114 パラレルです。読む順番としては 「妖精事件」→「溶性事件」→「要請事件」→「陽性事件」(IN駄文) それから 「56」→「78」→「84」(INボエム) というのが正しいと思いますたぶん。 シリウスはちょっと強引な男に弱い。 シリウスはちょっと気障なセリフにも弱い。 シリウスは口説かれるのを待っている。 シリウスは褒め言葉も待っている。 シリウスは頭を撫でられるのに弱い。 シリウスは結局何にでも弱い。 黒板には色々なことが書いてあった。リーマスは目を白黒させながら真面目にノートを取っている。そこはポッター家の裏庭で、黒板のほかには生徒用の椅子と机がある。彼等はどうやら学校ごっこに忙しいようだった。ジェームズは鹿爪らしい顔でリーマスを指名する。 「ではリーマス、さっきのセリフをもう一度」 がたがたと、本物の学童のように椅子を鳴らしてリーマスは立ち上がった。 「く、黒くて甘いチョコレートのような君。さあ、こ、今夜はどこから食べてほしい?」 「どもっちゃ駄目だよリーマス。それと村の子供Aみたいに明るくハキハキ言うものじゃない。もっと聞いているほうが恥ずかしくなるくらい、ゆっくりと、淫猥に囁かないと!」 「そのインワイっていうのが私には掴めないんだよジェームズ。君やシリウスみたいに上手に表現できないんだ」 「わあ!それは褒め言葉か!?」 「もちろんだとも。どこが違うのか分からないけど、私が言うのとは明らかに違うもの。コツがあったりするかい?」 「そうだねえ……気迫かなあ」 「気迫?」 「お前を無事では済まさないぞという気迫」 「ジェームズ!私はシリウスを酷い目に遭わせたりしないよ?!」 「リーマス、基礎講座で教えた『嫌よ嫌よも好きのうち』だ。もう忘れたの?」 「ああ、良かった。そうか!」 「君はどうにも一直線にシリウスを好きすぎる」 「やっぱりだめかな」 「勿論だめじゃないけどね!もっとデンジャラス&ワイルドな方がドキドキして、シリウスも楽しめるはずだ。眉をもっと危険な感じに上げて」 「こ、こうかな?」 「いや、それだと交通安全の人形か、単にびっくりした人だ。威嚇するみたいに吊るんだ。君の眉はいつものんびり垂れ下がっている」 「はい先生」 「よしいいぞ!そこで3番目の決め台詞だ」 「なにも考えずに目を閉じているといい。パッドフット……」 「なかなかいい感じだ!まあたぶんシリウスは「ちょっと待てリーマス」とか「後生だからやめてくれ」とか言うかもしれないけど、構わないから「君は私を愛しているんだろう?」とか何とか言って、奴が動揺している間に剥いてしまえ。そのうち静かになるから。終わったら「素直な君も可愛いよ」と耳元で囁いてやるのも忘れるな」 「耳元だね。うん分かった」 リーマスはセリフを忘れるまいとメモをする。そのノートはシリウスが見れば確実に卒倒するだろう内容がびっしりと書き込まれているようだった。 「それにしても、こんなに難しいことをみんなやっていたんだね」 「うん、そうだよ。でも慣れれば案外面白いよ」 「リリーも君をリードしたりするのかい?」 「リリーの口説き文句ときたらそりゃもう凄くって、僕は真っ直ぐ立てなくなって内股になってしまうくらいだよ!」 「……そうなのか!ああ今まで私だけが楽をして、シリウスに悪い事をしていたな」 「これからはバンバン行けリーマス!じゃあ次はランニングの時間だ。走ろう」 「はい先生!」 裏山に向かって元気良く青年2人は走り始めた。辺りにはしばらくの間ジェームズの吹く規則正しいホイッスルの音が響いていたが、やがてそれも遠くなった。 リーマスがこの特訓を終えて恋人の元に戻るのには、もうしばらく時間がかかりそうだった。 要するにヒマだったんだなジェームズ。 呪いについては 「夫の役割の者が妻の役割の者より沢山声をあげたら その場で呪いは解けるから!」 と適当に述べた模様。 特訓前から呪いは解けたも同然だ……。 妻が帰ってきたときに何が起こるか考えただけで 笑いがこみ上げ…じゃなくて胸が痛みます。 可哀想なシリウス! 2005/11/16 BACK |