132 それは2人が他国を旅行中の出来事だった。 路地の市場で彼等は、金属細工のカエルのおもちゃやワニのおもちゃ、斬新な柄のシャツを発見しては互いに知らせつつ、ふらふらと当て所なく歩いていた。 彼等の笑顔や距離や互いを見る目つきに何かを感じ取ったのかもしれない。店舗の日陰で寝そべって煙草を吸っていた中年の男性がふと、ルーピンに向かってこう言った。 「恋人かい?そんな上玉を毎晩楽しめるとはうらやましいねえ」 勿論その男の率直すぎる感想(実際の所もっとくだけた単語が使われていて、直接的な表現だったのだが)は現地の言葉であったので、ルーピンには通じなかった。 しかしその国の言葉をきっちりと予習してきたシリウスには、大体のところのニュアンスは伝わった。シリウスは目を剥いて訂正しようとしたが、傍らのルーピンに説明を求められた場合、どう言葉をつくしても屈辱的な展開になりそうな予感がして、慌てて彼は口を閉ざした。 ルーピンはいつもの彼らしい態度で、にっこりと笑った。どうやら軽い挨拶だとでも思っているらしい。近頃ではシリウスが滅多に見る事のない、対外的な笑顔。シリウスの言うところの「必殺の笑顔」だった。 男が歯を剥きだして大笑いしたので、ルーピンは彼なりに精一杯の交流努力をして2、3度頷いた。 男はシリウスとルーピンを交互に指差し、大きな声で笑う。ルーピンも自分とシリウスを指さし嬉しそうに笑った。 シリウスは無言のまま向かいのテントへ歩み寄り、カエルのおもちゃを買った。朝とは思えぬ強い日差しだった。彼の背後では、まだ笑い声がしていた。 その日のシリウスはなんとなく沈んでいて 先生を心配させたと思う……。 でもまあ客観的に見るとおじさんが正しいよね。 あ、いや、嘘だとも!(笑)君は攻の中の攻だともシリウス! 2006.07.06 BACK |