152 通常ならば極力余裕を持って身なりを整え、階下で落ち合って外出に臨む彼らであるのだが、ごく稀に伝達ミスや急な頭数合わせのために、15分で正装して家を出なければならない運びになる事もある。またそういう時に限って2人で物置の整頓をしていたりするので、彼等は遠慮や羞恥を覚える暇なく同時にシャワーを浴び、タオルを腰のところで結びながら家の中を移動する。いい歳をした自分達があまりに慌てているので、彼等はもう少しで笑いだしそうな顔をしている。学生時代にやらかした遅刻の話をシリウスが述べ、ルーピンはとうとう吹き出してしまう。シリウスはその間にも杖を動かし、奥の方にしまってある衣装箱から、衣装やタイ、靴などを取り寄せ魔法で揃える。 身支度をする友人の姿は懐かしい記憶と密接に繋がっていて、タイを結ぶ手順や腕の角度、立ち姿など、数十年前とまるで同じなので、彼等は互いの後ろ姿に何か一言声をかけたくなる。しかし言うべき言葉が見つからず、自分の袖口のボタンに目を戻すのだった。 少しだけ早く着替えを終えたシリウスが、ルーピンの髪を撫でつけてやり、尚且つ彼が手こずっているらしいボタンを留めてやる。それと並行して猫が人の口元に鼻を寄せるようなキスを一瞬だけするのだった。人間同士のキスをしている余裕は今はないという事はさすがに理解しているらしい。 ルーピンは親切とキスに混乱しながら礼を言い、自分が何もしないのは愛情が足りなく感じられるかもしれないと気付いて、礼服のシリウスの尻を撫でてみたりするのだった。暖炉のある部屋に移動しようと2、3歩歩きかけていたシリウスは立ち止まり、絵に描いたように怪訝な顔をして振り返る。そして理不尽にもルーピンに時間がない旨を注意されるのだった。 2009.08.04 イベントのお礼としてUP 2009.11.17 再UP |