの考えは、ごく自然に伝わり合い、どちらかが動かしかけた右手に相手の左手が絡み、互いを拘束するような形で指を組み合って、彼等は穏やかに微笑み、ゆっくりとキスをした。乾燥した空気を喉につかえさせ、ルーピンが横を向いて咳きこむ。わずかに寝台が揺れる。
「気長に待つさ。慌てることはない」
 彼はルーピンの背を撫でる。
「いや、申し訳ないので待って頂くには及ばないよ」
 咳の残る喉で、少し眉をひそめて彼はそう囁いた。
「お前の手はまだこんなに冷たい。それとも場所を交代してくれるという意味か?」
 笑うシリウスに、
「よく考えたら、いくら私でも舌は冷たくないだろうから、いつでも始められるよ」
 と言ったルーピンの表情は、いつもより却って朗らかだった。頭の回転の速いシリウスがどんな状況であれ返答に困る場面というのは滅多にないが、現在がまさにその時だった。さすがに表情には出なかったものの、彼の体温は明らかに上昇する。
 君はいつも温かいね、などと、いっそ傍若無人なまでにのんびり感心をして、沈黙を了解と解釈したルーピンはもたもたと相手の衣服のボタンをはずし始めた。

 幸いなことに彼の言葉通り、シリウスはその酷寒の夜に一度も冷たい、寒い思いをせずに済んだのだった。








攻は服を脱がなくていい+
暖かいシリウスが更に暖かくなるという理由で
冬の先生は普段比でシリウスに乗っかりがち。

ちょう打算!
大人のれんあい!←?

2011.03.24